第33話 夢と幻想とメッセージ(なお解読できない模様)
「みんな優しい人。僕がポイズンドールだとわかっても逆に襲ってこなかった。あとかわいいって言ってもらえた!」
お人形が空中にふわふわ浮かび、くるくる回りながら私に言う。もう銭湯を閉めているので、ここにはマギライアとテイムしたモンスター軍団と私だけいる。
「誰かにテイムされているモンスターを倒そうとすると普通に犯罪だからね。あとここの常連さんは温泉で体を洗った時に心も洗ったんじゃないかって疑うくらい優しいからだなー」
今の時間帯は午後の11時。お風呂は既に炭酸泉で終わらせているので、あとは寝るだけ。
お人形用のベッドを作る間に、名前を決めようとなった。
「うーん……どんな名前にしよう……」
私が考えている間に、いつの間にか隣にいたマギライアが名前の案を出す。
「ロールでいい?」
「あっさり決めるんだね……僕はそれでいいけど」
いつもあっさり決まるんだよなーあとはあの伝説二匹組の名前だけど……そのままでいいや。私の寿命終わって周りの人から呼ばれているときに本当の名前じゃないっていうのは少しつらいと思うから。
……いや、マギライアがいるか?
ふわふわの布団とベッドの間に体を入れて、そのまま睡魔に身をゆだね眠r……
ドタバタ……
複数の足音が聞こえたかと思ったら、いつものコーギー軍団が私にベッドに押し寄せる。……これがいつものちょっとした悩み。約10匹がおしくらまんじゅうして私の上に乗っかったりするから寝ている最中「重い」って思いながら寝ているんだわ……。残りのコーギーはマギライアの方に行っているからちょっとはましだけど。
ゆっくりとした波のように押し寄せてくる眠気に身を任せて夢の中へと落ちる。そういえばちょっとした雑学だけど、人間が100日間ずっと寝ていたら普通に臓器とかが弱くなって死ぬらしい。そこまで寝る人いるとは思わないけど! というかそこまで寝るな(植物状態などを除く)
夜の海に色とりどりのランタンを浮かばせたような空。手を伸ばしたら優しい光を発している星に手が届きそうな高さだ。すさまじい強風の音が私の耳をかすめてほかの音をふさぐ。
ふわふわとした意識が覚めると、私がナニカにまたがって空を飛んでいるのに気づく。その何かを観察すると、小さいころによく見つけた雲の形に似ていた。私が今またがっているナニカは姿を確認すると一発でわかった。分かりやすすぎる!
体は蛇のように伸びていて、足は四本。体の色は雲のキャンパスに薄く青色の絵の具をこぼしたようなきれいな水色。鱗は湖の波のように正しく整列されていて、「体に傷を付けまい」というかのようにとても固い。顔はキツネのようにシュッとしていて、頭には小っちゃく丸いライオンに似た耳が生えている。その近くには角が生えていてそれを真っ白でふわふわした毛が多い隠そうと周りに生えているが、風圧に倒されていた。 そして口の少し上側では猫のようなひげが不思議な力でなびいている。もしかしなくてもわかる。これは龍だ。そうに違いない! でも何の龍なんだろう?
などと考えていると、オカリナのような柔らかい声が途切れ途切れだが念話で話しかけてくる。
『まんげ……時間……ずねま……』
……ええー? これ意味が分からな過ぎてなぞなぞか疑うレベルで途切れてる……。
私が念話の内容で困惑していると竜が雲の中へと入っていく。視界が雲という白い霧で覆われたところで、風の音も聞こえなくなった。そしてそのまま視界はブラックアウトしていった。ちょっとー! もうちょっと時間くださーい! わからないだろうがー!!! 私謎解き苦手なんだよ!!!
「由衣ちゃーん! 朝ー!」
「んーおはよう……」
マギライアの大きな声で起こされる。ああーもうちょっと寝てたかったー!!!
そんな考えを持ちながらしっかり起きて身支度をすます。冒険者ギルドに行って人を雇わないとね!
コーギー達のご飯を素早くさらに入れてあげる。みんなに待てをかけると、フェンリルが不満げな顔になる。……そんなさぁ、不満げな顔にならなくっても……。フェニックスはどれをやったらいいのかわからないのでとりあえずググる。……出てくるわけないと思うけど、とりあえずググる先生に聞けば何とかなる……はず
『フェニックスは雑食で、基本何を与えても大丈夫ですただ、はちみつはお控えください』
どこにあるんだよそんな情報! これどう考えても普通のGoogIeじゃない気がするんだけどー。もしかして、マギライアが魔改造した???
「よし!」
がつがつがつがつ……
ロールが近くで様子を眺めている間に私とマギライアは野菜炒めを食べる。私達は最近こればっかり食べてるけど、これが一番おいしいと思うし何より栄養を取りやすいから!
しっかりみんな食べ終わったので急いで皿を片付ける他愛のない会話とかをするより、目の前にある美味しいものをがっつくのに口が使われる今日この頃……。そして銭湯を開く時間は午後からなので、その前に人を雇うようにしておかないとね!
25分後……
着いたー。なんだかんだで遠い……。私は受付近くに小走りで行きながらすこし大きめな声で聞く。
「すみませーん! 人を雇うのってどうするればいいですか?」
「右側に掲示板があるだろう。そこに張っておけばいくらでも人は来るぞ」
私の問いにジャストタイミングでいたギルド長が答える。そして前々から疑問に思っていたことを言う。
「あの……どうやってすればいいんですか? 教えて下さい! お願いしますー!」
ギルド長が苦笑いを浮かべてやり方を教えてくれる。実際に自分でわかりやすいピンで張り付ける。えーと……報酬は銅貨20枚に温泉無料! これで良し! 内容は……接客や、掃除に見回り(報告だけで良し)で!
それを見たギルド長は首をかしげて気になっていたらしいことを言う。
「報酬が銅貨20枚はどうかしているぞ普通は銅貨2枚とかだからな。……そういえば前々から気になっていたのだがセントウは入場料一人銀貨何枚だ?」
? えーと確かまだ無料にしているんだよね。……無料の意味ないじゃん。だとすると、1ヵ月後に有料にし始めるのがいいか。
「今……まだ無料ですけど、1ッか月後に有料にしようと思います」
「因みにいくらだ?」
うーんと、高すぎるとみんなが入れなくなってしまうし、安すぎたら銅貨を払えな……いや常連さんがいるから払えるか。予想だと今約20人が常連さんで、今後さらにパーティーの人を連れてきてその人も常連さんになってさらに知り合いを連れてきてその人も常連さんになってを繰り返していると、銅貨3枚で依頼の分を達成できると思うけど……。
「銅貨3枚にする予定です。このくらいだったらちょうどいい感じに稼げると思うので」
それを聞くとギルド長は明らかに呆れた顔になった。
「……安すぎやしないか? 普通銀貨1枚とか高額にするやつらが多いんだぞ」
と、話していると、ほぼ毎日聞いている声が後ろから聞こえた。
「え? クビですか??? どうしてなのですか?」
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