vol.17 メディアス邸
[Ⅰ]
招かれた朝食の後、俺とイアティースは謁見の間にてメディアス卿疾走の件について、アラム卿より説明を受けた。
それによると、今朝、メディアス卿の屋敷に赴いた城の使いの者が、その第一発見者との事であった。
使いの者が屋敷に赴いた際、その荒れように驚き、中を確認したところ、屋敷内は無人で、色んな家財道具が荒らされていたそうである。
しかも、召使いの姿すらも無かったそうだ。
その為、使いの者は慌てて城に帰ってきたとの事であった。
強盗に遭い、拉致されたのではないか、との見解だが、俺は当然そんな事は信じてない。
現場を見てみない事には何ともいえないからだ。
「――以上が報告にあった内容だが……どうすると良いであろうか? 事が事だけに、まずは、この場にいる限られた者だけにお知らせし、集まって頂いた。その者の報告では、賊に入られたのではないかとあったが……」
渋い表情でアラム卿は説明を終えると、周囲の重鎮達に視線を向けた。
今、謁見の間には、ヘリオス将軍にアレウス主席宮廷魔導師、それとレオナール卿にアラム卿といった面々と、俺とイアティースの計6名の者が集まっている。
謁見の間は全ての扉が閉ざされ、密室のような感じであった。
センセーショナル過ぎて、今は誰にも聞かせたくないのだろう。
まぁそれはさておき、全員、険しい表情だったのは言うまでもない。
この厳戒態勢の中で起きた強盗事件だから当然だろう、
そんな中、まずヘリオス将軍が声を上げた。
「アラム卿……今、仰った事が本当ならば、賊はもう、メディアス卿をどこかに拉致しているはずだ。いつ頃起きた事なのか、何もわからぬのであろうか?」
アラム卿は残念そうに頭を振った。
「それが、いつ起きたのかは全くわからぬのだよ。ただ、昨日の日没前に城の者達と会っているので、それから今朝までの間であろうな」
ここでレオナール卿が手を挙げた。
「アラム卿……私は神官達の夜の礼拝を告げるニンフルの鐘がなる頃に、メディアス卿の屋敷で彼と会っております。恐らく、メディアス卿が襲われたのは、それ以降なのではないかと……」
「なんとそうであったか。となると……事が起きたのは、夜と見て間違いなさそうですな」
「それが本当ならば、夜に襲撃されたとみていいでしょう」
正確性はともかく、レオナール卿からの新情報により、大体の犯行時刻は絞られた。
とはいえ、引っ掛かる点が多過ぎたので、俺は掻い摘まんで訪ねる事にした。
「アラム閣下、幾つか質問しても宜しいでしょうか?」
「うむ、構わぬ。して、コースケ殿、何かね?」
「先程、メディアス卿の家族や召使いの消息もわからないと仰られましたが、それは本当ですか?」
「ああ、本当だ。使いの者の話では、屋敷には誰もいないとあった。恐らく、そうなのだろう。それがどうかしたかね?」
なんか不自然な拉致強盗事件であった。
そもそも、こんなに拉致する意味がわからないからだ。
「妙ですね……」
「妙というと?」
「メディアス卿やその家族が拉致されるのは当事者なのでわかるんですが……召使いの者達まで拉致する必要があるんでしょうか? しかも拉致するとなると、相当な数になると思うんですよ。レオナール様、メディアス卿の屋敷にいる召使いの数ってどのくらいかわかりますか?」
俺はそこでレオナール卿に視線を向けた。
レオナール卿は眉間に皺をよせ、困った表情になる。
「どれくらいと言われると私も困るが、卿の屋敷は大きいので、住み込みで20名近くはいるのではないだろうか」
「そんなにいるのですか……結構な数ですね。賊は、そんなに拉致してどうするのでしょうね。まぁ口封じの為に拉致したと言われればそれまでですが……なにか釈然としません」
アラム卿も顎に手をやり、思案顔になった。
「ふむ……確かに、コースケ殿の言うとおりだな。そんなに拉致してどうするのだろうか……」
「勇者殿の言うとおりだ。なぜそんなに拉致をしたのか……」
「そうですね、確かにおかしいです。なぜこれほどの者達が拉致されたのか……」
ヘリオス将軍とアレウス様も、それに同調した。
