第10話 まさかのご都合展開

「そういえば、あなたたちを受付所でギルド長が、お呼びですよ」


 イアさんが、今思い出したようで、私たちに言う。


「そうですか! すみません急いでいきます! その間その子をお願いします」


「分かりました。しっかり見ておきますね」


 いそいでライと一緒に受付のところに行く。


「……来たか」


 受付の前には女の人が立っていた。ぼさぼさした茶髪、そしてギラギラ光った黄色い目。……うんほぼほぼ見た目ライオンだね。


「ついてこい」


 ……なんかこれに似たアニメのキャラクターいたなー。

 しばらくギルド長についていくと、多分書室(書斎)かな? まあ、それっぽいところに来た。

 そして、近くにある椅子に座るよう促されて、ライと私が座ると、


「君たち……」


 ……なに? なんか怖い


「よくやってくれた! これで町は平和になったよー」


「あ、はい」


「そんでもって、なんだあの素早い回し蹴りは! DEXどのくらいあるんだ! 答えてくれ!」


 ギルド長が、前のめりになって、早口で言う。


「えっと……」


「ひそひそ(ライ! これ正直に答えていいの?)」


「ひそひそ(答えるのはいいけど、さすがに100~150前後にして)」


「(分かった)」


「えっと、125ですね」


「125!? なんて言う数字だ! あとあの剣はなんだ! どんな剣なんだ! もしかしたら伝説級かもしれないぞ!」


 いや、あれ神話で神様スサノオノミコトが見つけた剣です……


「草薙剣。別名、天のむりゃ……天叢雲剣あまのむらくものつるぎです」


 神話に関するゲームやってたから、名前は瞬時に出てくる。……噛まずに言えるかは別だけど、


「なるほど、天叢雲剣というのか。ではなぜあのようにして飛んでいたのだ?」


「……あの、なんでその場で見たかのように知ってるんですか?」


「あ、……ダンジョンには監視しているひ……」


「あの場にはほかのパーティーの人と、あの名前負けの集団しかいませんでした」


 ギルド長……黙る。私と、ライ……ジト目。


「……冒険者カードは、魔法がかけてあって、その魔法は音声も周りの様子も記録しているんだ。それで確認した感じだ」


 あの、これ秘密だったんですか? 質問しすぎると逆にこうなるんだなー。

 ギルド長は、ゴホンと、咳払いをすると、


「今度から身の危険を感じたら、逃げるようにしてくれ。今回は君たちの方が強かったようだが……素晴らしい連携だった。よいパーティーだな」


「パーティー…… あの、パーティーってどうやって組むんですか?」


「お前たち! 組んでいなかったのか!」


 ギルド長……情緒大丈夫そう?


「ゴホン……今度から、ほかの人と組む場合は、パーティー登録をしていただきたい……だとすると、なんだあの連携は! お前たち本当にパーティー組んでいないのか!?」


「組み忘れてました」


「組んでません」



 ほんとに、パーティー組む方法聞くの忘れて、そのまんま行っちゃっただけなんだよね。

ギルド長は、両手を顔に当てて、スゥゥゥーっと、深呼吸し、一拍置いてから言った。


「おっと、忘れるところだった。ほれ、今回の報酬と、集団を倒した賞金だ」


 ドサッと、両手に入るかわからないくらいの大きな袋を机の上に置いた。


「ほい、受け取って」


「? なんか多すぎません?」


 その中には、金貨何十枚と、銀貨二枚だった。あとで金貨の枚数数えておこう。ちなみに、通貨の種類をライに聞いたら、「銅貨が、100枚で銀貨1枚分。銀貨10枚で、金貨1枚分」と、言っていた。これ、リットルの単位と似てるね! 


「もう部屋に帰ってよい」


「分かりました。失礼しましたー」


 部屋に戻ると、イアさんが、モフ猫に乗っかられて、肉球の感触で半分溶けていた。


「おかえりなさい。この子本当に人懐っこいわね。……あら、もうこんな時間なのね、そろそろお暇させていただきます」


「ウルルン、ニャー♪」


 モフ猫は、満足そうにゴロンと、床に転がった。これは猫の落としものだな。


「ありがとうございました! また遊んであげてください!」


 部屋から出ていくのを確認して、金貨の枚数を数える。180枚! 結構多いな。


「由衣ーいい土地あった! その土地買うのに80枚金貨必要だったー」


 土地を買う場合、冒険者ギルドが、土地の所有権を持っているので、冒険者ギルドから買う必要がある。


「……ちなみにここにある金貨の枚数180枚です」


「ゑ? 本当!? ってことは土地買って温泉作れる!?」


「そうだよ! 土地買えるよ! やったー!」


 ご都合展開! まさかこんなに早く買えるとは思わなかった!

 受付に行って金貨80枚を渡し、購入紙に名前を書く。受付の人は、もちろんびっくり。よーし、これから温泉づくり始まるぞー。がんばろー!

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