こっくりキャプチャー・プラン 3
『狐狩り(フォックス・キャプチャー・プラン)』
◆用意するもの◆
・50音表
・コイン
◆遊べる人数◆
2人~
◆ゲームの準備◆
プレイヤーは親(『こっくりさん』)と子にわかれる。
親は秘密裡に言葉を一つ指定する。
言葉は以下の条件に合致するものとする。
・存在する言葉である。
・ひらがな6文字で、最も一般的な表記でー(伸ばし棒)を含まない。
・同じひらがなを含まない。
言葉に含まれる文字を『罠』として記録する。濁音・半濁音は純音に変換する。(『ば』・『ぱ』→『は』が『罠』になる)
50音表の上にコインを置き、プレイヤー全員が、コインの上に指を置く。
◆ゲームの手順◆
【質問】→【回答】→【指摘】を順に行う。
【質問】
子は、『こっくりさん、こっくりさん』の後に、親に質問をする。
【回答】
親は子とともにコインを動かし、表上のひらがなを示すことで質問に回答する。
回答の際、『罠』になっている文字に止まった、または通過した時、その『罠』の文字を公開する。
公開された『罠』の数が、指定した言葉の文字数の半分(3文字)に達した時、親は即座に『リーチ』を宣言する。
【指摘】
子は、親の決めた言葉を指摘する。
上記手順を、終了条件を満たすまで繰り返す。
※回答は端的に行う。質問は、端的に答えられるもののみを行う。必ずしも単語で答えられる必要はないが、長文の答えや、長い文章を回答として要求する質問は不可。
※回答の際、延ばし棒(ー)は前の文字の母音の文字で代用する。
※コインを動かす際、最短経路・最小の移動回数の経路をとる。
※回答の際、親は子にわかるように発声する。
◆終了条件◆
・親が指定した言葉の文字数の半分(3文字)より多く=『リーチ』がかかってから1文字以上新たに文字が公開された状態で、子が言葉の指摘に失敗する
→親の勝利
・指定した言葉のすべての文字が公開される
→親の勝利(即座にゲームが終了し、言葉の指摘はできない)
・子が言葉の指摘に成功する
→子の勝利
◆
「な、何なのここ……私たち、家にいたはずじゃ」
戸惑う綾瀬にかまうことなく、『こっくりさん』はコインと五十音表を机においた。
「ルールは理解できたか?もちろん、ワシが親、『こっくりさん』じゃ」
いつのまにか私たちは中学校か高校の教室にいる。血のような、不気味な赤さの夕日が差し込む教室に。また異空間に巻き込まれてしまったようだ。
「あの、これってやっぱり私も」
「せっかくじゃ、お前らも遊んでいけ。本来はワシと姉のゲームなんじゃがな。乗りかかった船じゃろ」
「それは本来巻き込まれた側のセリフじゃないですかねえ」
『きさらぎ駅』のことを考えると、この異空間からもゲームをクリアしない限り抜け出せなそうだ。
「……俺はかまわない」
五十嵐さんは、『狐狩り』のルールを聞いても、特に驚いた様子がなかった。
「私も、綾瀬を助けられるならいいですけど。五十嵐さん、これ無理ゲーだったりしないですか?普通の言葉あてゲームに見えるんですけど」
「ああ、話を聞く限りはまっとうなゲームだ。そもそも、この手の『怪談』がわざわざゲームの土俵に立つとき、ルール自体が壊れてるものはあり得ない。ルールの強制力は、公平性があってはじめて成立するからな」
私はちょっと納得するところがあった。どんな理不尽なルールであっても、ルールがルールたりえるには「公平であること」が求められる。守ったり守られなかったりするルールは、もはやルールではない。
五十音表を指でなぞりながら、五十嵐さんは続ける。
「『狐狩り』は、おそらく『罠』になっている文字を探す、というよりは、『罠』以外の文字をできるだけ潰していくゲームになる。タイムリミットは、4つ『罠』を踏んでしまうまで。それまでに、できるだけ多くの情報を集めなくちゃなんねえ……まあ、4つ目と5つ目の『罠』を同時に踏めば、5文字までは確定の情報を引き出せるが」
「ほぉ、やはり聡いのう小僧。だが忘れるなよ?6つ全部の『罠』を踏んでしまったら、その時点で貴様らの負けじゃからな」
つまり、私たちはできるだけ『罠』でない文字を探さないといけないけど、その過程で『罠』を4つ以上踏んではいけないというわけか。
「ほれ、さっさと始めるぞ。席につけ」
『こっくりさん』に促されるまま、私たち3人は、小さな学校用の机を囲む。綾瀬はまだ状況が完全に吞み込めていないようだったが、私がアイコンタクトすると頷いて、指をコインにおいた。
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