#21 星空鑑賞
肝試しが終わって施設に戻ってきた俺たちは、大浴場に来ていた。他の人たちは、もう大体入り終わっており、俺ら二人の独占状態だった。
「怜遠どうだ? オレの胸筋は」
真斗は普段から筋トレや運動をしていることもあってか、筋肉が結構ある。それに対して俺は・・・・・・。あまりない。筋トレを日課にしたものの、まだまだ時間がかかりそうだ。
「すごいな、俺も最近筋トレしてるけど、ここまでつけるのはきつそう」
そしたら真斗は俺にいい筋トレ方法を教えてくれた。林間学校が終わったら、実践していこうと思う。体を洗い終えて、湯船に浸かる。今日はなかなか疲れる一日であったので、早く休みたい気分だ。
部屋に戻ると、鈴木と石井が話しており、一輝は本を読んでいた。まあ一輝はあの二人とは仲がいいわけではないので仕方がないかもしれない。
「なんの本読んでるの?」
「推理小説だよ」
「どんな内容なの?」
「旅先で不可解な出来事が起こって、それを解決していくお話だよ」
「そうなんだ。今度読ませて」
やっぱ小説好きとは会話が弾むからいいな。ライトノベル以外の本も読むようになったからか、様々な言葉の意味もよくわかるようになってきたし。恋愛小説しか読まないが、たまには他のジャンルに触れてみようと思った。
「なあみんな〜ゲームやらね?」
「石井ゲーム持ってきたのか? ナイスだわ」
石井はゲームを鞄から取り出して、みんなに声をかけた。俺は暇だったので、ちょうどいいと思い賛成した。一輝だけはやったことないから最初は見てるだけでいいと断っていた。
このゲームは、キャラ同士を戦わせて生き残った人の勝利となるゲームだ。昔、友達とやりまくった覚えがある。俺からしたら、数十年前の出来事なので、懐かしさが込み上げてくる。そして、一輝を除いた四人で始めた。
まず、みんなのプレイスキルを確認する。やっぱり石井が持ってきたということもあって、相当手慣れていた。そして真斗もそこそこ上手かった。そういや、こいつは中学校の頃もいろいろなゲームをやっていた。上手くて当然だ。鈴木はまあ・・・・・・初心者という感じだった。真斗と石井がやり合ってるので、俺がそこに向かって遠距離攻撃を仕掛ける。姑息かもしれないが、真正面で戦っても勝ち目が薄いので仕方がない。気がついたら鈴木は自滅してるし・・・・・・。
「おい怜遠、かかってこいよ」
「神里狙おうぜ田中」
「おいチーミングやめろ」
俺は抵抗して真斗は倒したものの、最後に石井にトドメを刺された。チーミングは良くないと思う。絶対に。
「ごめんね、関根さんに呼ばれたからちょっと行ってくるね」
「鈴木の裏切り者! なあ田中」
「ああ! 抜け駆けするな〜」
俺は鈴木にこの二人はほっといておまえは行けと目配せしておいた。鈴木は俺に会釈をして、部屋を出て行った。因みに俺は別に羨ましいとか思ってない。こうやって友達と遊んでるのも楽しいし?
「じゃあ一輝、やってみたら?」
「森これがコントローラーね」
「ありがとう」
一輝に石井が優しく教えていたが、一輝は全く操作方法がわかっておらず、自滅ばっかりしていた。それを見ていて、俺は、前世であのようなことがなかったら、修学旅行はこんな感じで楽しめたのかなと身に染みて感じた。時計を見ると、室長会議の時間の十分前であったので、俺はみんなに一言行ってロビーに向かった。
階段の近くまでくると、一人の女の子に出会った。目があったので、俺は会釈をして、彼女が降りてくるのを待つ。
「神里くん、室長会議?」
「そうだよ。みんなに半ば強制的にやらされた」
「私もだよ。でも神里くんがいてよかった。話せるからね」
そう言って上目遣いをしてくる。お風呂あがりということもあって、色っぽさが増していた。すっぴんでこの可愛さは本当に反則級だと思う。
「ねえ、折角だしこのあと少し話そ?」
「いいよ、それならいい場所知ってるし」
「じゃあ場所は任せるね」
寝る前にクラスの美少女と話せるなんて俺の今までの人生で一番のビックイベントかもしれない。
ロビーに着くと、各部屋の班長が来ており、先生が明日の確認を行った。七時起きで、九時からハイキング、夕方にバーベキューで夜にキャンプファイヤーといった流れの確認と夜はうるさくするなと言われた。まあバレなければいいんだ。バレなければ。
そして解散になったので、俺は大田さんを連れて、四階まで上ってきた。この回は誰も泊まってないので、人に見つかる心配もない。それから、電気が付いていないので暗いので、スマホのライトで目的地まで向かう。
「暗いね・・・・・・神里くん、手握ってていい?」
側から見ると、これを期待してここまで連れてきたみたいに見えてしまう。かといって断れないので、首を縦に振る。
「でも、肝試しで一緒に回れなかったし、いいよねこのくらい」
これってもしかして・・・・・・。いや、そんなことはないだろう。自惚れはやめよう。
しばらく歩くと、目的地着いた。それは、この施設のテラスだ。そこからは、綺麗な星空が見える。実は昨日の夜、ここの施設の口コミに、星空が綺麗に見えると書いてあった。それを見て、どうせなら見たいと思って、ここに連れて来たのである。
「綺麗。神里くん、知ってたの?」
「まあね。ここで話したら気分も上がるかなって思って」
「確かにそうだね」
喜んでもらえたみたい。笑みを見せていた彼女だったが、少し経ったあと、真剣な表情を見せた。
「神里くん。林間学校、楽しい?」
『林間学校が楽しい』この質問の意図は、どういうことなのだろうか。俺は純粋な気持ちをぶつける。
「うん。班のみんないい人だし。もちろん大田さんもね」
「私も楽しいよ。多分、神里くんのお陰。あなたがいなかったら、ここまで楽しめてないと思うよ」
俺のおかげ? 俺は彼女に何かしてあげることができたのだろうか。
「俺にそんな価値はないよ、むしろ俺を楽しませてくれてありがとう」
そのまま、しばらく星を見て、談笑していた。そして俺は、この時間を心地よく思っていた。時間が止まって欲しい。そう思うほどに。
時間が十時半を過ぎたので、流石に部屋に戻った方がいいと思い、三階まで戻って、大田さんを部屋まで送り届けた。すぐに下の階に降りたので、他の人には二人でいたことはバレていないと思う。
部屋に戻ると、四人でゲームをやっていた。みんな元気だなと思いながら、俺は伝えられた内容を簡潔に話した。まともに聞いてるのは、一輝と鈴木のみだったが。スマホを見ると、大田さんからさっき撮ったツーショットが送られてきた。急に画面に表示されたので、みんなに見られてないか心配だったが、ゲームに夢中で誰も気づいていなかった。
「これは流石に、他の人には見せられないな」
俺はそっと呟いた。
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