第24話 ダンジョン8

 あいつを倒してほしいか、って誰だよ!


 その前に誰だよ、そいつは。


 「ああ、誰か言ってなかったね。制約の勇者だよ、あいつって。いや~、暴食の魔王とは天敵みたいな関係なんだよね、そいつ。何故か対の関係は魔王側が不利になるようなスキル持ちだしね」


 というと、例えばどんなのだ?


 「ん~、暴食は食べる事で強くなるが、その過程で獲得したスキルや魔法を無効化してくるんだよね。いや~、暴食で強くなった僕はなすすべなかったというか、スライムの能力では敵わなかったよ」


 笑いながら言っているが、怒りの感情を感じた。


 勇者か、俺はそこまで憧れはなく、一種の職業としか見てなかったな。


 雷系の魔法を使う魔法剣士のイメージだ。


 制約の勇者か、多分、制約のスキルの効果何だろうな。


 今まで暴食の力に頼らなくてもいいように戦ってきたが、それは暴食の能力で獲得したスキルや魔法があったからだ。


 自分で獲得したスキルなんかもう覚えてないな。


 能力の制限か、俺はそいつに勝てるのだろうか。


 他の魔王を当てるとかしか思いつかない。


 制約の勇者の能力が分からない以上対策も立てようがないが。


 最悪、人質なんかで行動を縛って逃げるなり、攻撃を仕掛けるなりするか。


 魔王なんだからあくどい事もやっていいよな?


 「あははは、制約の勇者の対策を考えている時に申し訳ないんだけど、制約の勇者のスキルは他の魔王にも効くからね。ただ効きづらいだけで。勇者のスキルは複数の効果を持っているからね」


 先に言っとけよ、くそったれ。


 「それに君は僕より弱いからね。こう見えて僕はそれなりに強かったからね。後、君は暴食の力をちゃんと使いこなせていないよ」


 そうなのか?


 でもさ、お前より弱いなんて事はないだろ?


 「あはは。まぁ、そうなるよね。僕はこんなに弱そうなスライムなんだから。ただ、以前は魔王の中でも1、2を争う程強かったんだけどなぁ。大分、力が落ちたからそう見えるよね」


 力が落ちたのか、でもさ?


 そのステータスで落ちたって、以前はどの位だったんだ?


 「龍と戦闘して圧勝出来る位はあったんだけど、勇者と戦ったりダンジョンを作ったりとしていたらいつの間にかね」


 そんな事が。


 それよりも暴食を使いこなせていないってどういう事だよ。


 「ん?そのままの意味だよ。勇者のスキルには複数の効果を持っているって言ったよね。じゃあ魔王のスキルにも複数ないとおかしいよね?」


 それはまぁ。


 「それに勇者と魔王のスキルはもう一段階、上のスキルもあるんだよ」


 まじかよ。


 「だからね、君には僕と戦闘をしてまずは暴食を使いこなしてもらうよ。大丈夫、今の君なら今の僕でも勝てるからね」


 ふふふ、やってやろうじゃねえか。


 こてんぱんにしてやる。


 そうして前暴食の魔王との戦闘が始まった。

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