夫に言えない、ハナの秘密

kayako

久々にやると、すっごくキモチいい……



 私には、夫には絶対言えない秘密がある。

 それは、夜な夜な一人でこっそり耽る、秘め事……



 その夜も私は、布団にもぐりこんだ。行為に耽る為に。

 夫は仕事に疲れたのか、とっくに隣ですやすやと眠りこんでいる。

 よし、今だ。今がチャンス。



 夫に絶対見られない角度で、背中を向けて毛布をかぶりながら。

 私は左手の人さし指を伸ばし、そっとあなに差し入れ――

 その部分に触れた。

 うーん、久しぶりのせいか、結構やりごたえありそう。


 奥の粘膜に少し触れてみると、気持ちよさが身体中を貫いた。

 ふにふにとした粘膜。そのさらに奥に、だいぶイイ感じの手ごたえを感じる。

 これだ、これ。


 くちゅっ……ふにっ……くちゅくちゅ……


 指を奥へと滑らせるたび、中の塊が少しずつ剥がれていくのが分かる。

 あぁ、気持ちいい。ずっと溜まりに溜まったものが解消されていく瞬間、これが一番快感なんだよねぇ。



 確かな刺激を指先に感じながら、私はそっと指を孔から抜き出した。

 同時に、一気に脳天まで突き抜ける快感。多分、溜まっていたものが一気に取れたんだ。

 思わずそれを確認したくなって、枕元のライトに指をかざしてみると――



 濡れた指先に、たっぷりと付着した白い粘液。

 そこには少しだけ、黒めに凝固した紅も混じっている。

 血が出るほど溜まっていた証明だ。これは結構嬉しい!

 血が出てもさらにやりすぎると、刺激が強すぎて大変なことになる時もあるけど。



 はぁ……それにしても、何という気持ちの良さ。

 片方だけでこれだから、両方やったらどれほど快感だろう。

 わくわくしながら、私はもう一方の孔に、指を――



 だがそこへ、突然響いたものは。


「ハナちゃん!

 ちょっと、ナニやってんだよ?」

「わ、わぁあっ!?」


 ずっと寝ていたはずの、夫の声。

 飛び上がるほどビックリして、思わず振り返ってしまう。

 すると。



「あ……

 ハナちゃん、また鼻ほじって!!

 僕、言ったでしょ? 汚いからそれだけは駄目って!

 他は良くても、それだけは我慢できないからやめてくれって!!」



 寝起きのボサボサ髪もそのままに、大きな瞳を真ん丸に見開いて怒ってくる夫。

 あぁ、一瞬で見抜かれた……

 快楽の絶頂という時に邪魔されて、思わず叫んでしまう私。


「でも、仕方ないじゃない! 気持ちいいんだから!!

 溜まりに溜まった鼻のアカをごっそり取り除くのは!!」

「鼻クソを変な婉曲表現するのやめなよ、鼻クソは鼻クソでしかないよ!

 気持ちいいのは分かるよ? 僕も子供のころやったことあるし……

 でもさ、鼻血出るまでやるのはホントにやめよ? 鼻の穴だって拡がっちゃうし、何より、粘膜が傷ついて雑菌が入ったらおかしな病気になっちゃうかも!!」


 本当に心配そうに、夫は私を怒ってくる。

 普段は優しいけど、いや優しいからこそ、こういう時にちゃんと怒ってくれる。

 そういうところが好きで、今があるんだけど……でも。


「ね、ねぇ……

 せめて、もう片方、やってからじゃ……ダメ?」

「ダメ!」

「ヤダー! 片方やったらもう片方もやらなきゃ我慢出来なーい!」

「ダメったらダメ! でなきゃいつまでもその癖、治らないよ?」



 ――うぅ、勿体ない。

 でも、ここまで言われたらもう、諦めるしかないか。



 しかしそうは言いながらも、夫はそのまま布団をかぶって寝てしまった。

 寝つきが早くて非常に助かる。



 私は当然、再び夫の目を盗み、もう片方の鼻の穴を弄り始め――

 間もなく、ごっそりと収穫を手にした。

 こんなにスゴイ獲物は久しぶりというレベルで、素晴らしい巨大な塊。

 先端にはちゃんと血塊まで付着している。


 あまりに素晴らしい鼻クソっぷりに――

 私はごくりと唾をのみこんだ。

 ちょうどお腹も、ちょっとすいている。

 だから、思わず、ぱくりと……



 しかしその瞬間――

 再び夫の声、復活。


「ねぇ、ハナちゃん。

 それ、食べるのだけは、本当に、マジのガチで、やめようね?」


 ……う、うぅう。

 寝つきも早いけど起きるのも早い。見事に見抜かれてた!!


「い、意外と味、悪くないんだよ?

 お腹すいてたし、ちょっと口淋しい時にでも……」

「だから、ダ・メッ!

 スナック感覚でソレを口にしない! お腹壊しても知らないよ?」

「逆に雑菌に免疫つくかも知れないじゃん!」

「つかないから! 根拠ないから!!」



 ――こうして私の秘め事は、あっさり夫にバレてしまった。



 それでも私は今も定期的に、やっている。チョー快感の鼻ほじりを。

 夫の見ていない場所で、今日もこっそりと……粘膜の奥をいじっている。



 そんなことを繰り返しているうち、私の本当の目的は――

 夫にバレて怒られるまでが、ワンセットになってしまった。

 彼の真剣な怒り顔、とってもカワイイんだよね。普段は優しくて私を甘やかしてばっかりだから、たまに怒り顔が見たくてたまらないってのもある。


 そこまでは多分、さすがの夫も気づいてない。

 ――これはずっと、私だけの、秘密。



Fin

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夫に言えない、ハナの秘密 kayako @kayako001

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