イアティースは静かにこの場を見ている。
昨晩の話もあり、色々と考えているのだろう。
俺は話を続けた。
「それともう1つ。メディアス卿の屋敷は話を聞くところによると、この城から近いそうですね。となると、今、この辺り一帯は先の襲撃もあり、厳戒態勢が敷かれております。なので、そういった荒事が起きたら、目撃者もいそうに思うのですが……そういった情報は上がってきていませんでしょうか?」
「いや、そのような報告は、まだ何も入ってきてはおらぬ。コースケ殿の言うとおり……確かに、何か変だ……」
アラム卿も異質さに気が付いたようである。
この場に妙な空気が漂いだした。
恐らく、この事件に対し、違和感を持ち出したのだろう。
するとそこで、アレウス様が前に出たのである。
「ここで考えていても答えは出ないでしょう。もう、メディアス卿の屋敷へ行って、調べる以外、ないのでは?」
「それしかないでしょうな」
ヘリオス将軍もそれに頷いた。
「では誰が行かれる?」
アラム卿がそう言った直後、2名の者達が声を上げた。
「私が直接参りましょう。将軍として警備の責任を感じております故。それにメディアス卿の身も心配ですのでな」
「私も直接、屋敷を確認させていただきます。何が起きたのか、調べる必要がございますので」
声を上げたのは、勿論、ヘリオス将軍とアレウス主席宮廷魔導師だ。
するとそこで、アレウス様が俺に視線を向けたのである。
「コースケ殿はどうされますかな? 先程の口振り……貴方も行って確認したいのでは?」
まぁ確かにその通りだが、俺だけ単独行動は難しいので、悩むところである。
俺はそこでイアティースを見た。
するとイアティースは、意思の籠もった強い表情で、静かに頷いたのである。
「コースケ殿、我等も参りましょう。この国の大臣が、賊に拉致されたかもしれないのです。放っておけません」
「畏まりました」
イアティースはアラム卿に視線を向けた。
「アラム卿、私の留守中、宜しくお願いいたしますね」
「むぅ……陛下御自身が行かれるのですか? それは……」
アラム卿は少し難色を示していた。
まぁこれは当然の反応だろう。
あんな事があったばかりだからだ。
「はい、私が直接赴きます。このような事態、捨て置けません。それに、コースケ殿もおりますので」
「意思は固いようですな。……わかりました。では、近衛兵士も多めにお付け致しましょう。コースケ殿、陛下の護衛、宜しくお願い致す」
「無論です。この身に変えてでも、陛下を御守りいたします」――
そして俺達は、メディアス卿の屋敷へと調査に向かう事となったのである。
[Ⅱ]
俺とイアティースは、雲一つない青空の下、ヘリオス将軍とアレウス主席宮廷魔導師達と共に、メディアス卿の屋敷へとやってきたところだ。
ヘリオス将軍は数名の部下を引き連れ、アレウス様も数名の部下と共にやって来ていた。
そして俺達も、護衛の兵士を20名くらい引き連れ、やってきたのである。
というわけで、総勢50名近い大人数での訪問となったわけだが、安心感は凄いモノがあった。
やはり数は力だと思った瞬間である。
これだけいれば、そう簡単にあの悪魔達に後れを取る事はないだろう。
まぁそれはさておき、メディアス卿の屋敷は、オルフェウス城から徒歩5分くらいの所にあった。
この国の高位貴族が住まう居住区画にあり、立派な鉄格子の門扉と塀に囲まれた美しいお屋敷であった。
はっきり言って、この辺りでダントツに大きくて立派な屋敷だ。
白い石造りの屋敷で、神殿のような丸柱が外壁の周囲に立ち並んでいた。
その為、ぱっと見は小ぶりな神殿にも見える。
しかも、門の先に見える青々とした芝に覆われた庭園には、大きな噴水や騎士の石像などもあり、ブルジョワ感が凄いのであった。
これらから察するに、まぁとりあえず、金は一杯持ってんだろう。
(うわぁ……屋敷に結構金かかってんなぁ……メディアス卿は財務を担当する大臣らしいけど、公金横領してんじゃないのか。まぁ見た感じ、やっててもおかしくなさそうな親父だったけど。ン?)
