#36 宿泊行事の夜は全然眠れない。
その後、無事解放された二人と共に、俺らは部屋に戻った。とうに二十四時を過ぎていたので、流石に俺は寝ようと思って、布団に入った。しかし、真斗と石井はまだ寝る気がなさそうであったので、邪魔はしないようにとだけ言っておいた。
「おい石井それはずるいって」
「このハメ技きもちいい〜」
なお、しっかりと声が響いているが・・・・・・。寝れそうになかったので、携帯で色々見ていると、野球の記事が目に入った。『チームジャイアント、十連勝』と書かれていた。このチームは、真斗が推しているチームであった。正直俺は、あの企業に入ってからスポーツを見る暇がなくなってしまい、興味が薄れてしまった。当時は、マリンズというチームを応援していたのを覚えている。真斗にこの記事を送ってみると、
「ジャイアント勝ったんか。すげえ」
「俺、あんまり野球わからないんだよな〜」
「見るならジャイアント応援しようぜ」
真斗は石井に布教をしようとしていた。まあ、スポーツ観戦仲間を増やすなら、同チームのファンに持って行こうとするのが普通だと思うので、おかしくはない。
「気が向いたらなー」
「オッケー」
それから、記事を見続けていると、カップの田中選手がホームランを打って勝利していた。伊藤さん。喜んでいるだろうな。その選手の顔見ると、自分ではよくわからないものの、かっこいいというのは分かった。この選手に似ていると言われるのは、普通に褒め言葉だな。
少し寝返りを打つと、鈴木に当たってしまったらしく、目が合ってしまった。
「ごめん鈴木。次から気をつけるよ」
「気にしないで。てか全然眠れないね」
「まああの二人がアレだから仕方ない」
少し雑談しながら、俺らは時間を潰していた。この林間学校で何が楽しかったとか、みんなとどのくらい仲が深まったかなどを話した。改めて、莉果との仲違いを除けば、俺は相当楽しめていると思う。
「そういえば、神里クンって女の子と仲がいいよね」
「それ、鈴木に言われると嫌味にしか聞こえないんだけど」
「特に大田さん」
まあ確かに自分で言うのもアレだが、男子の中で一番彼女と仲が良いのは俺だと思う。鈴木は基本女子とも仲良いが、彼女と二人で喋っているところはあんまり見たことがない。
「どうやって、あんなに仲良くなったの?」
『転生して仲良くしようと努力したから』とは絶対に言えないので、なんと言うべきだろうか。
「席が近かったし、自然とかな?」
自分の頭の中で導き出した最適解は、これだった。おかしくは無いはず。実際、少し社交的になろうと努力しただけで、今のような状況になったのだから。
「そうなんだ。やっぱり神里クンって人と仲良くなるの得意なんだね」
今の俺でもコミュ力に関しては並以下だと思うのだが、実際、部屋班のメンツと、行動班のメンツ以外とはあんまり仲良くなれていないし・・・・・・。
「全然そんなことないよ。少なくとも鈴木よりはないし」
「そうかな?」
「うん」
そのまま少し話して、俺らは目を閉じた。なお、まだあの二人はゲームをやり続けていたみたいで、部屋には彼らの声が響いていた。
「・・・・・・クン、ボクは・・・・・・ライバルだと思ってるよ」
鈴木はもう眠りについたみたいで、寝言を言っていた。俺も早く寝ようと思って目を瞑り続けたが、やっぱり眠ることができなかった。一回トイレに行こうと思って、布団を出ると、二人から話しかけられた。
「お怜遠、一緒にやろうぜ」
「ごめん、俺はトイレに・・・・・・」
「やるぞ神里〜」
結局、二人のやっているゲームにつき合わされてしまった。この後、やめられなくなって、翌朝寝不足だったことは、いうまでもない。
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