#23 宿泊行事で食べたい物
起床時間を迎えた俺たちは、食堂に来ていた。食事を摂るのは、部屋班ではなくて、行動班なので、女子チームが到着するのを待っている。女子は、男子と違ってメイクなど、ヘアセットなど色々することがあるので遅くて当然である。俺はヘアセットは五分で終わるから、わからないが。真斗は俺以上に時間をかけていたのを覚えている。
着々と他の班の人たちが降りてきていたので、俺は大田さんに連絡をしてみた。するとすぐに既読がついて、『ごめんね、さっき準備終わって今降りている最中』と返信が来た。まあ大方莉果の準備に時間がかかったのだろうが。
少しすると、三人とも降りてきた。
「待たせてごめんね。部屋が荒れてたから少し片付けてたんだ」
「コンタクトつけるのに時間かかっちゃってごめんね・・・・・・」
「女子は時間がかかるものなの」
第一声でみんなの性格がわかるのが凄い。莉果に関しては謎の説得力がある。そして俺はこっちもさっき来たばかりと伝えておいた。
「早く食おーぜ。腹へった」
そう言って真斗は先にテーブルに向かってしまった。協調性がないのは今に始まった事ではないものの、もう少し気を遣って欲しいと思った。
メニューは白米、味噌汁、卵焼き、ソーセージ、ヨーグルトという素朴な感じの和食だった。自分はいつも朝ごはんはパンなので、全部食べ切れるか心配になってくる。朝はなぜか食欲が出ないのである。
「いただきます」
挨拶をして、箸を持って食べ進める。味はそこそこ美味しくて、いい感じに食べ進められそうだった。みんなも違和感なく食べ進めていたので、朝がパンなのは俺くらいかと思って聞いてみた。
「みんなって朝ごはんはパン? 白米?」
「日によるかな」
「私も」
大田さんと伊藤さんはパンの日と白米の日があるらしい。まあそれがある意味一番いいのかもしれない。
「絶対ご飯だろ、パンって腹持ち悪くね?」
と真斗は言っているが、彼は朝食を摂りかつ、学校でパンを食べている。体育会系とはいえ食べ過ぎな気がするが気にしないでおこう。
「僕はパンかな、野村さんは?」
「私もパン。すぐ食べれるし」
俺の仲間もいたようだ。確かに莉果と一緒に小学校に行っていた時、パン咥えながら出てきたのを覚えている。パン咥えながら登校とか、ラブコメ漫画のワンシーンかよ。今考えるとそう思えてくる。
食べながらみんなと話していると、真斗はもう食べ終えたようで、お代わりに向かっていた。流石に今日ハイキングすることを考えると、朝からそんなに食べるのは良くない気がする。
ふと前を見ると、大田さんと目が合ってしまった。昨日の夜の出来事が頭に浮かんで来たのですぐに目を逸らした。変な空気にならないようにするにはこうするしかない。まあ、誰も勘づいてなさそうなので俺は胸を撫で下ろした。
数分後、先生が今日のスケジュールを説明し始めた。正直昨日聞いたことと全く一緒なので、俺は聞く必要がない。とりあえず集合時間にさえ遅れなければいいだろう。
挨拶をして、部屋に戻ると、散らかっているのに気がついた。大方、真斗か石井が汚したのだろう。部屋が汚い状態というのは、正直嫌な気分になるので、俺は片付けをし始めた。一輝も俺の行動を見て、手伝ってきた。
そのおかげもあって、少しの時間で綺麗にすることができた。
「一輝助かった」
「みんなで使ってるわけだし、普通のことだよ」
彼は本当に性格がいい。体が優しさでできてると思うくらいに。俺は悲しきかな、一生を賭けてもこうはなれないだろう。
しばらくすると、食べ続けていた真斗と石井が帰ってきた。それと同時に、二人を待っていた鈴木も戻ってきた。ハイキングの前に食べすぎだと伝えておいたが、大丈夫と言って聞かなかったので、まあ体調悪くなっても自己責任だろう。
