第4話 1月12日(4日目) リバプールで中華料理を
1月12日(4日目)
今日は、E君とOさんと3人で、EUSTON駅からInter-Cityという特急に乗り、リバプールへ行く。 イギリス産業革命に大きな役割を果たし、 現在は「斜 陽」と言われる街、そしてビートルズの故郷でもある。
私はビートルズは偉大だと思っているし、QUEENのポップセンスにも、ビートルズの影響が感じられる。Oさんはファンらしい。彼らが解散したときは中学1年だったそうだ。私は小学校低学年で、ビートルズなんて知らなかった。
列車は、電気機関車牽引の客車12両編成。機関車の運転手さんに、「写真を撮って良いか」と尋ねたところ、なんと入れとのこと。運転台からずっと機関車内を見せてくれて説明してくれた。 もっとも大半はわからなかったが、感激もいいところだ。うしろのドアから降りる。
ロンドンを出発して40分もしたらもう人家がとぎれ、それから1時間半ほど の間、なだらかな丘の牧草地という、典型的なイギリスの田舎風の景色の中を 列車は快走する。ロンドンからたいして離れていないのに、こんなに田舎になるとは。イギリスって、それほど人口密度は低くないはずだけど。
10時24分、リバプール着。ロンドンから2時間34分。まずインフォメーションで地図をもらい、街に出る。どこへ行こうか考えていたら、お兄ちゃんが声 をかけてきて、ビートルズショップへの道を教えてくれる。まずそこへ行く観光客が多いのだろう。
店はそんなに大層なものではなかったが、いろいろなグッズが置いてあった。 ビートルズだけのジュークボックスがあったので、私の好きな「ギターが泣いている」 などをかける。
店を出て、港に向かう。かつては北米大陸向けの大貿易港として栄えたところだが、今はその面影はない。 港からリバプール大聖堂へ通ずる道の両側には、 廃墟となった商店や倉庫が並んでいる。「斜陽」の象徴のような通りだ。 しか し、駅の近くはショピングセンターを中心として結構な賑わいを見せていたの で、「斜陽」だけの街と見るのは早計かもしれない。
文字どおり大きなリバプール大聖堂を見物したあと、 中華飯店で昼食。メン類が3.5 ポンド(約840円) で少し高いなと思っていたら、中国系のボーイさ んが中国語の飲茶のメニューを持ってきた(1品1.8ポンド位=約 430円)。中国人と思われたようだ。それはいいのだが、中国語よりも英語の方がわかり やすい。英語のメニューはなかったので、Oさんが解読しながら注文する。
キッコーマン醤油、マル金醤油の卓上ビンが置いてあったので、「KIKKOMAN
を知ってるか?」 とボーイのお兄ちゃんに聞いてみる。 答えはイエスだったが、 中身は台湾か香港の醤油だとのこと。日本のは品質は良いが値段が倍するという。 なめてみると、確かに濃く甘く、中国系の味がした。リバプールには中国 人は1万人いるとのこと。人口50万人の内の1万人だから、相当な数だ。日本 人もリバプール大学に何人かいるらしい。
この店で面白かったのはBGM。「パロマブランカ」の中国語バージョンの次にかかったのは、沢田研二の「時の過ぎゆくままに」 を女性が中国語なまりの日本語で歌うものだった。イギリスの中華飯店で聞く中国語なまりの日本の歌謡曲。イギリスと中国と日本が混然とした雰囲気を十分に味わった。
そのあと、 現代建築のメトロポリタン大聖堂を見物して、私とE君は駅へ向かう。Oさんはこれからビートルズツアーのバスに乗るのだが、私たちは残念ながら早く帰らなくてはならない。今夜もミュージカル (スターライト・エキスプレス!)のチケットを取ってあるのだ。
列車に乗るまでまだ少し時間があったので、駅前のショッピングセンター を覗いてみる。日本でいうとダイエーのような感じの店だ。 物価は日本とそう変わらないようだ。 肉はさすがに安く、1ポンド(約 454グラム)で70ペンス (約168円)から1ポンド50ペンス (約 360円)だった。
ある店で、みかんのような果物を買う。Satsumasと書いてあって1ネット6個で79ペンス (約 190 円)。車内で食べたら、ちょっと変わった味のみかんという感じ。どこの産だろう。日本の鹿児島県、のわけないか。 (カクヨム用注:由来は諸説あるが、温州みかんは英語ではsatsumaという。「薩摩」が語源なのは確か)
帰りもInter-City 15時46分、定刻より1分遅れてリバプール発。1時間もすると外は真っ暗になり、18時13分、ロンドン着。
スターライト・エキスプレスは立体的なステージで迫力があり、結構楽しめ た。(後日横浜アリーナでも見たが、ステージが大きすぎてかえって迫力に欠 けた。規模が大きければいいってもんじゃないのだ。)
パンフレットや記念品売りのお姉ちゃんたちも陽気で面白かった。終演後のロビーで、 記念品売場の お姉ちゃんが、 "Attention, please!"と大声を上げたところ、みんながみんな 彼女の方を振り向いてしまい、 お姉ちゃんは照れまくっていた。
ホテルに帰ると、ロンドン郊外のコルチェスターに留学している友人から電話が入る。あす夕方会う約束をする。 明日はいよいよQUEENの史跡めぐりをする日だ。ワクワクしながらベッドに入る。
※第5話(5日目)は21日朝8時公開。お待たせしました!QUEEN聖地巡礼です!
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