#35 部屋が一緒の友人とは、一体感が生まれる

 結局、あの後会話を続けた俺たちは、すっかり話し込んでしまって気がつくと消灯時間を過ぎていた。


「なあ、今日くらい夜更かししようぜ」


「お前昨日も夜更かししてなかったか?」


 俺は真斗に茶々を入れて、彼の反応を見ていた。図星だったらしく、睨まれてしまった。


「なあ石井。夜更かししようぜ」

 

「ごめん。口がヒリヒリしてて無理だわ。寝るわ」


「あーあ。折角女子部屋に忍び込もうとしてたのに」


「え? 俺も行く行く」


 彼の変わり身の速さは凄まじかった。いくら好きなことでも、普通、痛みがあったら乗り気になれないからである。


「流石にやめときなよ。怒られるのが関の山だよ」


「うん」

 

 一輝と鈴木は流石である。普通のことかもしれないが、あの二人がアレなので、一般的には思えない。


「まあ俺は二人がどうしても行くというなら止めないけど、おすすめはしないよ」


 大体こういうのは見回りがいるので、基本バレてしまう。まだ、ホテルとかならベランダをつたって他の部屋に行くという手法があっただろうが、ただの宿泊施設なので、ベランダなんてものはない。


「別に少し夜更かしするくらいならボクも賛成だけどね」


「うん」


「折角の林間学校なのに、夜に女子部屋行かないなんて、ナンセンスだぜ?」


「その通り」


 どんだけ彼らは女の子が大好きなのだろうか。モテたいとか、彼女が欲しいというのは男子なら誰でも一回は思うことなのでわかるが、夜に女子部屋行くのは客観的に見てキモがられると思う。


 結局、俺らの説得は虚しく、二人は女子部屋に向かっていった。


「で、結局どうする?」


「僕はキャンプファイヤーがどうだったか知りたいな」


 結局、話すと言ったものの、タイミングが合わなくて今まで話せていなかった。鈴木がいるものの、別にいても構わないということだったので、俺は話し始めた。


「普通に、仲良い人と踊っている人もいたし、真斗みたいにその場しのぎみたいな感じで踊っている人もいたよ」


「怜遠はどうだったの?」


 まあ嘘は言わないで、しっかりと本当のことを言った方がいいだろう。


「俺はまあ、大田さんと踊ったよ」


「どうして大田さんと踊ったの?」


「ボクもそれ気になるかな」


 どうしよう。あのことを二人に話すべきだろうか。彼女に『このことは秘密』とは言われてないので、話しても大丈夫な気がする。一輝と鈴木なら、広められる心配もなさそうだし。


 そして俺は、彼女と踊ることになった経緯を説明した。二人とも興味深そうな表情をして俺の話を聞いてくれたので、話してよかった。


「なるほどね、理解したよ。まああの大田さんだもんね」


 鈴木の観点でも、大田さんを上に見ているらしい。まあ、クラスで一番可愛いと思われているっぽいし、当たり前と言えば当たり前である。でも、鈴木に関しても女子人気が群を抜いて高いのは確かである。眉目秀麗で優男。運動神経抜群の男子だ。女子が男子の話題でいつも最初に口にするのは基本彼のことである。


「彼女は、別に君に好意は抱いていない・・・・・・と」


「そりゃそうだろ。この俺だぞ?」


「怜遠って身長高くて顔もそこそこいいし、悪くないと思うけどな・・・・・・」


「そりゃどうも。一輝も可愛い顔してるからモテると思うけどな」


「可愛い顔って言わないで」


 そう言って一輝は拗ねてしまった。可愛い顔って言われるのはそんなに嫌なのだろうか。


「まあ・・・・・・。よかったよ」


「何がよかったんだ?」


「こっちの話だよ」


 最近、鈴木のこういう反応が増えているので、少し気がかりに思ったが、変に詮索するのはよくないので、気にしないことにした。


 それから、真斗たちから、『先生に見つかった』と俺らのグループにメッセージが送られてきた。気になったので現場に向かっていると、二人が正座をさせられていた。


「なあ三人とも助けてくれよ」

 

「ちょっと忍び込もうとしただけなのにー」


「反省が足りないようだから、あと三十分間正座な」


「ごめんなさいー」


 宮﨑先生は笑っているように見えたが、目が笑っていなかった。先生は生徒内から怒らせたら怖い先生ランキングでトップに君臨しているレベルなので、こうなるだろうなという感じであった。


「宮﨑先生自分からも謝ります。しっかり躾がなっていませんでしたね・・・・・・」


「おお神里か。しかも鈴木に森。お前らなら二人を調教できそうだな」


「調教って・・・・・・」


 なんかサドな人がよく多用しそうなフレーズだな。俺はどちらでもないと思う。自分じゃよく分からないけれど。


 俺はこっそり、先生に怒られている二人の写真を撮っておいた。


「面白いし、思い出になるだろ」


「あはは。そうだね」


「うん」


 ある意味一体感が生まれたと思う。 

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