#39 映画を鑑賞した後の感想会は、みんなの感想が聞けて楽しい。
「やばい。マジで感動した」
「そうだね。ボクも泣けてきたよ」
色々な人が感動したと言っているようで、この映画は高評価だった。俺も、映画では見たことが無かったので、ちょうどよかったと思う。
とりあえず、この本を読んだことがある伊藤さんに感想を聞いてみることにしよう。
「伊藤さん、この映画どうだった?」
「・・・・・・寧々ちゃんが力を振り絞って会話するシーンからずっと泣きっぱなし」
彼女は目を赤くしながら俺にそう伝える。確かにあそこら辺から泣く人は増えていたし、俺もうるっときていた。
「確かに。寧々可哀想だよね」
続編が出るなら、寧々救済ルートでお願いしたいくらいだ。
他の人にも感想を聞いて見たかったので、みんなに聞いてみることにした。
「大田さん。どうだった?」
「寧々ちゃんもそうだし、拓也くんが泣いているシーンも感動しちゃった」
拓也が今までの感謝を泣きながら伝えているシーンは、確かにいろいろ考えさせられるし、感動するだろう。
「一輝は?」
「あくまで拓也が一人称だから寧々の気持ちは詳しく分からないけど、幼馴染の最期を看取る拓也について、思うことがたくさんあったよ」
「確かにね。しかも一人称の方が感情移入できるよね」
一輝に関しては見ている次元が違った。確かに、拓也視点で物語は進んでいったので、彼女の心情ははっきりと描写されない。ただ、彼女の行動と言動で、どんなふうに思っているかなどはわかるし、むしろこちらの方が面白みがある。
「真斗はどうだった?」
「いろいろとやばい。めっちゃ感動した」
見る前は『絶対感動しない』と言っていた真斗ですら、この変わりようであった。やっぱり、映画というものは面白い。
莉果にも聞こうとしたが、気まずい空気になっているのを思い出したのでやめた。ただ、大田さんが彼女に感想を聞いていたので、横から聞くことができた。
「流石に寧々が見てて可哀想すぎたわ。だらしない男と、親のせいで」
なるほど、拓也に対してもマイナス要素を持っているようだ。
確かに、この作品を見た人は、拓也の評価が二つに分かれる。幼馴染との別れによって感情を見つけることができたと思う人と、彼のせいで、寧々が悲劇のヒロインになってしまったと嫌う人がいる。因みに俺は前者である。あくまで、拓也の感情の変化がメインであるので、前者の感情しか持っていなかった。
「リカもわかる? あたしもタクヤうざいわ」
「確かにちょっとアレだよね〜」
やはり映画だけだとこう思う人も多いのかもしれない。原作を読んだら拓也に対する評価が変わると思う。
「ボクは拓也クンの心情とか、考えの変化について考えさせられたし、拓也クンに対してマイナスのイメージを持っていないよ」
「俺も最初は『何だこいつ』って感じだったけど、終盤のシーンではもうそんな感想はでなくなってたぞ」
この二人はポジティブなイメージを抱いていたらしい。鈴木はまだしも、石井がこう考えていたのは意外である。
「石井なにカッコつけてんの? いい人ぶらなくていいから」
「は? 黙れよ関根」
「まあまあ、二人とも喧嘩しないで〜」
「柴田さんはこの態度がでかい関根とは大違いだわ〜」
「黙れチビ!」
「ブーメラン刺さってるぞー」
どんどんヒートアップしている気がするけど、大丈夫だろうか。最悪、俺が止めに入るつもりだけど。
「二人とも、いちいちこんなことで喧嘩してもしょうがないでしょ? やめよ?」
鈴木は流石のコミュ力で、二人を宥めていた。彼のコミュ力があったら、俺は何ができるのだろうか。
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