第40話 1度あることは2度もある

 3人が正気をやっと取り戻したので3層目に向かう。……と行きたいところだけど、


「階段……2つあるね」


 と、ライが私の横でボソッと言った。そうなんだよなぁ……これどっちに進んだらいいのかな? んー……右の方がいいのかな? いや待って、もしかしたら左なのかもしれない。

 ここで私のとある物が発動してしまう。……優柔不断だ。もうこうなったらライに決めてもらおう! そっちの方が早い!


「ライどっちに……」


「右ー!」


 いや即決ー! もうちょっと悩むそぶりを見せようよ! 脳死で決めたか疑うほどだわ!?

 ライが決めた右方向の階段を下りる。すると突き当りの通路に出た。右と左の通路の先を見ると、最深部の扉ほどでもないけどそこそこ大きくて銀色の縁取りがある扉があった。これは多分中ボスかな? っていうか中ボスっていたんだ……。

 さて、右か左か……さっき右だったから左でいいよね

 私も少し考えながら左の扉を開ける。


 ギィィィィィー……


 そこには一匹だけモンスターが待ち構えていた。サラッとした青い毛。背の高さが五十㎝くらいの小さいウサギのような姿で頭に角が生えているモンスターだった。どんなモンスターかライが説明を入れる。


「アルミラージ。このモンスターが幻覚を使ってくるんだよ」


 なんか見たことある気がするけど気のせいか。

 ルーちゃんの方を向くと、姿勢を低くして「ヴヴヴヴヴヴヴヴ……」と唸る。完全にロックオンしていた。ちなみにこの「ヴヴヴヴヴヴヴヴ……」は、「ニャンボルギーニ」と呼ばれてたりするらしい 今回はルーちゃん達の狩りだから観戦かな? 一応コーギー達にもフォローをお願いしとこう。


「みんなー。ルーちゃんのフォローお願いねー」


「ワン!」「ワン!」「ワン!」


「ワン!」「ワン!」「ワン!」


「ワン!」「ワン!」「ワン!」「ワン!」「ワン!」「ワン!」


「ワン!」「ワン!」「ワン!」


「ワン!」「ワン!」「ワン!」


 コーギー達が固まってアルミナージの周りをぐるぐる走り、周りを見えなくする。その間にルーちゃんは背後に周り……


「ウニャァァ!!!」


 アルミナージのお尻を引っかき、背中にかぶりつく。グサッと鋭い牙がアルミナージの背中に深く突き刺ささり、ルーちゃんが引っかいた近くが鮮やかな赤色に染まる。アルミナージが痛みでルーちゃんに引っかかれたことに気づき、急いで蹴り飛ばそうとするが、ルーちゃんはサッと風のように回避。そこにモンブランが突撃したと思ったらアルミナージをくわえてブンブン振り回す。

 大丈夫? 角当たったりしない?

 私の想像通り、モンブランのおでこに角が直撃した。モンブランは慌ててアルミナージを遠くに放り投げて私の方に来た。おでこが少し赤く染まっている。「付与・治癒再生」かけてあげるか。


「ヒィィン……」


 おでこを治してもう大丈夫だよと伝える。するとアルミナージに突撃していった。そして何をするかと思えば、くわえてぶんぶん振り回す。またおでこに角がぶつかりアルミナージをぶん投げるの再放送。ゑ? なにをしてんの? なにを???

 モンブランがヒィンヒィン言いながら私の元へ戻ってくる。少し学習しようね……???


 私がモンブランの傷を治している間にもルーちゃんはアルミナージを攻撃し続けている。それを見守っていると、突然、アルミナージの角が輝き始めた。

 って? まさかだとは思うけどこれ、幻覚攻撃なんじゃない? 私は八尺瓊勾玉やさかにのまがたまを付けているから大丈夫だけど……。これ絶対光を見ちゃいけないパターンじゃん!


 私は焦ってモンブランの目を手で覆い隠した。だがそうしている間にルーちゃんは思いっきりアルミナージの光を見てしまった……。そしてライを除く部員の人たちもその光を見てしまう。コーギー達は大丈夫か気になってみると、他のコーギーの後ろをピタっとくっついたままぐるぐる回ってた。一応大丈夫なのかな? ……んー……まあ大丈夫でしょう! ってかこれもしかしてあの時ダンジョンに入る前立ててしまったフラグ回収?

 私の考えは大当たり。ライはそそくさと部屋の端っこに行った。あ、これ私やばいじゃん。絶対味方にやられるって!


「おい! こっちにアルミナージが来たぞ! 武器をとれ!」


 ファイターがそう叫びながら私がいる方向に向かってくる。これ絶対私がアルミナージに見えているパターンじゃん!


「ウニャァァ!!!」


 私が迫ってくるファイターにあたふたしていると、幻覚の光をまともに見てしまったルーちゃんがコーギーのチョコに走っていき引っかこうとしていた。まずい! 今から間に合うか!? ……いや、「間に合わせるんだ」


 私は瞬時にスキル自分だけの時間ジャストミータイムを念じてタイマーを出現させる。そしてすぐにタイマーのスタートボタンを押して発動させる。そしてこの間にルーちゃんとチョコを離れさせてアルミナージに怒りの刃! 返り血が飛ぼうとするが、今は時間が止まっているので飛び出た瞬間その場ででとどまる。ほかになんか危険があるかもしれないので周囲を確認。安全よし! ここで少し離れてタイマーストップ!


 ピ!!!


「……? ……!!!」


 アルミラージの鮮血があたりに飛び散り、みんなが幻覚を見失う。


「あれ? アルミナージがいない? ってこっちだったかー……」


「ニャウン?」

 

 一旦どたばた騒ぎ? が落ち着いたので一旦コーギー達の数を数える。コーギー達の数は……17!? うっそ! 先行っちゃったのかな? いや、さっき時止め中に周りを見たけどここにしかコーギーはいなかった。……ってことは……まだ冒険者学校にいるかも!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る