#4前回の失敗

 それから俺はすることがなかったので、懐かしい漫画を読んだり、ゲームをしたりしていた。大人になってからは全くこういう娯楽をする気も余裕もなかったので、あの地獄のような環境から解放されて、なんだか嬉しい気持ちになってくる。


 それからはネットサーフィンをして色いろな記事を見ていたが、一つの記事が目に留まった。『自分に原因のないいじめによっての不登校者数』と書かれていた。それによって一つのトラウマが脳裏に浮かんだ。

 あれは前回の高一の秋のことだった。

 

 *


 この学校は、実行委員にも重きを置いていて、文化祭、体育祭、風紀委員などがあった。


 俺は勿論こういうものには興味を持っていなかった。


 しかしこれに興味を持った生徒がいた。一輝だ。


 彼は内気でおとなしい性格を克服しようと考えたらしい。そして風紀委員会に入って、学校の風紀を乱さないように活動し始めた。


 最初こそは彼は楽しそうに見えたが、それは表面だけだった。


 裏で、いじめに遭っていたのだ。俺は彼がいじめられていることなんて一切知らなかった。俺が何も気にせずバカやってたのもあるが、彼自身で隠していたからだろう。


 ある日、休み時間にトイレに行こうとしたら、空き教室から声が聞こえてきた。何話してるのか気になって聞き耳を立ててみると、信じられない言葉が耳に入った。


「おいお前、いっつもうるさく言ってきてよ! メーワクなんだよ。わかるか?」


「そうだよ、調子乗んなよ? あ?」


「なんか言えよ、おい」


 そこには問題児で有名の二年生、坂本とその取り巻きが一輝を取り囲んでいじめていた。一輝は何も言わずに黙り込んでいた。


「なんも言わないぜコイツ」


「お前は所詮一人じゃ何もできない犬なんだよ!!」


 罵詈雑言浴びせられても一輝は下を向いたまま、俯いてるだけだった。一瞬見えた顔からは一筋の涙が光っていた。俺はなんとかしようと考えたが、面倒ごとに介入したくないという気持ちが勝ってしまう……。それから静かにその場を立ち去ってしまった。結局この判断をしてしまったことが、彼の人生を狂わせてしまうことになる。


 その後も、『何かあったの? 相談のるよ』と声かけても、『何もないよ、大丈夫』とはぐらかされしまい、力になることができなかった。そしてそのまま不登校になって、二年生に上がると同時に除籍してしまった。その後は消息不明だった。


 それから友人を失った俺と真斗の間にもいざこざがあって友人関係に亀裂が入り、絡まなくなってしまった。

 

* 


 この悲劇を繰り返さないために、何が必要か。ふと考えてみた。そして分かった。一番必要なものが勇気だと。

それがこの問題の分岐点となるだろう。勇気をつけるためにはメンタルを鍛えるため、いろいろなことに挑戦していこう。そして、一輝に危害を加える輩から守るために、今日から筋トレを始めることにした。


 「待ってろよ一輝、絶対救う。そしてみんなで幸せになろう」

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