第21話 春の遊び

 私とライで横並びになって話しながら歩いている。


「桜ってないの?」


 周りを見て桜がなかったので、ライに聞く。


「こっちの世界には桜はないよー。あれ私きれいだから好きだったなー」


「あーわかる。風でたくさんの花びらが飛んで行って目の前が桜色に染まったことがあったわー」


 私の言ったことを聞いて、ライが少し笑いながら言う。


「……たぶんそれ風の神様が桜の花びらで遊んでいたのかも」


「……ふえ?」


 え? 風の神様が遊んでた? それってどういう事??? ってもう前下駄箱についてるー!


「おはようございまーす!」


 と、廊下で挨拶している女性がいた。先生かな?

 あ、下駄箱の扉にクラス表がある!

「1年F1組」……『ライ・クローネ』『ユイ・アマミズ』


 F組って何???


「確か学年で階級が決まっていて、みんなFから始まるんだー! 模擬戦で勝ったり、テイムモンスター競争で優勝したりするとF・E・D……と、上がっていくよ!」


 私の心を読んだようなタイミングで、ライが説明してくれる。……エスパーか何か?


「なるほど理解」


「あと、体育館で、ステータスを調べる感じなんだ」


 私は自分の人離れしたステータスを思い出す。あんなのが周りにばれたら混乱の嵐になるのが明白だ!


「……『隠滅』使った方がいい?」


 そうライに聞くと、予想外の回答が返ってくる。


「使ってもばれるよ?」


「まじか……」


 やばい……結構……いやかなりやばいかもしれない……。これはどうやって切り抜けよう……。


 下駄箱にそれぞれ靴を入れて、持ってきた室内用の靴に履き替える。私は黒いローファーに履き替える。やっぱローファーはかわいいな!


 マギライアと雑談しながら教室に向かう。


「今年も新しく部員が入るかな?」


「この部活は結構知られているから必ず入ってくるだろ」


「そうだといいんだけど……」


 などの話声が聞こえる。部活あるんか!

 二回に着く。ってかここ何階まであるんだろ? ……ここら辺が1年のクラスだ。えーと、1年F4組……1年F3組……1年F2組……1年F1組! ここだ!


 ガラッと横式扉を開けて入る。ちなみにコーギー軍団も一緒だ。後ろに待機してもらう。みんなコーギー軍団を見て悲鳴上げていた。 コーギー達は、「ナデテ! ナデテ!」っと言いたげな顔だった。


「おはようございます」


 と、白髪の先生らしき人が私たちの方を見て挨拶した。

 ペコリと軽くお辞儀をして席を探す。私とライ、2人そろって後ろ側だー!


「あの二人が『クロノアス』? ってパーティーらしいよ?」


「2人しかいないじゃないか! うちのパーティーは5人いるんだぞ!」


「結成して全然時間がかかってないからじゃなかな?」


 と、話し声が聞こえた。……なんで私たちのこと知ってるの!? 怖いよ!? どっからその情報が出てきたの!?


「何で知っているんだろうね……」


 と、ライも私にひっそりという。


「分からない☆」


 と、とりあえず返しておいた。

 誰かが私達によって来る。


「あなた達が噂の『クロノアス』ね」


 軽くカールのかかった薄黄色の髪を、赤いリボンでポニーテールにしている。そして目は、それはとてもきれいな琥珀のようなオレンジ色。赤と白の美しい見た目と、動きやすさ考慮された服装からして貴族の人だ。


「あ、『レイア・レティシア』様だ」


「ちょっと怖い……」


「おい! そんなことが聞こえていたらどうなるかわかってんのか?」


 と、うっすら遠くから声が聞こえた。レイアさんだね!


「初めまして。私はレイア・レティシア。あなた達しっかり名乗りなさい。はい! そこのあなたから!」


 というと同時に私が指される。


「え? えーと、ユイ・アマミズです。……以後お見知りおきを(?)」


 私は、アニメなどでメイドが言っていた言葉をとっさに口に出す。……使い方これであってたかな?


「『ユイ・アマミズ』ね。じゃあなたは?」


「あー、マギ……ライ・クローネです」


 ライは、本名を言いそうになるが、ギリギリセーフ。しっかりライ・クローネといえた。聞いているこっちがひやひやするんだけど⁉


「『ライ・クローネ』ね。顔と名前を覚えたわ。今後ライバルとして以後お見知りおきを」


 と、言う発言をした。……私たちにライバルいるとしたら多分ドラゴンになりますが???


「おい! 今のきいたか? あのレイア・レティシアがあの二人にライバル誓言したぞ!」


「あの子たちにはちょっとライバルは務まんないんじゃない?」


 と、また遠くから話声が聞こえる。いや逆だよ!? レイアさんが務まんない方じゃないか!? と考えていると、


「では、失礼します」


 と、言ってレイアさんは別のところに行ってしまった。


「なんだよ何だよあの二人は……」


 と、うっすら聞こえた。聞き耳を立てると、


「なんでみんなわかんないんだよ! なんでこんな化け物がいるのに分からない人が多いんだよ! どういう事だよあのオーラ。覇者の出すオーラだぞ?」


 と、聞こえた。……そんな覇者のオーラ出てるかな……?

 その声の方を見ると、水色髪の男の子が「ヒィ……」っといった。そんなに怖がらなくていいのに……。


「皆さん席についてください。そろそろお話があります」


 と、先生らしき人が言った。


「初めまして。僕は『トウカ・ルルイカ』といいます」


 いや、あの先生男の娘なんか! 女の人かと思った! ……いやただ単に僕ッ子なだけかも? と、考えていると先生が口を開く。


「これからステータスを測定しに行くので、廊下で出席番号順に並んで静かに移動しましょう」


 おっと先にステータス測定か。結構優先順位が微妙にわからないなー。


 スタスタスタタ……


 私の出席番号は12番。ライは16番だから、少し離れちゃうな……。


 体育館につくと、上級生がそれぞれ自由に座って待っていた。


「ここで待機しましょう」


 それぞれみんな座る。とりあえず私は正座する。正座が知られていないのか、周りから変な目で見られた。……私的にこっちの方がいいんだけどなぁ。


 目の前にステージがあって、そこにスピーカーがあった。……スピーカーあるんか! なんでスピーカーが知られてるんだよー!


 10分後……


「皆さん。おはようございまーす!」


 と、教頭先生かな? それっぽい先生が言った。


「「「「おはようございます」」」」


「いい返事ですねー! 私は『ドルビナ・ライクライナー』教頭です。これから校長先生の話とステータス測定が始まりますので、静かにしましょう」


 しーん……


 ステージから教頭先生が離れる。そして入れ替わりで校長先生がステージに上がる。

 見た目は20代前半くらいだったが、エルフだってことが瞬時に分かった。だとすると、250歳くらいかな?

 校長先生がスピーカーの前に立って、お辞儀をする。



「皆さんおはようございます。これから一学期が始まりますので、安全にダンジョンを攻略しながら頑張りましょう!」


 シーン


 そのまま校長先生がお辞儀をし、ステージを離れる。……え? これで終わり??? 10秒くらいで終わっちゃったよ?


「それでは、ステータス測定を始めます。この装置の上に立つことで、測定できます。測定された一年生は各自、教室に戻ってください」


 と、教頭先生が大きな声で言う。……いやこれで本当に終わりか!! そういえばこれなんか〇百景っていう番組で似たの見たな……。

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