第9話 猫は薬物

 あの後、すぐにたくさんの兵士が来て、あのクズ集団を連れてった。そして……


「おかえりなさいm……。ユイ様! 大丈夫だったんですか!? どこか折れたりとかしてませんか!?」


 受付の人からめっちゃ心配された。優しいな。




「あぁ~疲れたー。お風呂入りたーい」


 今日はもう夕方だ。夕食は軽くカロリーメ〇トで済ませてある。

 今いる場所はギルドの塔にある部屋。冒険者用にしっかり設備されている。……お風呂場を除いて。


「できるだけ早くお金集めて、温泉作りたーい」


「早く入ってみたーい」


「クルル、ムニャムニャ……」


 ……このモフ猫……見た目といい、鳴き方といい、多分メインクーンなんだよなあぁ

 部屋に入った後、ライに頼んで、このモフ猫にクリーンをかけてもらったら、真っ白白白。

 目は温かい光のような黄色。……あの時まじまじと見てる時間なかったからなあぁ。

 今はおいしそうに現世異世界ネットで買ったご飯キャットフード食べてる。……私たちの目の前で。……普通あの騒動起きた後だから「ヴー、シャー」って、なっててもおかしくないんだけどなあぁ……私がテイムした主だからかな?

 あと、名前考えないといけない……もうこの際「ヨモギ」でいいかな(ヨモギの葉っぱの裏は白いから)。まあ、しっかり話し合って決めるけど。

 なんて考えていると、部屋のドアの方から、足音が聞こえた。私、昔っから耳はいいんだよね。だれがどの方向にいるかわかるくらい。

 私は、部屋のドアを開けると、ダンジョンの最深部であったエルフの人が来ていた。


「うわっ、びっくりした……」


 まあ、そりゃあ扉ノックする前に開いたら、誰でもびっくりするもんね。


「こんばんわー。さっきぶりですね!」


「こんばんわ。本当にさっきぶりですね。あの、私、あなたたちにお礼を言いに来たの」


「お礼だなんてそんな……私、あの集団がやってること見て、ブチぎれてれてやっただけですから」


「いや、私もムカムカしてたんだけど、相手に勝てっこないってわかっていたから、どうしようかと悩んでいたら、その時あなたたちが集団を倒して、正直言ってあのときはスカッとしたわ。そのお礼よ」


 この人、言葉遣いはきれいでも結構毒舌の人だ……。でも今回の件に関しては、共感しかない。


「本当にありがとう。そういえばあのメニコーンビリーは大丈夫なの? 私、ヒール持っているからかけましょうか?」


「大丈夫です! 今元気にご飯食べてますよ! 様子見ます?」


「なら、ありがたく見させてもらうわ」


 エルフの人は、「お邪魔します」と、言いながら入っていき、モフ猫の近くへ行く。


「にゃー!」


「とっても元気ね! あなた、ハイヒールを覚えているの?」


「いえ、覚えていません」


「? じゃああなたが?」


 私が覚えているのは、「ハイヒール」じゃなくて、「付与、治癒再生」だから嘘は言ってません!

 私じゃないとなると、ライに聞くしかないもんね。


「? いいえ、私はこの子に魔法かけてませんよ?」


「? ? ? ? ?」


 エルフの人が困惑する。私はライに、「付与、治癒再生」のこといっていいか聞いたら、「面白そうだからOK」と、返ってきた。


「あの、私が、『付与、治癒再生』をかけました」


「『付与、治癒再生』?」


 「聞いたことない」と、言う顔。


「それが何なのかわからないけど、とりあえず、この子が元気そうでよかったわ」


 モフ猫はエルフの人を「誰だろ」と思いながら、クンクンにおいをかいだあと、「撫でてー」と、エルフの人の手に頭を擦り付けた。


「頭撫でてあげてください! こういう風に甘えん坊な猫は、撫でてもらうことが幸せなんですよー」


「『猫』っていうのは分からないけど、頭をなでればいいのね」


 エルフの人は、モフ猫の頭をなでる。


「ニャー♪」


 モフ猫……お前、クズ集団に狩られそうになったのに、警戒心はどこに行ったんだ!


「……そうだ!」


 私は創造で、小っちゃいボールを出す。

 手に取って、モフ猫に見せると、


「クルニャー!」


 はいー! やっぱこの子メインクーンでーす! メインクーンの鳴き方は、「クルル」が、期待。「クルニャー」が、お願いっていう意味らしいので、この場面に置き換えると、「投げてくださーい」って、いう意味だね。


「このボール投げてみてください! 取りに行くと思います!」


「? 投げればいいの?」


 エルフの人は、困惑気味にボールを投げる。すると、

 モフ猫が、「待ってました!」と、言わんばかりに走っていき、ボールをくわえて戻ってきた。 


「ウルルン♪」


「本当にとってきた……」


 エルフの人は、びっくりしながらボールを受け取る……。そういえばまだ名前聞いてなかったな。


「今更ですが、軽く自己紹介しましょう! 私の名前は、由衣です」


「そういえばしてなかったわね、私の名前は『イア』よ」


「ちなみに私は、ライって名前です」


 イアさんは、自己紹介しながら、またボールを投げる。 

 モフモフの毛の中に隠れた足を、バタバタ動かしてボールを取りに行く。そして、持ち前の大きな体を、ダイナミックに動かし、また戻ってくる。たまに犬みたいな子もいるからなー。

 イアさん……すっかりモフモフのとりこになって、いつの間にか猫吸いをし始めた。「クリーン」をかけた後だからいいけど、フケとかで猫アレルギーになるから、そこらへん気を付けないといけないんだなぁ。

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