第2話

 早速部屋の中で魔法を使ってみる。この世界では人によって使える魔法の属性の違いなどはないようで、何でもできるようだ。以前のサシャも一通りの属性の魔法を使えていたことを覚えている。


 確か、指先に意識を集中し、体の中の気を感じ取りながら巡らせて、その気を指先へと流し込む。魔法をイメージし、幻視する。そこへ実態を伴わせる。そうすることで魔法が発現したはず。今回は火を出してみることにした。


 集中して気を巡らせ、指先へ火を出すところをイメージしたら、一瞬でできた。人差し指からまるでライターのように小さな火が出ている。指先は特に熱くない。


 この火力を強めることはできるのかな? ちょっと疑問に思ったので、前までは試したことがなかったが、火力調整を試みることにした。すると、細長くなった火が手の平ひとつ分ほど伸びた。危うく前髪が焦げるところだった。


 指先は熱くないが、反対の手をかざしてみると熱かったので、『魔法を使う本人には効かない』とかそういう事ではないようだ。新たな発見である。


 指先で揺らめく火をしばらく見つめて恍惚としていたが、ふと、もっと長くしたらどこまで伸びるのだろう? と思いたったので、更に実験することにした。

 結果、どこまででも伸びる。


 まずは、天井すれすれまで伸ばしてみた。燃えるギリギリで止めたのだが、少し天井がすすけてしまった。

 そしてなんと火を曲げることもできた。天井すれすれを沿って、横に這わせてみる。壁に当たる前に斜めに部屋を横切らせる。






 まるでスパイ映画の赤外線だらけの部屋のように、縦横無尽に部屋をめぐる火の線。サシャわたしの瞳はその光景に魅せられ輝いていた。

 しかしそれだけ火に囲まれていると流石に暑い。火事も怖い。次は水魔法の練習をするか、部屋を冷す氷魔法の練習をするか。


 悩んだ末、火を消すのがもったいなかったので、同時に試してみることにした。火の線を維持したまま氷の魔法を使い、部屋中を凍らせてみた。

 すると心地良い温度となり、調子に乗って火遊びを続けた。


 ここまで形を変えられるのだから、火を使っていろいろな形が作れるのではないか? そう思ったので、丸を作ったり、三角を作ったり、重ねて人形を作ったり。広めのデスクの上で色々と作ってみた。

 前世で見た、ガラス細工加工の実演。目の前の炎の中で溶けては固まり、ただの棒が繊細な形に変わり、命を吹き込まれる様。それを思い出しながら、熱心に火の加工を長いこと続けていた。

 

 結果、数々の作品ができた。

 中でもお気に入りは炎の妖精を模した人形。ガラス細工のようにはいかず、目鼻などの細かいところはできなかった。出来上がったのは頭と胴体と手足のある丸っとしたフォルムの、手のひらサイズの子。とてもかわいい。


 せっかくだから、お友達もいくつか作り、この子のためのお家も作ってみた。炎のドールハウスはなかなかシュールだか、中に入れてみるとなかなかに可愛い。なんとこのお人形は二足歩行で歩かせることもできた。


 調子に乗って遊園地も作り、観覧車まで作ったところで眠気が襲い、いつの間にか眠っていた。

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