第5話 1月13日 (5日目) いよいよQUEEN聖地巡礼!

1月13日 (5日目)


 まず初めに、ホテルのすぐそばの「ハマースミス・オデオン」というコンサート・ホールを見に行く。ここは前述のクリスマスコンサートを始め、1975年に何回かQUEENがコンサートを開いたホールである。


 ビッグ・スターへの 階段を駆け登っていた頃だから、ステージの上の彼らはキラキラと輝いていたにちがいない。あの頃に戻って、彼らのステージを見ることができたらなあ。


 さあ、次はあこがれのファンクラブ本部だ。だが、私はひとつミスを犯していた。せっかくファンクラブへ行くのだから、誰かスタッフと話がしたいところだが、今日は土曜日なのだ。週休2日制が定着しているイギリスだから、今日はスタッフが出社しているはずがない。


 気が付いたのが日程をきっちりと立てた後だったのでしかたないが、とても残念だ。せめて日本からファンが来たことの印にと、きのうの夜、ファンレターを書いた。これを置いてこよう。


 46 Pembridge Road,London。これがファンクラブの住所である。最寄り駅は Notting Hill Gate。駅から歩いてすぐの、3階建ての建物の1階のあるドアに、金色の「46」のプレート。そしてドアホンには、“QUEEN FAN CLUB” の文字が。“QUEEN PRODUCTIONS LTD." の表示も。


 あった! ここだ! ここなのだ。まさに、ここが、 QUEENの本拠地なのだ! 今、私はここに立っている!とうとう私は、私の聖地に立ったのである。言葉ではとうてい言い表せない感動に包まれる。涙が出そうだ。(それから何ヶ月かたった今、こうしてワー プロを叩いているが、どうしてもこの時の感動が表現できない。)


 えーと、ちょっと思い入れ過剰の文章になっちゃったかな。で、やはり室内には誰もいないようだったが、もうそれはどうでもよかった。しばらくドアの 前に立っていたり、建物の前を行ったり来たりして時を過ごした。もちろん、 通りがかりの人に写真を撮ってもらうのを忘れはしない。


 去りがたき気持ちを抑え、“I shall return. ”と心の中で誓いながら、次の目的地へ向かう。昨夜書いたファンレターは郵便受けに入れた。成田で買ってきた日本人形は入らないので、ドアの前に置いておいた。


 次はメンバーのブライアン・メイ(ギター)の母校Imperial Collegeだ。行く途中、 ケンジントンというところを通る。 彼らがデビューする前、 フレディ ・マーキュリー(ボーカル)とロジャー・テイラー(ドラムス) がケンジントン・マーケットというところで古着屋をやっていたが、そのケンジントンだろうか。


 でも「マーケット」と言っても漠然としているからわからないだろうなあ、と思っていたら、“KENSINGTON MARKET" と書かれた4階立てのビルに出くわした。まさかね、と思って入ってみると、古着、ジーンズ、Tシャツ、ロックグッズの小さな店がいくつも入っている、 原宿によくあるような店だった。これはまちがいなくフレディとロジャーが昔いたところにちがいない。


 うーむ、 これも感動モノだ。記念にロックグッズ (リストバンド、 反核ネックレス) やQUEENのTシャツを買う。


 Imperial Collegeの構内に立つ。この大学の掲示板にブライアンがメンバー 募集の張り紙をしたのが、QUEEN結成のきっかけだ。つまり、QUEENはここから生まれたのだ。その事実を噛みしめて、また感動する。(「感動」という表現ばかりで気恥ずかしいが。)


 インペリアル大を後にし、ジョン・ディーコン(ベース)の母校、Chelsea Collegeへ歩く。途中、おなかがすいたのでFish&Chips Restrantと書かれた 店に入る。安いと思ったら結構高かった(タラ2.3ポンド、チップス60ペンス、 ミルク30ペンス計 3.2ポンド= 768円)が、おいしかった。街のより油が良いのだろう。


 で、地図上ではチェルシー大の場所に着いたが、あるのはKing's Collegeというロンドン大のカレッジだった。 おかしいなあ。校名が変わったのだろうか。 場所は間違いないからね。それともチェルシー大ってのは通称なのだろうか。 誰か真相を教えて下さい(こんなこと知っている人いないと思うけど)。一応感動しておく。(カクヨム用注:大学の合併でこうなったらしい)


 QUEEN史跡めぐりをいったん中断して、 留学中の友人S君と落ち会う。Oさんも一緒 (二人は面識がある)。まずロンドン最大のハードロック・ヘヴィメタル専門レコード店 “Shades Records" (とガイドブックにあったがたいしたことなかった)をのぞき、次に書店街 (Charing Cross Rd 沿い) を案内してもらう。    

 

 ここでついでにイギリスのレコード事情に触れてみよう。イギリスではCDの普及はこれからという感じで、品揃えはまだLPが中心だった。シングルは、レコードもCDも店頭にはあまり多くは並べられていない。Oさんによると、イギリスのシングル市場は小さいとのこと。


 イギリスではシングルのチャート・アクションが激しいのはそのせいだろうか。 レコード・CD・ビデオソフトのどれも、日本より値段は安い。残念ながら方式が日本と違うので、ビデオソフトは買って帰れなかった。


 本屋でQUEENの本を探したら、今回持って来ている本の原作(カクヨム用注:QUEEN A VISUAL DOCUMENTARY BY KEN DEAN)があったのでさっそく買う。チャートブックや楽譜も買う。おかげで帰国時のカバンは30数Kgにもなった。よく超過料金を取られなかったものだ。


 夕食はインドネシア料理。スープ、カニのいため物、ココナツライスで8.1 ポンド(約2000円)。 イギリス料理の店って手頃なのはほんとに少ないのよね。Oさんは用があり中座。ロンドンで会うのはこれで最後かな。


 次は、ロンドンを代表するライブハウス “Marquee”でライブを観る。開演までまだ時間があるので、マクドナルドに入り、スタンドで買った朝日新聞の衛星版を読みながらS君と話しをする。東京にいるのと変わらない感じだ。


 S君と別れ、“Marquee" に入る(入場料5ポンド)。今日のバンドは“A.W.O.L.”

と“PASSION” の二組。 “A.W.O.L."は女性ボーカルがかっこよかったが、音は特に個性はなかった。メインアクトの “PASSION" は “Heavy Melodic Rock" と銘打ってあったけど、L.A.メタル風って言うかいかにも今流行りのアメリカン・ロック風って言うかで、本場のブリティッシュ・ロックを期待していた私にはちょっと残念だった。


 もっともこれは「イギリスだからブリティッシュ・ロックが聞けるだろう」 と私が勝手に思い込んでいたからで、このバンドのせいではない。ライブハウスの雰囲気は十分に楽しめたしね。


 ボーカルの仕草がロバート・プラントに似ていると思っていたら、案の乗アンコールにツェッペリンの "Rock 'n' Roll" が出てきた。この曲を演るバンドって多いよねえ。


 地下鉄でホテルへ帰る。連日遅くまで遊び歩いているのでクタクタ。日記を 書きながら寝てしまう。日本に帰るまで体力持つかしら?


※第6話(6日目)は22日朝8時公開。ハイドパークへ行きます!


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