第17話 嘘つき呼ばわり×偽装=大事件

男の人が、私に近づきながらそう周りに言う。


「あ、あの人って冒険者ギルドに所属している中で15位の『ラウダーガ・キュルーグ』って人だ!」


「まさかこんなところにいるなんて」


 あ、そんな人なんだ。と考えているところでその15位の人が周りに言う。


「その現場には少人数しかいなかったから、あまり証拠も少ないだろ?」


「? それって私に言っているんですか?」


 と、たずねる。答えによっては問題にならない程度にボコす(冗談)。


「おいおい! お前以外の誰に言うんだー?」


「いや、疑問形だから周りの人にも聞いているように聞こえるんですよ!!」


 と、ツッコミを入れる。


「は? お前馬鹿じゃねえの?」


 つかさず反論。


「それに関しては、人によってどれくらいが馬鹿で、どれぐらいが天才か、基準が違うんじゃないですか?」


「そう理屈を言うというのが馬鹿の証拠なんだよ!!!」


 周りが気まずい雰囲気になる。


「おい! しっかり『私が嘘をついていましたー』とみんなに謝れよ」


「??? あの、一つ質問していいですか?」


「あ?」


「しっかり証拠が(ギルド側に)あるのに、どうしてそんなに否定するんですか?」


「それは単純だ。俺はステータス観覧を持っている。それで今見ているステータスの数字が平均の中の平均だからだよ!」


「……」


 思わず吹き出しそうになる。この男の見ているステータスは、隠密で偽装しているステータスだからだ。


「プフッ……」


「おい、今笑ったな!?」


「笑いましたよ」


「この野郎……これでもくらえ!」


 と叫びながら、私に殴りかかってくる。普通によけてカウンター。


「グハッ……」


 15位(?)の人が後ろへよろける。


「あの……そっちが盛っていたら駄目だと思います」


「は? な、なにを盛ってるというんだよ……」


 そういわれたので、私は男の人がカウンターを食らった時にひらりと落ちた紙を拾い上げて大声で読む。


「『ラウダーガ・キュルーグ』

 45歳。ランキング798位』……あんれれれ?」


 読み終わりと同時に周りが「ありえない!」と、言う声で包まれる。


「おい、こんなチビのいう事をまともに聞くんじゃない!」


 男の人が否定するので、周りに見せて回る。悲鳴が上がる。

 実は、にらみ合いをしていた間に、一回「自分だけの時間」を発動したのだ。これは名前から考察するに、周りの時間を止めて、自分だけ動くスキルだとわかった。

 発動の仕方は簡単。念じると手の中にタイマーが出てくるので、タイマーをスタートさせると周りの時間が止まり、自分だけの時間になるのだ。

 私はその間、男の人のポケットを調べると、ランキングの紙が出てきたのだ。そして、ちょこっと位置をずらして落ちやすくした感じだ。


「お、おい……! こんなことは許されないぞ……」


「……許されないのってどっちですか?」


 私がそう発言すると共に、外で待機していたはずのコーギー達が中に入ってくる。


「キャンキャンキャン!!!」「ワン?」「ワン!」「ワーン!」「ワン!」


「ニャーーー!」「ワン♪」「ワン!」「ワン!」「ワン!」


「ワン!」 「ワン!」「クゥン」「ワン♪」「ワン!」「ワン!」


「キャァ」「ワン♪」「ワン!」「ワーン!」「ワン!」


「ワン!」「ワン!」「ワン!」「ワン!」「ワーン!」「ワン!」


「ニャー」「ワン!」「ワン!」「ワン!」「ワン!」


「ワン!」 「ワン!」「キャン!」「ワン!」「ワン!」「ワン!」


「ワン!」 「キゥァ」「ワン!」「ワン!」


「ワン!」 「ワン!」「ヒャン!」「ワン!」「ワン!」「ワン!」


 現場は一気に混乱へと変わる。


「ストップ!」


 ピタッ……


「いい子だから外で待っててね」


 ドタバタパタパタ……


「はあぁー。なんか一気に疲れた」


 周りが騒然としている間にギルド長が来る。


「待たせたな……とりあえず誰か状況の説明を」


「あ、了解です」


 私は容赦なく今起きた出来事を話す。ダンジョンの出現の様子も同時に。


「情報提供ありがとう……まず、ラウダーガ・キュルーグ! お前には冒険者ギルドへの一週間の出禁を命じる!」


「なんとおっしゃいましたか? 出禁ですと?」


「ああ、出禁だ」


「でもこの小娘は、ボルーナヴェルベドンを倒したという嘘を言っているのですよ!?」


「そこに関してはこの映像を見ていただきたい」


 そのギルド長の声と同時に、周りが暗くなる。そして、フルカラーの映像が流れる。


『よーし由衣の初めての依頼、始めるぞー』


 待って??? これゴブリン退治の時の映像!


「あの……飛ばすことってできます?」


「それはできないが、早送りならできる」


 そう言って早送りになる。1.5倍速だった。


「……この後合計40分間迷子になっているので……」


「……なに?」


 いそいで5倍速になる。その時私が壁に激突しているシーンだったので、周りにどっと笑いが広がるかと思ったが、私のDEXは782(+補正値)。目が早さについていけずみんな目をぱちくりしていた。

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