第5話

 今日は土魔法で遊ぼう。


 恵まれていることに、この部屋はサンルームとつながっていた。天窓が付いており、通常の部屋より多めに採光できるようになっている。両親が引きこもりがちな私の健康を気にして、陽に当たれるよう改築してくれたのだ。両親の愛情を感じる。


 このサンルームに魔法で土を敷き詰める。仕組みがどうなっているかわからないけれど、土魔法を使うと手からボコボコと土が出てくる。これは無から物質を生み出しているの? それとも、別の場所から転移させているの? よくわからないけど楽しいので気にしない。


 じゃが芋が好きなので、じゃが芋をたくさん育てよう! その他にも根菜や葉物野菜を沢山植えて、楽しい畑にしたい。そしてやっぱり土魔法で欠かせないのが、ゴーレム! 


 超巨大なごついゴーレムを作ろうと思ったのに、じゃが芋ばかり見ていたからか、出てきたのは手のひらより少し大きいサイズの、じゃが芋みたいなゴーレムだった。これはゴーレムというよりも、土妖精? 存在感的にはコロポックル? でもとってもかわいいので良しとする。


 芋ゴーレムは手足もちゃんとついており、小さな芋がいくつか連なったような作りをしている。目の部分はじゃが芋の芽のような感じで、若干無機質さが怖いけど、全体的な可愛さで無機質さは中和されている。


 頭からは草が3本ほど生えており、なんとその草を引き抜いて、土に植え始めた! そのフォルムの可愛いこと。ずっと眺めていたい。


 頭から草を抜くのを手伝おうとしたら、頭の草を短い手で抑えてイヤイヤをしていた。人に抜かれるのは嫌らしい。残念。


 作り主ですら予想外の動きをするこのゴーレムは一体何なのだろうか。ファムのような魔法人形とも違っている。やっぱり土妖精を召喚しちゃった? それとも、作り主の無意識を汲み取って動くとか、人工知能搭載型とか? でも、可愛いから、何でもいいや。


 この子の名前はイモーラムにした。それから芋ゴーレムを沢山作ってみた。サンルームはもそもそと動く芋ゴーレムの楽園となった。




 ファーとアーも様子を見に来ている。人形のファーはアーに手を繋がれてどこに行くときも一緒に連れて行ってもらっている。土人形とも一緒に遊びたいみたいだ。後で焼き芋を手伝ってもらおうかな。


 ここは天窓からの陽射しが気持ちいい。お日様の光を適度に浴びないと病気になると聞いたことがある。楽しい引き篭もりライフのために健康を維持しなければならない。これからは毎日、日向ぼっこすることにしよう。


 イモーラム達が耕してくれた土はフカフカで、バサッと横になるとベッドに眠るよりも気持ちが良かった。

 う〜ん、と伸びをすると、イモーラム達が土をかけてきた。さては、埋める気だな? と思ったけど、どうやら布団代わりに土をかけてくれているらしい。とても温かい。


 ぴょこぴょこと歩いてせっせと働く芋ゴーレム達を見上げて、温かい土布団に入りながら眠るのはとても快適だ。


 土魔法最高! 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る