「おーい」
「ん? どうした?」
「ハイキング何時からだっけ?」
「クラス毎だから九時からだね」
混まないようにと回る順番はクラス毎になっており、一組の俺らは最初に回る。そして昼にはこっちに戻ってきて、昼食をとり、体育館でレクリエーションを行うらしい。逆に五組は先にレクリエーションを行ってから、ハイキングに向かうという。
レクリエーションは何をするんだろうか。体育館でできることと言ったら、バレー、バスケ、鬼ごっこ、ドッジボールあたりか。まあどれをすることになるかは多数決で決まるので、俺が何を言っても無駄だろう。
今の時刻は八時前、それまで何をして過ごそうか。携帯では見るものがないし、みんなと話すかゲームでもしようと思ったとき、真斗がみんなに話しかけた。
「なあ、みんな時間あるしついてきて」
そう言ったので俺らは腰を上げて外に出た。真斗についていくと、着いたのは、一階の売店だった。
そこでは、お菓子だったり、ちょっとした雑貨が売っていた。その中で真斗が指を指していたのは、カップ麺だった。
「これ食わね?」
さっきおかわりまでしたのにまだ入るのかよと思いながらも、こういうときに食べるカップ麺はもっと美味しく感じることを知っていたので、俺は何も言わなかった。
「お! いーじゃん田中。俺も食うぜ」
石井は乗り気のようで、すぐに一つ手に取ってレジに向かっていった。俺もここは一個食べようと思い、何にしようか悩んでいた。
「神里クンと森クンは何にするか決めた?」
「いや、まだ決めてない」
「僕もまだ」
「こういうのって悩んじゃうよね」
種類がそこそこあるので、すぐに『これにしよう』とはなかなか決められないものである。
悩んだ結果。オーソドックスなものに決め、購入した。
部屋に戻っている最中、前で真斗と石井がクラスの女子に話しかけていた。それを見た俺たちはこっそり会話を影で聞くことにした。
「ねえ二人とも、オレと石井ってどっちの方がカッコいいと思う?」
「正直な感想聞かせてくれー」
面倒くさい質問をされた女子たちは、少し悩むようなそぶりを見せてから、まず真斗に対して。
「うーんまあ田中君は顔は良くて運動出来て明るいけど、バカだからなあ」
「ウッ・・・・・・」
真斗に女子の強烈な言葉が突き刺さったようで狼狽えていた。まあ事実なのでぐうの音も出なかったのだろう。
「じゃあ俺は?」
「面白いけど、身長がね・・・・・・」
「アッ・・・・・・」
石井も何かが突き刺さったような顔をしていた。確かに彼は身長一六五くらいしかないけど、身長はまだ伸びる・・・・・・はず。
「二人とも友達としてならいいけど、それ以上は・・・・・・ね?」
「うん」
「あ、おけ・・・・・・」
結局この後二人を慰めることになり、部屋に戻った。
時間的にはまだ余裕があったので、すぐにお湯を沸かして準備する。
出来上がったので、カップ麺を食べながら、俺らは二人の愚痴を聞いていた。
「なんだよバカって。バカで悪かったなバカで」
「いいだろバカってだけ、俺は身長だぞ」
真斗は顔は普通にイケメンで運動もできて、明るい性格。確かにバカかもしれないが普通にモテる部類だろう。
石井だって顔はそこそこで面白いムードメーカー。身長は確かに低いものの、モテない部類ではない。
「まあまあ、人間は中身だから」
そんな悲観することではないと思ったので、俺は二人に慰めを入れた。
「そうだね」
「怜遠はともかく、鈴木が言っても嫌味にしかならねえよ」
「ほんとそれ」
「あはは・・・・・・」
そう言って俺たちはなんやかんや楽しく雑談をし続けた。
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