ふとそんな事を考えていると、ヘリオス将軍がやって来た。
「勇者殿、ここがメディアス卿のお屋敷だ。道中も話したが、なかなか立派な屋敷だろう?」
「ええ、一瞬、神殿かと思いましたよ。でも、この近辺は凄い警備の兵士多いですね……」
「まぁそりゃそうだ。ここはわが国が誇る大貴族の居住区域だからな。さて……それではまず、我々からこの門を潜るとしようか」
「あ、その前に、ちょっと質問して良いですか?」
「ん、なんだ?」
俺はそこで、この間から気になっていた事を訊ねる事にした。
「メディアス卿は、城塞にあった石像を最初、城の執務室に飾るような感じで言ってたと思うんですが、なぜ屋敷に運ぶ事になったんですかね?」
「ああ、それなんだが……実は城に運ぶ途中、この屋敷の前を通ったら、メディアス卿の使いの者が突然来てな。それで、屋敷に入れてくれってお願いされたのだよ。それがどうかしたのかな?」
どうやら、メディアス卿の指示でそうなったみたいだ。
さて……どう考えるかである。
だがこんな所で考えても仕方ないので、とりあえず、屋敷に入るとしよう。
「ああ、そういう事だったんですね。ありがとうございました。これで謎が解けましたよ。さて、それではヘリオス将軍、宜しくお願いします」
「おう、良いって事よ。さて、では我々から入るとしよう」――
ヘリオス将軍達を先頭に、俺達は鉄格子の立派な門扉を潜り、屋敷の中へと足を踏み入れた。
すると程なくして、異変を目の当たりにする事となったのである。
なぜなら、屋敷の庭は意外と荒らされていたからだ。
正面の門から見える所はそうでもないのだが、その奥に行くと、騎士の像は土台から倒され、その衝撃で像が破壊されていた。
その付近にある花壇や花が群生している場所は綺麗なモノなのだが、そういうモニュメント系は割と破壊されてるのである。
俺からすると、首を捻りたくなる光景であった。
正直、意味が分からないからだ。
つーわけで、俺は思わず立ち止まり、破壊の現場をマジマジと見たのである。
「どうしたの、コースケ殿?」
イアティースが俺の隣に来る。
「陛下、少し妙だと思いましてね」
「妙? この荒らされているのがですか?」
「ええ。ン?」
するとアレウス様がそこで、褐色肌のボインな美女魔導師を伴い、俺達の所へとやって来たのである。
ちなみにその美女魔導師は、胸元を大胆に見せる白いドレスみたいなローブを着ており、そこからメロンみたいな物体が顔を覗かせていた。
まったくもって、けしからん胸をした褐色肌の美女魔導師であった。
教育的指導が必要だと思ったくらいだ。このエロ魔導師め!
