第6話

 部屋の中で充実した生活を送っていたが、ふと外の世界も気になった。外の世界にはどんな妖精がいるのだろうか。他の人たちはどのような魔法を使うのだろうか。


 そこで、ドローンのような小型の浮遊型カメラを作ってみることにした。






 前世の記憶を頼りに、電気仕掛けの機械を作ってみることにする。異世界だからって科学を取り入れちゃいけない理由はないからね。


 でも残念ながら科学の知識はあまりなかった。電気を通したら電球が光るとか、コイルで簡単なモーターを作れるとか。しょぼい電球くらいならこの世界にもあるけれど、モーターがあるかはわからない。どうしよう。仕組みがよくわからない。


 とりあえず、できるところまでやってみることにする。まあ、できなければ魔法でゴリ押ししよう。そうしよう。



 何とか電気魔法を流すと回るモーターらしきものができた。

 材料は金属魔法でつくった。次はプロペラだ。妖精のアー達にも協力してもらって、それらしいものを作ってみる。前世の朧気おぼろげな記憶を頼りに作ったので、形もあっているかわからないが、そこは風魔法でごまかす。


 ここまでくるとすべて魔法でやってしまえばいいようにも思えるが、なんだか負けたようで悔しいので、最後まで科学の復元に挑んでみる。


 電気魔法でモーターを回し、風魔法でプロペラを押し上げることで動くなんちゃってドローンは妖精達に好評で、アー達は早速遊び始めている。


 部屋中を手のひらサイズの妖精たちがラジコンヘリのようなものに乗って飛び回る光景は、見ていて圧巻だった。






 ドローンと言えば映像。今度は遠くの風景を映し出せる装置を作ってみることにした。


 魔法を使うためにはイメージが大切なのだけど、映像を遠くに飛ばす仕組みが全く思い浮かばない。だけどしばらく遊んでたら、とても都合の良い発見をした。


 何が都合がいいかと言うと、無属性魔法。その正体、その性質は、遠隔地の映像を飛ばすのにちょうどよかった。


 まず、魔法の属性を何も意識しないでいると出てくる無属性魔法。これは無色透明のスライムのようなとろとろした液体。


 液体をよく見てみると、微生物の集合体ということが分かった。前世で言うところのクリオネの様な生き物がうねうねしている。おそらくこれが魔法の素。最小単位。エレメントと言うところか。


 このエレメント、簡単に分裂することがわかった。そして、分裂したもの同士は、しばらくの間何らかのつながりがあるようで、片方のエレメントに起こったことは、もう片方のエレメントにも伝わる性質を持っていた。


 そして、最重要事項。色をつけることができた。絵の具(昔もらった)を垂らしてもできるし、光を当ててもその色に着色された。そして、分裂した相方も、同じ色に光った。


 素晴らしい発見だ。


 エレメントを百マスのマス目を作った格子に入れてみる。エレメントたちは一ミリ程の大きさしかない為とても苦労した。そして同じサイズの格子を合わせて、衝撃を与えると、分裂したエレメント達を配置することができた。


 片方の一マス目に赤い光を当てると、もう片方の格子の一マス目のエレメントも同じ色に光った。これで、遠隔映像投影装置の完成だ。後はサイズを大きくしたり、精度を上げていこう。


 試しに今できたもので実験する。ドローンにエレメント格子を乗せて、光魔法でドローンの真下の光景を凸レンズの要領で投影させる。そして、手元にある相方のエレメント格子の後ろから光を当てて、壁に投影させる。


 そうすると、見事プロジェクターが完成した。これでホームシアターの様に寝室を改造できる!





 早速完成したドローンをあちこちを飛ばして、世界中を探索する。

 人の多い土地。人のいない土地。険しい雪山、そこを登る雪牛と現地の人。


 なかには、あれ喧嘩? なんて危ういのもあったけど、世界と関わる気がない私はひたすらに眺めるだけに徹し、空の旅を楽しんだ。


 しばらく部屋の中から空の旅を楽しんでいると、政治的な事件を目にしてしまった。しかも、現場の人間と目があったような気がする。白亜の塔の小窓から、何人かの人がいさかいあっているのが見える。危ない危ない。こういう事には関わり合いにならない方がいい。


 それ以来、人がいるところを飛ばすのは避けるようにした。覗きがしたいわけじゃない。

 それよりも、いろいろな自然を探検したい。


 ついでにいろいろな果物などをさがした。ドローンにファムを乗せてもぎ取ってきてもらう。産地直送だ。


――素晴らしい外の世界を知って、ますますサシャは引きこもり生活を満喫するのだった。

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