第10話 話し合い中断、フリマ機能を試してみよう
「条件次第だな。具体的に何を提示できる?」
「この辺りに生息している魔物の素材なら無理なく交換に出せる。もちろん浄化はこちらで受け持つ。あとは食べ物以外で言うと……特定の個人間でのみやり取りされている特別な酒を少量なら渡せるぞ。その分そちらに出してもらう分は多くなるが」
酒?酒か……ちょっと興味あるな。
何でも創造できるとはいえ、それを知っていないと指定もできない。
魔物の素材もそうだ、知っているならば創造できるけど知らなければ創造できない。
この辺りの魔物の素材とやらを一通りもらおうかな。
「酒にも興味があるが……知っての通り俺たちは他の世界から来たから魔物の素材には興味がある」
「ん?他の世界出身とは聞いたが……魔物はどこにでもいるだろう?」
あれ、魔物についての話はしてなかったっけか。
「いや、俺のいた世界には魔物なんていなかったよ」
「なんと……瘴気自体が存在しないのか?羨ましい限りだ」
この世界では瘴気に包まれているのが当たり前なんだもんな。
魔物は瘴気から現れるから、魔物がいないイコール瘴気が無い、と考えつくわけだ。
「魔物を知らなかったのなら外のゴブリンを見て驚いただろう」
「ああ、俺たちは武器こそもらったものの戦ったことなんて無い奴らばっかりだったから誰もゴブリンを殺せなかったよ。生き物を殺すことに忌避感があるんだ」
「……殺さなかったということは逃げ回っていたということか?森の中を?」
「いや、襲われてはいたから怪我をさせて追い払ってた」
と言うと、アメルダは考える間も無く立ち上がった。
それと同時に部屋の扉が荒々しくノックされ、男が入って来る。
「報告!ゴブリンの襲撃です!」
「チッ、もう来たか。戦闘員に伝令、防壁にて迎撃準備!」
「了解!」
「ニアノーは私と共に、お前はしばらくこの部屋にいろ。絶対出るんじゃないぞ」
そう言ってアメルダたちは慌ただしく出て行ってしまい、この部屋に俺1人だけ残された。
えっ、なにこの急展開?
少し困惑したが、ここから出るなと言われた以上追いかけるわけにもいかずとりあえずソファに座った。
うーむ、硬い。っていうかこれただの木の枠組みに分厚い布が何重にも敷いてあるだけだ。
ゴブリンの襲撃、か。
俺たちでも追い払える程度には弱いんだから、まあ大丈夫だろう。
この地下拠点の上には村があって、その周囲は木の壁で覆われている
木の壁と言えば頼りない印象を受けるが、木の板が何重にも打ち付けられた壁が何メートルも上まで建造されていた。
俺たちが壁の一部を壊して入るのも相当苦労したもんな。
あ、あの穴大丈夫かな……一応土で頑丈に固めたからちょっとやそっとじゃ壊れないと思うけど。
俺の[創造魔法]はイメージ次第で何でもできるらしい。
なので土で塞いだとはいえ、その土の強度はこれでもかと硬く固めたので鉄よりも硬いはずだ。
土でそこまで硬くなるはずが無いって?それはあれだ、魔法だからな。どうとでもなる。
俺も原理や理屈は知らん。
多分やろうと思えばもっと色々なことができるんだろうけど……俺の考えが及ばないとどうにもならないからな。
この部屋から出るなと言われたし思いもよらず暇な時間ができたので、転生者スマホの掲示板を見ることにした。
みんな思い思いのスレッドを建てており、選んだ世界毎のスレッドもある。
俺と同じ世界、4番目の瘴気に満ちた世界のスレッドを覗いてみた。
転生から1日経ったところだが、降り立つ場所によってみんなそれぞれ異なる行動をしている。
近くに村やコロニーがあったから保護してもらった人たちもいれば、現地人を見つけられなくて洞窟を掘って一晩明かしたり野宿した人たちもいる。
野宿した人はしょっちゅう魔物に襲われて大変だったみたいだ。
みんな大変だったみたいだな。
それに比べれば俺たちは魔物の脅威の無い拠点で眠れて割とまともな飯を食えたからマシな方だった。
ここにいない転生者たちを集めて転生者だけのコロニーを作ることも考えなかったこともないが、ここにいる半数の転生者の態度を見て関わりたくないという気持ちが強くなった。
それに関わりを深くすると俺のチートがバレるからできるだけ関わらないようにする方が良いだろう。
だけど、真面目に頑張ってるまともな転生者もいるはずだ。
そういった人たちをこっそり手助けしようと思っている。
ではどうやって手助けするのか?
このスマホにはフリマ機能がある、手持ちの物を金銭や他の物と交換できる機能だ。
出品は匿名でできるので、これを使って他の転生者たちへ些細な支援をしようと思う。
掲示板を見たところ、塩っ辛くて臭い干し肉だけじゃお腹が膨れなくてひもじい思いをしている人が多かった。
それはこの世界に限った話ではなく、他の世界でも同様だ。
なので、初回の支援は食べ物だ。
とはいえあからさまに前の世界にあったような既製品や文明的な食べ物を支援するつもりは無い。
手軽に食べることができてお腹に溜まり、日本人が喜ぶ物。
そう、おにぎりだ。
俺は[万能創造]のカタログを開いた。
カタログでは地球にある物を一覧から見て創造することができる。
某有名コンビニを開き、おにぎりの欄を見た。
そうだな、ひとまず……鮭、おかか、梅を各100個ずつ。
これに条件を追加して……創造!
