レベル上げの方法、教えます。

上井野 実加

怪しいサイト


「また負けた…どうやったら倒せるんだよ…」


 「僕」

 勉強も生活も順調。学力も問題なし。不満と言えば、今この瞬間、ゲームの裏ボスが倒せないことぐらいである。


「このステージちょっと難しすぎないか…?

 …ちっ、なんかめんどくさくなってきた…」


 新品のゲーミングPCを閉じようとしたその時、ゲーム画面の下の方に

『今なら10連ガチャが500円』

 という広告が出てきた。普通の10連ガチャが900円だから、400円得だ。最初こそ無視したが、

「400円か…裏ボス倒すためにもやってみるか。」

 広告をクリックしたその時、ゲーミングPCは不気味なサイトに飛んだ。そこには


『レベル上げの方法、教えます。』


 と書いてあった。

「そんなことより早く10連ガチャ引かせてくれよ…!」

 そう少し怒りながらサイトを閉じた。


      ・・・


 それからというもの、あのタブに書いてあった内容がどうしても引っかかる。

「『レベル上げの方法、教えます。』って、どういう意味なんだ?」


 しばらくモヤモヤが残ったが、結局10連ガチャを引いた。最大の⭐︎5を狙っていたが、結局⭐︎3までしか出なかった。

「これ全部俺が持ってるキャラと変わらんし…無駄金使ったわ…。」


 そんな時、あのサイトが気になってきた。

「レベル上げ、か…。ちっ、なんのレベル上げなんだよ!」

 少し笑いながら、少しもやっとしながら言った。

 しばらく黙った後、やっぱりあのサイトが気になって、開いてみることにした。


      ・・・


『「レベル上げの方法、教えます。」

  このサイトは、あなたの人生レベルを上げるためのサイトです。

  人生レベルが表す数値が大きければ大きいほど、良い人生を送ることができます。

 

「しかし、失敗すると代償は大きいものとなります」』


「なんか難しいこと言ってるけどさ…。聞いてもよくわかんないわ。」

と笑いながら言った。

「でも…ちょっと気になるな…。」

彼は『レベルを上げる』のボタンを押したくてたまらなかった。でも『危ないボタンではないのか?』という気持ちもあった。


彼は、『レベルを上げる』のボタンを押した。


      ・・・


 「僕」

彼は結局あのボタンを押してしまった。人生なんて、レベルで決まるものではない。誰しもがそう思うだろうが、彼は「人生を楽したい」「成功者になりたい」という気持ちがあったのだろう。ならば、自分で努力することを考えなければならないのだが…


「レベルって、どうやって上げるんだ?」

そんな時、あのサイトから通知が来た。


『レベル上げの方法、教えます。

 1.あなたが人生の失敗者なら、自分と人生レベルを取り替えたい人を1人選んで ください

 2.あなたが人生の成功者なら、この世の中に足りないものを1つ思い浮かべてください』


「そんなんでレベルなんて上がるのか?」

最初こそ半信半疑で疑問があったが、興味本位で試すことにした。



一番嫌いなのは、後ろの席のぶりっこ。

あいつ、自分がこのクラスで1番可愛いやつだって思ってるんだよな。

いつも「お前なわけないだろ」って思ってるけど、あいつすぐ泣くんだよな。

「私いじめられるのー。助けて。」って隣の席のイケメンにすぐに寄りかかって…

あのイケメンも困った顔してるよ本当に。



「あのぶりっこと人生レベルを取り替えたい。あいつ地味に金も持ってて、親友だってたくさんいるんだ。あんなやつなのに。それに対して俺は金もないし友達だって多くない。あんなやつの友達が可哀想だな…。


そうして

『実行する』

のボタンを押した。


      ・・・


 「僕」

『人生レベル』によって彼の人生は激変します。それは、『成功』と『失敗』という意味で…

ゲームのレベル上げのようだと思っていた彼は、だんだんとそのサイトの異変に気づいていく…


咄嗟に財布の中身を見た。さっきまで5000円ほど入っていなかった金は12000円になっていた。

「おっしゃ!これで金持ちだ。だけど、どうやって財布の中身が変わったんだ?」

サイトページを見てみると、

『あなたの人生レベルが上がるほど、人生は良い方向へ進んでいきます。しかし、一歩道を間違えると、その代償は大きなものとなり、一生抱えて生きて行かなければなりません。』

下の方に行くと『人生レベル:Lv2』

と書いてあった。


「なるほど、どんどんレベルが上がっていくのか…」


      ・・・


しばらくサイトを使い続けて、異変を感じつつあった。

「このサイト、人生レベルを交換って書いてるけど、どうやって交換するんだ?そもそも、人生レベルってなんなんだ?」

人生レベルは『Lv6』を示している。

「まあ、またレベル上げしてみるか。またいいこと起きるんだろ?」


だがしかし、そのサイトから通知が来ることがなくなった。

「おい!レベル上げできなくなってるぞ?なんで方法が届かないんだ!」


 「僕」

サイトの異変に気づいた彼は、通知が来なくなったことに怒りを感じた。

それは良いとも言え、悪いとも言える。彼にとっては悪いのかも知れないが、この先現実で起きることを考えれば…

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レベル上げの方法、教えます。 上井野 実加 @kazetarian

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