#15 中間試験
今日はテストの当日、俺は一足早く学校について復習をしていた。教室に一番乗りで到着できるのは、優越感に浸った気分だった。
正直、今日は現代国語と古典と歴史なので、結構容易い。明日から理系科目が入ってくるので不安になってくる。ただ、今回は勉強をやると誓った以上、意思はまげたくなかった。だいたい復習を終えると、着々とクラスメイトたちも登校してきた。
「おい怜遠、お前のせいでオレはあの後三時間も残って勉強させられたんだぞ、責任取れよ」
「いやなんで俺のせいなんだよ。お前がもう少し勉強してればよかっただけだろ」
変な濡れ衣を着せられた俺は、すぐに言い返したが、真斗は不服そうな顔をしていた。よほど、一輝にスパルタ教育させられたのだろうか。
その後、真斗が一輝について愚痴っているところを本人に聞かれ、廊下に連れ出されていた。その後のことは・・・・・・考えないでおこう。
「神里くんおはよう。テストの意気込みはどう?」
「おはよう大田さん。まあ今日は文系科目だしどうにかなると思う。問題は明日の数学と化学だね」
「私もその二つは不安かな」
理系には俺は絶対進めない。というか進みたくない。毎日数学と葛藤しなければいけないなんて俺には耐えられる気がしないのだ。
「やばいよ結菜〜、古文無理〜」
莉果は相当焦っているようだ。それもそのはず、テストで赤点を取ったら、小遣いを減らされてしまうらしい。この年頃の学生にとって、小遣いが減らされてしまうのは誰であっても痛いだろう。俺が同じ立場であっても同様だ。ファッションにお金お掛けられなくなるのは痛い。正直前まで使っていた漫画やアニメグッズにはお金をかけるつもりはない。見たことある漫画をまた買おうとは思わないし、グッズも自分の中ではもう熱が冷めてしまっているからだ。
「今から単語と用言だけでもやっておいた方がいいよ、この二つだけでも取れれば四割は行く」
「そうなのね、ありがと怜遠」
そう言って莉果は机で古文の教科書をじっくり読み始めた。見た感じ本気のようだ。
それから俺は大田さんと重要事項の確認をしあっていた。やはり大田さんは、俺の出した問題を難なく答えていた。ちょっとした悪戯心で範囲外の問題を出してみると、答えが分からず悩んでいた。そして俺が答えを教えると、すぐに範囲外だと気付いたみたいで、少し拗ねていた。
「私、しっかり範囲はやってるんだからね・・・・・・」
「ごめんって、次から気をつけるよ」
しっかり謝ると、彼女は顔を上げてくれた。俺はこういうことはあまりしないようにしようと心の中で誓った。
そしてホームルームが終わると、すぐに定期試験が始まった。最初は現代国語だ。昔から読書が趣味だったのもあって、国語は得意である。問題がどんどん先へ進んでいく。漢字の問題に『翻す』の読みが出た。真斗は果たして解けたのだろうか・・・・・・。えっと、『主人公はなぜ少女を助けたのか二五字以内で答えよ』か。『自分を助けてくれた恩返しをしたかったから』これだな。多分九割は硬いな。
古典も好きな方の教科だったので、難なく問題に取り組むことができた。周りからペンを動かしている音が聞こえてくる。やっぱり係り結び出てきたな。古文単語も用言も。古文に関しても九割はいけそうだ。
歴史は国語ほど得意ではないので、七割いければいいと思っていたが、そこそこ取れた。そして答えに『新人』が出てくる問題が出てきた。さっきから山が当たりすぎて怖いくらいである。
そして終わりの合図が放たれた。終わりと同時に俺は無気力になった。
「神里くんどうだった?」
「まあまあ取れた気がするよ。大田さんは?」
「私もそこそこかな、まだ一日終わっただけだから気は抜けないけどね」
彼女の目はもう既に明日を見据えていた。俺も頑張らないとと思った。
「なあ『翻す』って漢字出たよな?」
「オレ読めたぞ、すごくね? 後新人もかけた」
真斗は教えたところはできているようだ。少し安堵した。
「用言と古文単語のおかげで赤点は免れたわ、ありがと」
莉果も今の所お小遣いを減らされなくて済んでいるようだ。教えた甲斐があったとしみじみ感じた。
そして全科目テストが終了した。英語はそこそこ取れたと自分でも思う。数学や化学も平均くらいは取れたと思うので極端に悪い点数ということはないだろう。
なお真斗も莉果も二日目で顔が死んでいた。理系科目はあの勉強会でそこまで仕上げられなかったことが敗因だろう。
「まあ三十位以内に入れるかどうかだな」
「神里くんお疲れ様。私は十位以内に入れればいいなー」
そういって伸びをした彼女だが、おそらく首席であろう。家でものすごく努力をしているのだから、とても立派である。
俺はその後今日何をするか考えていると、莉果がお小遣いのことで嘆いているのが聞こえてきた。やっぱり理系科目がやばかったらしい。
「なあ怜遠、今日一輝とオレと三人でカラオケ行かない?」
それは思いがけないお誘いだった。
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