第6話 不知火家
百年前、当時の帝の元に不老不死の薬と銘打って、黒い棺に入った木乃伊が献上された。
その木乃伊は、通常の木乃伊とは違い、包帯で覆われておらずむき出しで、口元には狼のように鋭い牙があった。
薬として献上するために、木乃伊の身を削る際、削っていた使用人の指が傷つき血が落ちた。
すると、木乃伊は血を追い求め動き出し、使用人の首に噛みつき殺してしまう。
騒ぎを聞きつけた警備の者が現場に到着したとき、そこには木乃伊ではなく艶やかな黒髪をした白肌の美丈夫が立っていた。
木乃伊から美しい人間の姿へと変貌を遂げたそれは、食事に人間の血液を摂り、常人よりも力が強く、姿を狼や蝙蝠へと変貌させた。
また、どれだけ切りつけても、首を切り離しても死なない様に、時の帝は興奮を隠せなかった。
木乃伊に敵意がないことを確認した帝は、自らを不死にするよう求めたが、木乃伊は自らの弱点を語り帝を諭す。
曰く、日光が苦手であること、人間の血を飲まなければ生きていけないこと、銀に触れることができないこと。
そして、木乃伊と同じように不死の身になれる人間は、ごく少数であること。
木乃伊の言葉に慎重になった帝は部下に命じさせ様々な実験を行った。
木乃伊の言葉通り、木乃伊に血を吸われ、木乃伊の血を与えられた者は、一度死した後に復活し、彼らと同じ能力を発揮したが、生きていた時のような知能がなくなりただ血肉を求める獣のような存在になった。
木乃伊はそれを、なりそこないと呼び、帝からは屍食鬼と名付けられたそれらは実験を重ねるごとに増えていった。
木乃伊ほど強くはないが、人間よりも力が強く、首を跳ねても死なず、ただ血肉を求め続ける狂暴な屍食鬼を持て余した帝は、木乃伊に向かい屍食鬼を処分するよう命じた。
そこで木乃伊は、自分を独立したこの国の人間として認めてくれたら、増えてしまった屍食鬼(の全責任を引き受けると請け負った。
そうして出来たのが不知火家だ。
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