散歩


散歩をするのは

ぼおっとするのによく似ている

うつろう景色が

こころを擦るから

こまやかな血管が切れて

わたしは水底にしずんでゆく


街に生まれた音楽は

聞こえるよりずうっと昔

白亜のときからこぼれてやってきた

内耳をとおって滲みると

耳のなかでむくむくと

植物の育つ気配がする


四季折々はハーブのようで

六月のわたしと半年後のわたしを

清涼にへだててくれる

気づけば髪が一〇センチも伸びている毎日に

食べ飽きてしまわぬよう

からっぽさんの体育ずわりする場所が

こころのどこかに必要で


今日も街に出る

水色のハンカチはやさしいので

流れる汗を拭きとってくれる

麦わらぼうはひかりを

いっぱいにひきつめる

たくさんの糸が絡まったりして

風にそよいでいるのを

瞳のひふで触れてみる

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アントロギア。 古森もの @morinomono

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