まぁ命が惜しいから、やる勇気はないが。
また、髪はサラッとした茶髪で、ストレートに下ろしていた。
そして、少し浅黒い肌をしてる影響か、ダークエルフぽい雰囲気を持ったニューフェン女性だったのである。
案外、このワンレンアレウス様の部下兼プライベート担当女子なのかもしれない。
「どうかされましたか、コースケ殿。何かございましたかね?」
「アレウス様……妙だと思いませんか?」
「妙と言いますと」
俺は倒されたモニュメントを指差した。
「なんで庭を荒らしたんでしょうかね。意味がわかんないんです。物取りや賊ならば、静かに屋敷に入って、出ていきたいと思うんですけどね。こんなに派手に破壊したら、中にいる者だけでなく、周辺の屋敷の者達も、流石に気付くと思うんですよ。現状は気が付いてないみたいですけどね。まぁとはいえ、出た後か、入った後かはわかりませんが。アレウス様はどう思われますか?」
「確かに、妙ですね……」
「しかもですね、これだけ破壊したにも関わらず、足跡がどこにもないんですよ。あそこの石像なんか、花壇側からじゃないとあんな風に倒せないですしね。でも、全然踏み荒らされてない」
イアティースもそれを見て思案顔になった。
「本当ですね、コースケ殿。貴方の言うとおり、花壇は綺麗なままです」
「ほう……言われてみるとそうですね。で、コースケ殿はどう考えているのですかな?」
「この破壊行為……恐らく、エンギルの力で行われたんじゃないでしょうか? 破壊の為にエンギルの力を使うなんて……なかなか余裕がある賊です。しかも、相当な使い手だと思いますよ。あの石像を押し倒せるくらいですから。まぁ複数の者達でやったのかもしれませんがね。ん?」
するとその時であった。
ボインな女魔導師が俺に向かい、妙な視線を投げかけていたのだ。
だが女性は、俺と目があった瞬間、すぐに逸らしてしまった。謎である。
アレウス様はそこで、ボインな女魔導師の肩に、ポンと手を置いた。
「この者は私の部下でディアーナと申す者。優秀な魔導師であり、一時はメディアス卿にも仕えていたので、今回連れてきたのです」
ボインの女魔導師は軽く会釈した。
「挨拶が遅れました、イアティース女王陛下、そしてコースケ殿。私はディアーナと申します。本日は宜しくお願い致します。以後、お見知り置きを……」
「え、ええ……宜しくお願いしますね、ディアーナ」
「宜しくお願いします、ディアーナさん」
ちなみに、イアティースは笑顔でそう返していたが、ちょっとイラッと来てる風であった。
たぶん、このデカい胸の露出が気に入らないのだろう。
自分の小ぶりな胸と比較したのかもしれない。
そして俺に向かい、射抜くような鋭い視線を突き刺してくるのである。
イアティースは笑顔だが、目が全然笑っておらず、心の声を代弁するならば『コースケ……この胸見たら、どうなるかわかってるでしょうね……』とでも言わんばかりであった。
目のやり場に困るとは、この事である。
もうなんというか、目に毒なエロ女であった。
まさに、嘆きのボインである。
「それはそうと、コースケ殿。確かに、そういう見方もできますが、理由がわかりませんね。何の為にこれらを荒らしたのか……コースケ殿はどうお考えで?」
アレウス様はそう言うと、思案顔で庭を見渡した。
「そこなんですよね。ですが、逆に考えると……破壊行為をいち早く誰かに見つけて欲しかったのなら、それも理解出来るんですけどね」
「え!?」
ここにいる3名の者達は、一斉に俺へと視線を向けた。
どうやら、予想外の考察だったようだ。
「見つけて欲しい……どういう意味かな?」
「屋敷内の異常をなるべく早く……訪問者に気付かせたかった……とかですかね。この荒れようを見れば、中で何かが起きている事を嫌でも連想しますので」
「訪問者に異常を気付かせるだと……突然、何を言うのかと思えば。コースケ殿は変わった御方ですね」
アレウス様は怪訝な表情を俺に向けた。
イアティースはポカンとしながら俺を見ている。
その表情は、どういう事? とでも言いたげであった。
そして、ボインの女魔導師はというと、少し目を泳がせていたのである。
何となく、流れが読めてきた一幕であった。
「アレウス様……今のは冗談ですよ、冗談。まぁとりあえず、こんな所で見ていても何もわからないので、我々も先を進みましょうか。では陛下、行きましょう」
「ええ」――
[Ⅲ]
