#42 定期考査の結果は、気になるものである。
林間学校が終わってから初めての登校日。俺は、学校に向かっていた。駅で一輝と待ち合わせをしているので、時間に間に合うように調整する。因みに、真斗は部活の朝練があるので、一緒にはいけない。
駅で単語帳をやっている一輝を見つけたので、声をかける。
「おはよう一輝」
「あ、怜遠おはよう」
彼のやっている単語の範囲を一瞥してみると、学校で行われている単語テストの範囲をゆうに超えていた。俺ももう少し頑張らないといけないと思った。
「隙間時間で単語やってるのすごいね」
「学校のペースに合わせてたら後々大変だからやってるだけだよ……」
彼はそう言っているが、俺らの学校は他の学校に比べてやっている内容も難しいし、スピードもそこそこ速いと思う。昔の俺なら絶対についていけないくらいに。
「てか、今日多分テスト返ってくるよね?」
「だね。点数どのくらいかなあ……」
彼はまだ知らないと思うが、この学校はテストが帰ってくる前に掲示板に学年五十位まで張り出されるのだ。それから、各教科の点数トップ三位まで。もちろん前世で合計点数五十位以内にはいったことはなかった。まあ、国語だけはトップ三位に入ったことあるけど。
「一輝のことだから、全教科高いんじゃない?」
「いや、社会とか理科あんまり得意じゃないし……」
彼の得意じゃないも大田さんと同様、得意科目に比べて得意じゃないというだけで、全く苦手ではない。
「苦手って言っても平均点くらいだろ? 俺の場合の苦手はもっと酷いからね……」
とは言ったものの、苦手な数学の試験範囲は二次関数である。二次関数は数学の中でも比較的解きやすいので、平均点は超えると思う。
それから電車が来たので、乗りこんだ。電車に乗っている間、林間学校での思い出を話し合った。
「なんやかんや、全部面白かったよな」
「確かにね。因みに僕は映画鑑賞が一番心に残ったかな」
「俺は、オリエンテーリングかな。みんなで協力してクリアしたのが楽しかった」
オリエンテーリングは何もハプニングが起こらずに終わったし、心残りも一切なく楽しめた競技だったからな。
それからも俺は彼と色々と話した。風紀委員についても軽く触れておいた。柴田さんはあまり仕事をしないらしく、一輝が多く頑張っているらしい。恐らく彼女が風紀委員に立候補した理由は、内申稼ぎだろう。前世でも、どこの学校かは忘れたけど、推薦を利用していた覚えがあるし。
もう五月の半ばということもあり、そこそこ暑くなってきている。セーターやベストで登校している生徒も見受けられるし、俺も、朝しかブレザーを着ていない。
学校の下駄箱につくと、生徒たちが、掲示板の前に集まっているのが見受けられた。恐らく、試験の順位が発表されているのだろう。
「一輝、見に行こうぜ」
彼を連れて、掲示板に近づくと、詳しい内容が見えてきた。
知っている人だと、一位に駒田さん、二位に大田さん、三位に一輝、八位に柴田さん。十二位に俺、十三位に鈴木。そして、三十六位に伊藤さんがいた。このクラス頭いい人が多いなと感じた。
まず、駒田さんが一位で、大田さんが二位だったことに驚いた。前世では、大田さんが一位以外を取ったイメージがなかったので、何かあったのか考えてしまう。ただ、同時に駒田さんが頭が良かったことも覚えているので、特別おかしくはない。
それから、俺がここまで高順位だったことにびっくりした。確かに少しは勉強に力を入れたものの、ここまで取れているなんて思いもしなかった。
「怜遠科目別ランキング国語一位だよ!」
そう言われたので、じっくりと見てみると、確かに俺が九十八点で一位に君臨していた。自信はあったが、まさかここまで取れているとは思わなかった。古文に関しても、九十五点で一位だったので素直に嬉しい。まあ、それ以外のトップスリーは、大田さん、駒田さん、一輝で基本構成されていたけれど。
大田さんは英語一位であったし、一輝も数学二位を取っていた。結局、この二人には今のままだと総合では敵わないということがよくわかった。
そこに大田さんが登校してきた。
「おはよう、大田さん」
「おはよう」
「神里くん、森くんおはよう」
制服の大田さんを久々に見た気がする。何着ても可愛いなこの子は。
「そういえば、テストの順位張り出されているよ」
「うん。見てくるね」
彼女がじっと掲示板を見ている横で、俺たちは待っていた。
「二位ってすごいね〜」
「ありがとう。でも森くんも三位だからそんなに変わらないよ」
俺はこの二人ほど勉強できないので、二人の会話に入らないのが無難だろう。
「神里くんも、やっぱり勉強できるんだね」
「……いやいや、二人に比べたらスッポンだから。国語がたまたま良かっただけだよ」
そこに駒田さんがやってきて大田さんの前まできた。恐らくテストの順位についてのことだろう。
「大田さん、私に何か言いたいことあるかしら?」
「駒田さんすごいね。私負けちゃった」
「……それだけ?」
「うん」
「なんで……。そんなに平気そうなの?」
二人の会話が少しヒートアップしたところで、朝練を終えた真斗がやってきた。俺と一輝がこれまでの経緯を説明すると、彼が二人の間に割って入った。
「まあまあ、駒田さんそれは言い方ひどいと思うぜ」
「
「じげ? オレのこの金髪は染めているけど?」
地下……。 殿上をすることを許されていない官人の総称である。つまり、成績を身分だと仮定して、真斗を位付けしたということだろう。彼は地下の意味を履き違えているみたいだが。
「まあまあ、もうホームルーム始まるし一回戻った方がいいよ」
「その方がいいよ」
「……そうね」
そう言って彼女は戻って行った。駒田さんは前世でも全く喋ったことがなかったので、こういう性格だということを知らなかった。少なくとも、学校のテストで一回勝ったことでそこまで思うことかなと思うし。
「大田さん大丈夫?」
「うん。ありがとね、三人とも」
「いや、今回は真斗のおかげだから彼に言ってあげて」
「うん」
「そうだね。田中くん、ありがとう」
「気にしないで。オレはいつでも聖女の味方だから」
なんか言っているが、気にしないでおこう。
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