たいしょほう

たいしょほう

 まだ電気もない頃の話だそうだ。

 今となってはもう名前も理由もわからない。

 男が山の中を歩いていたそうだ。

 木こりだったのかもしれないし、行商人だったのかもしれない。

 今はもうそれもわからない。


 ただ男にとっては歩きなれた山道だったそうな。

 毎日歩くような、そんな歩き慣れた山道だったそうだ。

 夕方で木々の間を夕日の光が差し込むような時間。

 暗くなる前に、と男は帰り道を急ぐが、どういうわけか山道を抜けれない。

 歩けど歩けど、同じような景色が続く。

 見慣れた山道が続く。

 特徴的な大木も見覚えがあるし、山道を半ば邪魔するような大きな岩も見覚えがある。

 間違いなくいつもの山道だ。

 けど、その山道が終わらない。

 同じ景色が続くわけでもない。

 ただ見覚えのある山道が続いている。


 男はすぐに狸か狐の仕業と気づいたそうだ。


 男はまず眉毛に唾をつけて、それで注意深く歩いてみる。

 なんでも眉毛に唾を塗ることで化かしている物の正体がわかるのだとか。

 それでも山道は続く。

 見覚えのある山道が続いている。


 ついには日が暮れ始めてしまう。


 男はこれでは急いでも仕方がない、と、完全に日が暮れてしまう前に近くの岩に腰を掛けキセルを出し、今度は煙草を吸い始める。

 煙草を吸うのもこのように化かされたときの対処法なのだとか。


 男が一服しているうちに日は落ちてしまったが、これで平気だろう、と煙を吐きながら歩きだす。

 

 しばらく歩くがやはり山道を抜けることはできない。

 煙草を吸い始めてから歩いた時間だけでも、普段ならもうとっくに抜け出せている時間のはずなのだが、男は山道から抜け出せなかった。


 男はこれは質の悪いもんにつかまっちまったと、困り果てる。


 長い時間歩かされた男は、ついに小便を催してしまう。

 男は仕方なく近くの木に向かいようを足す。


 用を足し終わり、一息つくとそこはもう山道の出口だった。

 

 こんなこともあるもんだ、と男の化かされたときの対処法に新しく小便をするが追加されたそうな。

 

 この話が本当かどうかはらかない。

 もし、やるときは自己責任でお願いします。


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