第32話 〇〇には気を付けてください
私なりの最速銭湯接客法ー!
まずは時間を止めて男性何人女性何人かを把握します。
次に人数を把握したらその人数分の浴衣をレンタルテーブル(ちなみにレンタル料は返したときに帰ってくるので実質無し)に置きます。置き終わったら解除してあいさつする感じです。
その後は時間を見計らってアウフグースをしに行く。あとは初めて来る人がいたらお風呂の入り方などを教える程度。ほかにあるとしたら、おにぎりコーナーでおにぎりがなくなり始めていたら補充する。……意外と忙しくないんだよね……。
「いらっしゃいませー!」
まずはウィヅアさん。(2月30日に常連さんになった人)が先頭だった。
「今日は温泉日和ですなー」
最近常連さんの間で、「温泉日和」という言葉がはやっているらしい(イアさんから聞いた)。
「そうですねー。あっ浴衣をどうぞ! ゆっくり温泉で疲れを癒して行ってください」
そういいながら男性用の浴衣を渡す。次の人(バールガーさん。2月28日に常連さんになった)にも同じように渡す。
「こんにちは。今日も着々と人数が増えていますね」
とイアさんが言う。話しながら浴衣を渡す。
「そうなんですよー。大半の人は常連さんだからいいんですけど、初見の人が増えすぎてさらにばらばらに来たりしているのでその都度説明していたり、『シャンプー切れました』とかが起きやすくなったりすると、対応が遅れそうで少し悩んでます……」
「なら、ギルドに相談しに行ったらいいわ。あそこでもバイト募集できるから」
バイトって言葉異世界にもあるんか! ってそれよりイアさんから有力な情報を得たぞー! 閉店した後に行こう!
30分後……
そろそろサウナでアウフグースを行うので、ウォーギーに声をかけて男性の方をお願いする。私は女性の温泉に向かう。
そこを見ると、たくさんの人が溶けたような感じで温泉につかっていたり、体をふわふわな泡で洗ってほっこりしている人などがいた。私はサウナでアウフグースをしに行こうとしたとき……
「きゃー! 誰か来てー!」
え? 何が起きてるの!? 声が聞こえた方向を見る。そこには熱々(90℃)のサウナ所があった。
バリバリバリッ!
焦って勢いよくサウナのドアを突き破ってしまう……やっちまったー! ってそれより! 目の前でイアさんが倒れてるー!
「何がありましたかー!」
近くにいたフェイさん(2月25日に常連さんになった人)に何が起きたか尋ねる。
「お……温泉の美肌効果のことで話し合っていたら体に不調が起き始めて、本人は大丈夫って言っていたからその後も一緒に話していたら急に倒れて……」
急いで駆け寄ると、脱水症状を起こしていた。フェイさんにもうサウナから出て水分補給をするよう伝えた後、急いでイアさんを担ぎ水風呂の近くに置く。そして水を少しづつ太い血管のあるところ(喉や脇など)にかける。もうそろそろ少し水に入れても大丈夫だと思ったので下半身だけ入れる。その後、手の中に紙コップを創造して近くにある水飲み場で水を汲み、飲ませた。……脱水症状注意とかの看板立てておかないとなー……。
「冷たい……」
イアさんが小さな声で呟く。よかったー! 間に合ったー!
「大丈夫ですか!? 脱水症状起こしていたんですよ! とりあえずこれを口の中に入れて少しづつ舐めていて下さい!」
と言いながら、常時「熱中症とか怖いから」と、持っていた塩分タブレットをイアさんに渡す。そしてイアさんから出た反応が……
「おいしい……」
美味しい……美味しい!? えちょっと? やばいじゃん! これ相当重症みたいなもんだよ!
いったんイアさんの汗をタオルでとり、薄い生地で出来てある服を時間を止めて着させる。解除してイアさんをクーラーのきいたベッドルームに転移魔法で移動させる。
ベットで寝っ転がらせて安静にするように伝え、薄くひんやりとした布団をかける。まさか脱水症状起きるとは思わなかった……。冒険者だから大丈夫かなと思ったけどそうでもなかったか……。いまのでそう分かったので、私はサウナの入り口に、「サウナを行う前にコップ2杯分の水分補給をし、一人一つ食べてください」と書いてある看板を置き、その下に塩分タブレットを置く。これで良し!
その後周りがパニックになっていたが、「脱水症状を起こしていましたので、いち早く処置を行いました。1時間後にはもう大丈夫になっていますので、安心してください」といい、同時に「こちらの不手際でこうなってしまったこと心より申し上げます……申し訳ございませんでした……」といった。大半の人はこの言葉が12歳の口から出るとは思っていなかったらしく、ぽかんとしていた。
「え? そんな重要なことをないと思ってたの? 駄目でしょう! この店はなくなるべきよ!」
という声が上がった。
「今日初めて来たけど、こんなことも想定していないなんてね! がっかりだよ!」
……そうだよね……詰めが甘かった……今回のこの騒動は自分が原因だ……。
と考えていたら、周りの人たちがその初見さんを叩いていた。「銭湯始めてからまだそんなに経っていないから仕方ないよ!」とか、私の方を向いて「今度から気負付けてくださいね」などという声があった。その声を聞いた初見さんは、顔を真っ赤にして温泉を出て行った。みなさん……常連だからここがつぶれるといやなのかぁ……。だから今回私をかばったんだろうな……。
この騒動から30分後、イアさんが完全復活してサウナに入っていた。まだ復活したばかりだからあまり無理しないでください……それを見て周りは安心し、何とか今日も終わった。
そういえばなんで脱水症状に気づかなかったんだろう? ふつう気づくんだけどなー……。
今回は近くにいたからすぐに対処できたけど……これが受付やっている最中に起きていたらやばかったな……。人……雇うか……。
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