第3話

 翌朝目が覚めると、目の前には昨日の楽園がそのまま広がっていた。火の観覧車が回り、道路には火の車が走り、住人は庭先のベンチシートでくつろいでいた。私の頭のなかの妄想が影響するのか、半自動で動き続けていたようだ。


(ここまで来たら、ドールハウスというより、ドールタウンだな。)





 今日は、馬とか他の生き物も作ってみようと、製作活動に勤しんでいたら、ふとあることに気がついた。

 動く人形の中に、やたらと精巧に作られた子がいるのだ。目鼻口が炎ながらもしっかりあり、なんなら髪の毛も生えているように思える。指も何本かにわかれているようだ。


 この子も無意識のうちに妄想が反映されて作られたのかな? と思ったが、どうもそれとも違うようだ。動かそうと思っても全く思い通りに動かない。


 しばらく観察していると、どうやら精巧なその炎の子も私のお人形を観察しているようで、覗き込んだり、腕を引いて気を引いたりと、可愛らしい動きをしていた。


 やがて私の方に向きなおり、ドールタウンを跳ねながら横切り、私の膝の上に飛んてきた。


 触れると熱いかな!? と少し身構えたが、そんなこともなく、その子は私の膝の上にちょこんと座る。片手で私の服を引っ張り、反対の手で私の作ったドールタウンを指差す。


 その仕草はきっと、「なにあれ、あれで遊んでもいい?」という意味であろう。言葉は全くわからなかったけど。こちらも身振りで遊んでいいよと伝えた。


 この子は炎の妖精なのだろう。私の作った炎の人形につられて遊びに出てきてくれたのだと思う。そういえば、この世界には妖精もいたのだな、と思い出す。

 炎の人形を炎の妖精に合わせて動かしてあげれば、とても楽しそうに遊び始めた。炎の人形と呼びつづけるのもなんなので、最初に作った子をファムと名付けた。


 ファムを紹介し、妖精さんにも名前を聞いてみたら、なんて言っているのかよくわからなかった。「アー」だか、「ファー」だか言っていたので、「アー」と呼ぶことにした。ファムとファーでお揃いみたいでも良かったが紛らわしいのでにした。




 それからは馬も複数作り、ファムとアーで乗馬をしたり、遊園地を拡張して作ったコーヒーカップに二人とも乗ったりして遊んでいた。

 そしてまたよくよく見てみると、あちこちに炎の妖精が増えていた。

 水のゾーンも作っていたのでそちらを見やると、ドールサイズのプールには水の妖精も居た。

 いつの間にか風の妖精や電気の妖精、土の妖精などの各種妖精達が集まっており、ドールハウスは大変盛り上がっていた。


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