#3 友情と兄妹
そのまま駅前のファミレスに入った俺たち三人。前回は、欲しいゲームがあって貯金していたので断っていた覚えがある。そして俺はハンバーグを注文、真斗はピザ、一輝はパスタを注文した。
「なあ二人ともよ……」
「なに?」
真斗が真剣そうな眼差しで俺らを見つめてくる。
「オレをこの学校に受かるくらいにまで偏差値を上げてくれてありがどう」
「別にいいよ」
「うん。困っているときはお互い様、でしょ?」
やっぱり真斗はこうやって感謝を伝えることができるいい奴だ。
「そのおかげで可愛い女子がたくさん!」
前言撤回、全然いい奴じゃない。
「大田さんは清楚系って感じするし、野村さんはツンデレって感じがする。あと関根さんはいかにもギャルだったな。そして彼女と仲の良さそうだった柴田さんは癒し系ってところかな?」
俺らは、何を聞かせられてるのか……。女子についての話は嫌いじゃない。ただ、そこまで今は興味ない。女性を外見だけで評価したくないのもある。
「まあまあ、ところで教科書とか見てみた?」
ここで話題を変えるのが無難だろう。真斗は不服そうな顔をしているが。
「見るわけないだろ。名前すら書いてないわ」
「やっぱりレベルの高い高校が使用する教科書ってだけはあるね」
「まあだからレベルの高い学校に入学したからには最低でも赤点を取らないように......」
「ああもういいいい、テスト近いわけじゃないんだし」
俺の忠告を真斗は避ける。よほど勉強に対しての話が嫌だったのだろう。自分も勉強嫌いだからわかるけど。
「てかさ、お前らは部活入る?」
「興味ないかな」
「やりたいことないし……」
「おいおい、お前らマジかよ。オレは運動部のどれかに入るつもり。」
少し仕掛けてみるか。
「じゃあ野球部は? お前運動部入るなら続ければいいじゃん」
「坊主だから嫌だ」
どんだけ髪に命かけてるのだろうか。まあ確かにモテたいなら坊主にするのは抵抗があるだろうな。
「そんなこと言うならお前らも野球続けろよ」
「俺はいいよセンスないし」
「僕もかな」
三人とも中学では野球部に所属をしていた。部活自体は部員数も少なく、弱くて勝つことより楽しむことが目標だったが、最後の大会で真斗の活躍もあり、全国まであとちょっとと言うところまで行くことができた。だから野球部に入部すれば結構輝けるだろう。
「まあぼちぼち考えてみるわ。どこに入るか」
「それがいいと思うぞ」
それからみんな食べ終えて、会計をして店を出た。帰り道は最近やってるゲームやアニメについて話した。昔見てたのもあったので懐かしい気持ちになった。
家に着いたが、当たり前だがまだ誰も家に帰っていなかった。
そのまま家でゴロゴロしていると、柚が帰ってきた。今日は四時間授業だったらしい。
「お兄ちゃん入学式どうだった? 私も行きたかったな……」
「ああなんか懐かしい気持ちになったよ」
「中学の時の入学式を思い出して?」
「そうそう」
転生してることがバレるような言い方をしてしまった。気をつけないといけないな。
「そういえば、田中さんと森さんも同じ学校なんでしょ?」
「そうだよ。二人に会いたいのか?」
「まあ会いたいのもそうだけど、よかったねお兄ちゃん。二人が同じ高校にいてくれて」
「なんで?」
「だってお兄ちゃん中学校で仲の良い友達二人以外にいた? 小学校ではいたかもしれないけど」
「中一の一年間だけ広島に引っ越したからしょうがないだろ。そのせいで同じ小学校の奴らには中学受験した扱いになってんだし」
「また戻ってきたじゃん」
「でも小学校同じ奴らとは学区違うし」
俺は中学校一年の一年間だけ父親の転勤で広島に住んでいた。その影響で、こっちに戻ってきた時は苦労した。転校生って来る側だと楽しみかもしれないが、行く側はとても大変なんだなと身に沁みた。
「まあお兄ちゃんは優しいから、周りに人集まってくると思うよ」
「お世辞どうも」
「お世辞じゃないよ本当!」
まあ柚は可愛いし、男子からも女子からも人気ありそうだからな。かと言って彼氏出来たとか言ったら平常心ではいられなそうだけど……。
そして俺は今回、社交的になるって決めたからな。できるだけ交流関係は広げたい。
「ありがとう。柚もあと二年で高校受験だぞ。頑張れ」
「ありがとう! じゃあ私は昼ごはん作って食べるね」
そういって部屋から出ていった
こんな良い子を連絡絶って無視していたと思うと、胸が痛くなってくる。今回こそは失敗しないと再び心に誓った。
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