#14 テスト勉強 後編
店で勉強している最中、俺は彼女が放った一言が前世で聞いた言葉と似ていたので、じっくり考えていた。正直俺の考えすぎに過ぎないかもしれない。しかし、表情があの時の彼女にそっくりだったのだ。
気がかりなことはあるものの、テスト勉強をしないといけないという焦りが生じてきて、俺は教科書に向き合った。教科はもちろん国語だ。古文文法の用言の練習問題を解きながら、大田さんの方に目を向けると、英語の問題を解いていた。しかも応用問題であった。英語は正直あまり得意ではない。数学や化学などに比べたらまだできるものの、前世でサボり過ぎて英文法が全く仕上がっていないのである。
単語はそこそこ固めたものの、文法ができていないとあまり意味がない。
「大田さん、英語どう?」
「まあ英語はいけそうかな。神里くんはどう?」
「俺はまあ・・・・・・。ぼちぼちかな」
まあテスト範囲自体はそこそこ仕上がったので点数自体は悪くならない気がする。問題は、これが短期記憶になって、模試で活かせなくなるかもしれないということくらいだ。
「正直数学が一番不安なんだよな、俺文系だし」
「私も理系あまり得意じゃないから分かるよ」
こう言っているものの俺と彼女の苦手の度合いは違う。俺の苦手は平均点行くか行かないかなのに対して、彼女の場合は七十点くらいである。
俺たちがテストについて話していると、近くの席にギャルっぽい女の子二人組がきた。そしてこちらを見ながらこそこそ話していた。
「カップルで勉強とかいいなー。うちもしてみたい」
「女子校だから仕方ないよ。大学行くまでは我慢だね」
どうやら俺と大田さんがカップルだと間違われているようだった。このような可愛い子が自分の彼女だったらな。という願望に嫌気が差す。大田さんの方をふと見てみると顔を赤くしていた。その顔もとても可憐だった。
しばらく二人で勉強を続けていると、遊びに行っていた三人が戻ってきた。真斗が紙袋を持っていたので、何か買ったのかと思っていたが、中身は女性ものの服だった。おそらく莉果が買った服を持っていたのだろう。
「田中って私服見て思ったけど、服のセンスいいのね」
「一応服装には気を使っていますから」
「僕なんてユニシロでしか買ったことないのに・・・・・・」
ユニシロも俺的には悪くはないと思う。だから気にしなくていいよと伝えておいた。
「怜遠はその服、サラ?」
「正解、やっぱここの服いいんだよね」
サラは俺が一番好きなブランドである。大人になってからもずっとこればかりを好んできていた。
「てか、もう五時近いし、解散でいいんじゃね?」
「真斗はもうテスト勉強しなくて大丈夫なの?」
「うん。多分平気」
これは絶対平気なやつではない。俺の勘がそう言った。
「じゃあ猿人、原人、旧人ともう一つは?」
「えっと・・・・・・。ゴリラ人」
このテーブルが一気に笑い声に包まれた。誰しもが、この回答が出てくると思っていなかったからである。
「これは赤点確定じゃない?」
「うっせ、まだ明日明後日あるからなんとかなる」
これはよくあるやらない時のテンプレであろう。
「てかなんでゴリラ人なんだよ、しかも旧人からゴリラ人って退化してるし」
「猿人って猿のことだろ? ならゴリラがいてもおかしくなくない?」
「・・・・・・僕がせっかく教えてあげたのに、何も聞いてなかったんだね」
一輝は顔は笑っているように見えるものの、目は笑ってはいなかった。そのまま一輝は、真斗をマンツーマンで教えるからと言って、解散になった。最後まで真斗は俺に助けを求めていたが、一輝に教われば効果抜群だと思ったので、何もしなかった。
『レオン〜。助けてくれよ〜』
この言葉が俺の耳にしばらく残っていた。
帰りの電車は三人とも勉強の疲れで終始無言だった。
「じゃあ二人ともバイバイ」
大田さんが手を振ってきたので、俺も振り返す。莉果もまた、手を振っていた。
大田さんが降りた後、俺と莉果は無言のままだった。そこで俺は、彼女に抱いていた疑問を投げかけてみようと思った。
「なあ莉果」
「何よ?」
「いや、そういえば二人で話すのは久々だなって思ってさ」
「まあそうね。小学校の時ぶりだしね。でも中学校ではどうだったの?」
「中一の時はあれだったけど、こっちに戻ってきてからはあの二人のおかげで楽しい学校生活を送れたよ」
「そう・・・・・・。別にあんたのことが心配だったとかじゃないから」
「別にそんなこと何も言ってないんだが・・・・・・」
莉果のツンデレに対して俺は苦笑いをする。昔と変わってないと思い懐かしい気持ちがした。
「まあ、これからも仲良くしてよ」
「まあ、あんたがそこまでいうなら仲良くしてあげる」
そして俺は、幼馴染との二回目の再会を果たした。
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