#52 愛想がある人は、第一印象で好印象を持たれやすい。
ある日の放課後、俺は風紀委員の仕事を手伝っていた。もちろん一輝の周りの動向を探るためだ。かと言って、ただ手伝うために来たとか言ったら怪しまれると思ったので、一輝に一緒にカフェに行く約束を漕ぎ着けた。これで俺が一輝の仕事を手伝う理由が出来たのだ。
因みに今日の仕事内容は、掃除であった。掃除はクラス毎に各教室、二日に一回のペースで行われているものの、廊下や階段などのあまり目立たないところにはゴミがそこそこ残ってしまっていたため、それを風紀委員が掃除する役割だと言う。
その他には、主に校則違反の取り締りや、服装規定の順守、あとは会議あたりだろうか。とりあえず部外者がいても目立たない掃除で良かった。
ほうきでゴミをまとめていると、柴田さんが近づいてきた。何故かわからないがニヤニヤしているし……。
「神里君〜。手伝ってくれてありがと〜」
「いや、流石に何もしないで待っているのはアレだしね」
「図書館で待っているとか他にも方法あるじゃん」
彼女はもしかして俺を邪魔だと思っているのかな? まあそう思うのも無理はないかもしれないけれど。
「確かにその手もあったね」
「そういえばさ、わたしあんまり神里君と仲良くなれてないから、もっとお話ししたいな〜」
そう言って俺に体を寄せてきた。いくら彼女の裏を知っているとはいえ、俺は女子に免疫があまりないので、いやでも意識してしまう……。
「ちょっと離れてくれ……」
「怜遠、柴田さん。手が止まっているよ」
一輝が助け舟を出してくれたので、、俺はほうきを持ち直して掃除を再開しする。
「チッ……。ごめんね森君わかったよ〜」
今、舌打ちが聞こえてきたような気がするが……。まあ首を突っ込むと面倒なので気にしないでおこう。
それから掃除を続けて、綺麗になったので、風紀委員で集会を行うことになったので、もちろん部外者の俺は退出して廊下で待っていた。
すると、扉が開いたので一輝かと思って近づくと、柴田さんが出てきた。目が合うとすぐにこっちに向かってきて、
「神里君もしかしてわたしのこと待っててくれたの?」
なわけないだろ。というツッコミは心の中にしまって、静かに首を横に振る。
「一輝はまだ来ない?」
「ごめんね〜。わからない」
明らかに分かっているふうに答えてくる柴田さんを、俺は煩わしく感じながら、教室の中を覗く。
そしたら、中から荷物をまとめている一輝が見えたので、俺は声をかける。
「ごめんね怜遠。すぐ行くね」
一輝のことを待っていると、再び柴田さんが、俺に話しかけてきた。
「わたしとは、仲良くしたくない?」
「別に、そういうわけじゃないけど……」
ただ、彼女みたいなタイプが苦手なだけである。男子に媚を売っており、腹黒なところも見てしまっているので、余計にそう思ってしまう。
ただ、一輝の状況を把握するのに、彼女の力も必要となりそうな気がするので、仲良くしておくのも悪くはないと思うのも事実だ。とりあえず悪印象は与えたくないので、普通に接しておこう。
「分かった。また今度話そ」
「……うん! 神里君よろしくね〜」
俺に向かって微笑んでいるけど、愛想はあるし。普通に可愛い。これは男子達から人気が出て、『柴田親衛隊』というものができるのもわからなくはない。
愛想がある人は、第一印象で好印象を持たれやすいということがよく分かった。
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