[亜空間収納]に瞬時に300個のおにぎりが現れるのを感じる。
これをフリマ機能に登録していく。
[亜空間収納]の中から条件指定して一括登録できるから楽だな。
登録の際に重要な文章を書いて、と。
『
某有名コンビニの基本のおにぎり。
・このおにぎりは転生者スマホのフリマ機能へ再登録できません。
・転売厳禁。購入者以外の手に渡ると消滅します。
・開封してから10分以内に食べ切らないと残った物は消滅します。
・包装や食べ残しは開封後10分で消滅します。
・どうにかして開封せずに中身を取り出しても、『中身が空気に触れる』『中身が包みから出ていると判定される』『その他ルールの穴を突いた行為』を行うと開封したとみなされ同様に10分後に消滅します。
』
これはただの脅しではない。
おにぎりを創造する際にこれと同じように条件付けをしたのである。
なのでルールを破れば、つまり転売したりすれば購入したとしても消滅するのだ。
創造する際は目の前にタブレットウインドウのような物を出すことができ、そこに条件を入力して登録することができる。
創造の際に個数を指定し、その登録してある条件を選べば良い。
なので300個分わざわざ入力したわけではないのである。
フリマ機能なので金銭と交換もしくは物々交換で求める物を指定する必要がある。
が、これで暴利を貪るつもりは無い。あくまで支援だからな。
まずはこれで様子見だ、他の転生者たちがこれでどういう反応をするのか。
ということでこちらが求める物はおにぎり1つにつき銅貨1枚だ。
初期配布の物資の中にお金があった。
その袋の中にはお金について書いている紙があり、最初に選ぶことになった5つの世界では貨幣は全て同じ物が使われているそうだ。
商売の神とやらが発行している特別な硬貨らしい。
もちろんその世界によって物の価値は違うが、貨幣が同じならそれを指定しても問題あるまい。
登録が終わったら、次はステータスの確認だ。
今の俺のステータスはこうなっている。
名前 :リオ
種族 :人間
レベル:1
魔力 :J
スキル:
【共通語理解】
【特殊技能】
【水属性魔法】
【スキル禁止】
【魔法禁止】
【ステータス低下】
【パラライズ】
【結界(快適保障付き)】
【特殊技能】は言わなくても分かるな、チート系のあれそれのことだ。
ここに[亜空間収納]とか[万能創造]とかがまとまっている。
【水属性魔法】は水属性の魔法を使えるようになるスキルだ。
しかし俺は【特殊技能】の[創造魔法]で自由に魔法を扱うことができるので、このスキルがあったからと言って何が変わることでもない。
一応付与はしてみたものの、このスキルは俺にとってはいらないスキルだろう。
【スキル禁止】は対象のスキルを使えなくなるスキル。
目視できる範囲にいる相手になら誰にでも使うことができ、再使用でスキル禁止状態を解除することができる。
【魔法禁止】は【スキル禁止】の魔法版だ、その名の通り対象が魔法を使うことを禁止する。
このスキルで重要なのは魔法だけではなく、魔力を用いることは全て使用禁止になることだ。
その世界によって魔法だったり魔術だったりするかもしれないからな。
【ステータス低下】は対象の身体能力を著しく低下させるスキルだ。
筋力、腕力、敏捷、器用さ、頑丈、打たれ強さ、その他様々な身体能力。
威力の調整もできるので、やろうと思えば体を支えている筋力を生まれたての赤子と同等にして全く動けなくさせることもできる。
これも再使用で解除可能。
【パラライズ】は対象に麻痺を与えるスキルだ、部位の指定も可能。
感覚を失くすこともできるし痺れさせることもできる。
これも威力の調整が可能だが、やりすぎると呼吸器官まで麻痺して下手したら死んでしまうから注意だな。
上手く使えば手術の麻酔なんかの用途にも使える。
【結界(快適保障付き)】。
これはアメルダたちとの一触即発の現場では使うことは無かったが、俺の防衛手段だ。
使用すると結界を指定する位置に設置することができる他、自分を中心に展開させることもできる。
結界は俺に害を為す物や攻撃、魔物の存在そのものなど基本的に俺へ危害を加える物を阻む。
その他俺が指定した物を阻むこともできるので、瘴気を指定してしまえば初期配布の携帯結界装置が無くても外を出歩ける。
これの凄いところは、(快適保証付き)の部分だ。
結界内は俺が快適に過ごせるように調整される。
外が蒸発しそうなほど暑くても結界内はちょっと暑いな程度の気温になるし、逆に凍死するほど寒くてもちょっと寒いな程度の気温に調節される。
湿度ももちろん適度に除去されるし、わざわざ指定しなくても汚い空気や瘴気のような毒素もデフォルトで阻む。
そして宇宙空間や水の中のように酸素が無くても自動的に新鮮な酸素が供給されるし、一定以上の風圧や海底の水圧なんかも無効化。
とにかくこの結界を周囲に張り巡らせている以上、俺が死ぬほどのダメージを負うことは無いということだ。
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