屋敷の中は異様に静かであった。
物音一つしない。玄関ホールの壁に掛かっていたであろう絵画や偉人の胸像は、薙ぎ倒されるように、割れた花瓶と共に床に転がっていた。
モロに泥棒が入った的な感じだが、突っ込みどころ満載である。
(あ~あ……こんなに玄関を荒らして……普通、泥棒や強盗は玄関の絵画や像を落としたり、倒したりはしないんじゃね。強盗や泥棒が散らかすのは、金目の物や拉致したい人物がいる部屋だと思うけど……)
怪しさしかないが、俺はとりあえず様子を見る事にした。
屋敷の中に入った兵士達は、メディアス卿の名前を大きな声で呼んでいた。
「メディアス卿! メディアス卿! 御無事ですか! いるなら返事してくだされ! 我々は救出に来た城の兵士です! メディアス卿!」
だが返事はない。
それどころか、人っ子1人いない。
兵士の声が、虚しく屋敷に響くだけであった。
ヘリオス将軍がそこで、俺達に振り返る。
「主が不在なのに、屋敷の中を歩き回るのは気が引けるが……とりあえず、屋敷内をを見て回りましょう」
ヘリオス将軍の言葉を号令に、俺達は屋敷の中へと足を踏み入れた。
つーわけでメディアス邸の探索開始である。
「では陛下、我々も行きましょうか」
「はい、コースケ殿」――
屋敷の入り口に護衛の兵士と魔導師達を少し残し、俺達は屋敷内の部屋を
しかしながら、どこもかしこも荒れた部屋があるだけで、誰とも遭遇しなかった。
完全に無人の屋敷である。
その為、俺とイアティースは一旦、この屋敷のリビングに行き、そこで少し休憩をする事にしたのである。
リビングは荒れてはいるものの、ソファーやテーブルなどは全然大丈夫だからだ。
「陛下、疲れたでしょう。少し休んで下さい」
イアティースはソファーに腰掛けると、隣に座るよう促してきた。
「コースケ殿も私の隣へ」
「御意」
俺はそれに倣い腰を下ろした。
するとイアティースはそこで、俺に耳打ちをしてきたのである。
「ねぇ、コースケ……幾らなんでも、この屋敷にメディアス卿はいないわよね?」
俺も小声で返した。
「さぁどうだろうね。でも、灯台下暗しっていうからねぇ……」
「トウダイモトクラシ? 何それ?」
「遠くのモノを見ようとし過ぎると、近くのモノが見えなくなるって事だよ。大体、おかしいと思わないか? こんなに大人数を拉致しようと思ったら、外の警備を考えると、簡単に見つかってしまうよ」
そう、俺は案外近くにいると思っていたりするのだ。
イアティースは目を大きくした。
「本当ね……夜も日中も、外は凄い兵士の数だもんね。コースケは、どんな時でも冷静ね。そういうところも大好きよ」
イアティースは屈託のない笑顔を俺に向け、手を握ってきた。
ここでは流石に小悪魔モードはやめてほしいが、まぁ悪い気はしない。
「でも……どこにいるのかが、わからないんだよね。デカい屋敷だから、たぶん、隠し部屋のようなモノが、1つや2つはあると思うんだけど……ん?」
俺とイアティースがヒソヒソ話をする中、そこでディアーナがこちらに近付いて来たのである。
何か用があるのだろう。
「女王陛下にコースケ殿……折り入ってお話があるのですが?」
イアティースはそこで彼女に向き直った。
そして俺は、あらぬ疑いをかけられぬよう、胸から視線を反らしたのである。
「ディアーナ、お話とは?」
「実は……メディアス卿のお屋敷には、少々、仕掛けが施された部屋があるのです。まだそこは、皆さんも見ておりませんので、この際、行ってみませんか?」
あからさまに怪しい誘いだが、ここは虎穴に入らずんば、なんとやらなのかもしれない。
「仕掛けのある部屋ですか……どうしますか、コースケ殿。私は行ってみたいのですが……」
イアティースは行きたそうに、俺へ視線を向けた。
罠に飛び込むような感じなので、どうしたもんか悩むところである。
(どうすっかな……一応、今のところはエンギルの警告もないから……とりあえず、行ってみるとするか。そこで色々と考えよう……)
俺はイアティースに、その旨を伝える事にした。
「仕掛けの部屋ですか……確かに気になりますね。では陛下、行ってみますか? 何があるかわかりませんけど……」
「ええ」――
吉と出るか、凶と出るか。
とりあえず、ディアーナの挙動には注意するとしよう。
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