第2話 秘密の尾行
「シルフィ、待った?」
「いや、今来たとこ」
土曜日の朝。
隣りの県の私鉄の駅で、私はある人と待ち合わせをしていた。
「ていうか、なに、その髪!?」
「笑わないでよ。ぷらっちだってそうじゃない」
ぷらっちが私の髪を見て笑う。そう、待ち合わせの相手は、ホワイトウォッチーズのセンターのぷらっちだった。
普段私は髪を緑に染めている。シルフィとして。それがいきなり黒髪で登場したもんだから、ぷらっちに笑われてしまったのだ。
そういうぷらっちだって違和感の塊だよ。ショートの銀髪がいきなり黒髪になっちゃったら、いつものクールビューティーがただのおかっぱ女子大生に成り下がったって感じ?
「これにサングラスを掛けたら、とんでもないことになりそうね」
「でも翔たちにバレたら計画はおじゃんだし……」
二人が黒髪に戻したのには理由がある。
今日は、弟の翔がめぐみちゃんとデートの約束してるから。二人の様子をこっそり観察しようってわけ。銀髪と緑髪の女性二人がサングラスを掛けてたら、目立っちゃって一発でバレるよね。
ていうか、翔から聞いたところでは、一方的にめぐみちゃんから誘われたって話だけど。
「翔くんって、どの子?」
「まだ来てないわね。もうそろそろだと思うけど」
すると実家の方から一人の若者がやってきた。
スニーカーにジーンズ、そして上は大きめの紺のパーカーを羽織っている。
いやいやいやいや、その恰好はないでしょ? 女子から誘われたとはいえ仮にもデートなんだからさ。
ダボっとした上着の袖で白の腕時計を隠そうという意図はわかるけど、それじゃただの普段着だよ。
「あれだよ、翔は。ジーンズにパーカーの男の子」
「じゃあ、サングラスかけなくちゃ」
「だね。めぐみちゃんはまだみたいだけど」
私たちは翔に見つからないよう物陰に隠れながら様子を観察する。
翔は駅前ロータリーのベンチに座り、スマホを触り始めた。
しばらくすると、一人の女の子が駆け寄って来る。めぐみちゃんだ。腕には私が翔に貸した白い腕時計が光っている。白のブラウスに、黒のミニスカートと白のスニーカーという、完全に白の腕時計を意識したコーデに身を包んでいた。
翔が立ち上がり、二人は並んで駅に向かう。二十センチくらいの距離をあけて。
なんか初々しいなぁ。恋人になりたくてもなれないクラスメートの距離感。
私も高校生の頃にこんなデートをしてみたかったと感傷に浸りながら、ぷらっちと一緒に尾行を開始した。
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