異世界転生! 部屋から出ない!
成若小意
第1話
目が覚めたら、そこは異世界だった。
姿形も変わっていた。茶色の髪で茶色の瞳。青白い肌。そして小さく華奢だった。どうやら貴族の子供で、すでに十歳になっていた。
日本にいたときの記憶は曖昧で、最後死んだのか、それとも生きてこの世界に落ちてきたのかわからない。こちらでの十年の記憶もまた曖昧だったが、少しずつ思い出してきた。
こちらの世界での名前はサシャ。
サシャは元よりとてもおとなしい子で、人前に出たがらない性格をしていた。世が世ならもしかして何かしら精神的な病名がついたかもしれない。それほどに常におどおどしていた。
貴族の両親は、これでは社交界に出せないと判断し、病弱だったこともありサシャを離れに隔離した。
愛情が無いわけではなかったので、必要なものは過不足なく与え、数人の使用人をおき、たまに顔も見せた。しかし貴族の常としてそうであるように、あまり家族間の交流はなかった。
前世での私も、サシャほどひどくはないが引きこもり気質だったので、ここは天国だ。前の世界ではすでに社会に出ており、人と会うのも我慢できないわけではなかったが、部屋に居るのが大好きだった。
サシャの隔離は名目上は療養であったが、親から実質与えられた義務は学問に励むことだった。将来的には研究者と名乗れるように、質が良くても悪くても何かを研究するようにと言い渡された。
前世でも、引きこもって実験ばかりして名を挙げた貴族がいたように思う。こちらの世界でも同じか。せめてそのようになれることを両親からは期待されているようだ。
結果が出なくても家の財政上引きこもり一人養うことには問題は無いようで、生涯引きこもるれることを約束された身分だ。最高である。
居心地のいい部屋。部屋からでなくてもいいと約束された将来。
憧れた魔法のある世界!
よっしゃ魔法でたくさん遊ぼう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます