第06話 少女、初めての体験

「え、私、丸裸にされちゃったんですか?」


 ドロシーはかぁっと顔が赤くなる。


「ああ。だから、どうすればいいのかもわかったのさ」


「そ、そうですか……」


「まず、確認したいんだけど、ドリィちゃんはお婆ちゃんに魔法を習っているとのことだったけど、ドリィちゃんのお婆ちゃんは、何で魔法を教えることができるの?」


「えっと、昔、王都で魔法学を教えていたからですね」


「それっていつ頃の話?」


「どれくらいなんだろう。多分、三、四十年くらい前だと思います。ママが生まれたタイミングで、この村に戻ってきたと言っていたので」


「それからは、ずっとこの村で生活していた感じかな?」


「はい」


「なるほどねぇ」


「それがどうかしたんですか?」


「結論から言うと、魔法の発動様式が古い」


「え、そうなんですか?」


「うん。と言っても、数年くらい前までは用いられていたやり方だから、そこまで古いわけでは無いんだけどね。ただ、これからのやり方では無いかな」


「そう、だったんですか」


「ということで、最新のやり方を教えようと思う。けど、その前に、魔力の流れを把握するところからやってみようか」


「魔力の流れを把握する?」


「うん。ドリィちゃんって、魔法を発動するとき、どれくらい自分が魔力を流しているかとか、あまり意識していないでしょ?」


「そう、ですね。というか、意識できるもんなんですか?」


 ドロシーは、これまで自身の魔力を意識したことが無い。それでも魔法は発動できていた。


「できるよ。今まで魔法が難しいと思われてきた理由は、この魔力の知覚が難しかったことにあるんだよね。だから、魔力を知覚しなくとも、何となく魔法を使える人にしか魔法は使えなかった。けど、最近は魔力を知覚する方法も開発されてきているから、今回はその一つをやってみようと思う。それで魔力の流れがわかるようになると、魔法の技術も上がる」


「はい」


「今回やるのは、『補助法』と呼ばれるやり方。端的に言うと、俺が今からドリィちゃんに魔力を流すから、俺の魔力を介して、ドリィちゃんには魔力などを知覚してもらう」


「わかりました」


「それじゃあ、両手を出してもらっても良いかな」


 ドロシーが両手を差し出すと、ライトはその手を握った。


「魔力は魔導管と呼ばれる器官を通る。だから、まずは俺とドリィちゃんの魔導管を接続するね」


「はい」


「いくよ」


 ――瞬間。ドロシーの体がビクッと震え、顔が赤くなる。うまく言語化できない感覚ではあったが、ライトと繋がった気がした。


「接続できた。だから次は、俺の魔力を流すよ」


「は、はい」


 ドロシーは息を呑む。左手の指先に何か生温かいものが当たる感触があった。それは、ドロシーの指先をいじるように揺れた。


「感じる? これが、魔導管の入り口だよ」


 ライトの優しい声音で、ドロシーは顔が赤くなる。何だかいけないことをしているような気分になってきた。


「それじゃあ、いれるね」


 ドロシーは身構える。生温かいものが、ドロシーの魔導管を押し広げて中に入ってきた。


「……っあ♡」


 魔導管が広がっていく感覚に、ドロシーは思わず甘い声が漏れる。


 顔をさらに紅潮させ、慌てて口を押えようとするも、ライトは手を握ったままそれを許してくれない。


「あ、あの。ライトさん」


「何?」


「あ、いや、何でもないです」


 ドロシーは恥ずかしそうに目を伏せる。気持ちよくて、変な気分になりそう――なんて、目の前に男の人に言えるわけがない。


「俺の魔力を感じる?」


「は、はい。この、生温かいものですか?」


「多分、そう。今からそれを動かすから、まずは魔力の流れを意識してみて」


「はい」


 ドロシーは、ライトの言葉に従って、ライトの魔力を意識してみる。


 最初はドキドキが勝り、うまく集中できずにいたが、徐々に体がライトの魔力に慣れ、魔力の流れを感じるようになった。


 と同時に、魔力の出し入れがある度に、痺れるような快感を覚え始める。


 そして――。


「んっ♡ あっ♡」


 ついに、甘い声が我慢できずに漏れ出してしまう。恥ずかしかった。が、それ以上に気持ち良かった。


 このとき、ライトのサングラスの奥にある瞳の中に、呪いの紋章が浮かび上がったのだが、ドロシーはそれに気づく余裕が無かった。


「あ、あの、ライトさん♡」


「何?」


「き、気持ちいぃ♡ んですけど♡」


「ああ、それは、そういう刺激にしているからね」


「え、わざとですか♡」


「うん。だって、そっちの方が感じやすいじゃん」


「へ、へぇ♡」


「もしかして、嫌だった? なら、ちょっと痛い刺激にすることもできるけど。そっちの方が集中できるなら、変えようか?」


「え、あぁ、少しだけ、お願いします♡」


 ドロシーは痛い刺激にも興味を持った。


「わかった。じゃあ、痛みに変えてみるね」


 次の瞬間、ライトの魔力の質が明らかに変わり、それまでの生温かい刺激ではなく、冷たくてチクチクとした刺激に変わった。


 動くたびに、痛みが走るので、ドロシーは顔をゆがめる。


 が、しばらくしていると、徐々に気持ちいい刺激へと変わり始めた。


 ドロシーは小首を傾げる。


「あれ? また、気持ちいい刺激に戻しましたか?」


「いや、戻してないけど」


「でも、気持ちいですよ♡」


「ふーん。俺は変えてないから、もしかして、ドリィちゃんってマz――」


「あああああ! 痛いかも! 痛い痛い! すみません! 勘違いです! めっちゃ痛いです! さっきの刺激に戻してください!」


「わ、わかった」


 ライトは魔力の質を切り替え、最初の魔力に戻す。


「……んっ♡」


 ドロシーの頬が再び赤みを増す。


 やはり、こちらの刺激の方が好みではあった。痛みも多少のスパイスにはなったが。


 そして、ドロシーの魔力の流れを把握する作業は続く――。

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