vol.11 光の剣
[Ⅰ]
異世界2日目の夜。
女王の寝室は静かに汗ばむ陽気となっていた。
それは恐らく、俺とイアティースの愛の行動がそうさせているのだろう。
俺達は一糸纏わぬ姿で、一心不乱に互いの身体を求め続けた。
仰向けのイアティースに覆いかぶさる形で、俺は必死になって行為に及ぶ。
イアティースは俺の背中に爪跡が残りそうなほど、力一杯にハグしてきた。
また、俺が動くにつれ、イアティースの声を押し殺したか細い喘ぎが、僅かに聞こえてくるのである。
「あぁ……コースケ……凄いよ。あぁ、もっとして……大好き、愛してる……コースケ、コースケ」
その声を聞く度に、俺の腰は加速しまくった。
俺は次のステージにイク為、時を加速させるかの如く、更に動きを速めた。
すると俺の脳内において、変化がおきたのである。
なんと、時間が加速し続けてゆくような錯覚に、俺は見舞われたのだ。
そして、俺の脳内は次第に絶頂へと達し、人々を幸福に導く、made in heaven状態と化したのであった。
「コースケ……もう、もうらめぇ!」
「イアティース!」
俺の中の何かが一巡した……気がした。
その直後である。
イアティースが息を殺して身悶える中、俺は暴れん棒を外の世界へと引き抜き、そこで勢いよく果てたのだ。
暴れん棒の先から白いナニかが迸り、悶えるイアティースの腹部に落下してゆく。
そして、脳内made in heaven状態の俺は、そこで大の字になり、ベッドに横たわったのであった。
圧倒的だ。
圧倒的達成感が俺を支配していた。
その高揚感……ざわ、ざわと、まさに悪魔的!
最ッ高に、ハイってやつだ!
そんなハイテンションの中、隣に目を向けると、痙攣するかのように震えるイアティースの姿があった。
そう、俺達は共に、絶頂の時を迎えていたのである。
それから俺は、暫しの間、今の余韻に浸り、ゆっくりと呼吸を整えたのであった。
―― しばらくお待ちください ――
時間と共に体力ゲージが回復してきた俺は、いつしか賢者モードに突入していた。
そして、自分の行いに対して、自虐的に自問自答を繰り返したのである。
なんでかって?
決まっているだろう。
とうとう、引き返せない事をやり終えたからだ。
隣には今、一糸纏わぬイアティースが、俺の腕を枕にしながら、寄り添うように横になっていた。
イアティースの息はまだ少し荒いが、恍惚とした表情で、満足そうな笑みを浮かべていた。
俺はそんなイアティースの頬に優しく手をやり、口づけをしたのである。
するとイアティースは俺の胸に顔を預け、嬉しそうに微笑んだのであった。
というわけで、以上です。
もうお分かりだろう。
そう、やっちゃいましたのです。
直接会えるようになってから2日目にも関わらず、もう肉体関係ってやつです。
しかも女王です。君主です。国家元首です。ヤバいです。
はい、取り返しのつかない事をしてしまいました。
でも、いいんです。
俺はもう開き直ってま〜す。
イアティースのこの可愛さと可憐さと積極性には、もうどうやっても叶いまへん。
据え膳食わぬは男の恥でっせ。
後はもう、成るように成れですわ。
「コースケ……凄くよかったよ。2回目なのに、コースケよくがんばったね。私、コースケを一杯感じれたから、凄く嬉しかった。大好き、コースケ」
イアティースはそう言って、俺にまた口付けをしてきた。
俺はそんなイアティースを抱き寄せ、お返しとばかりにディープキスを見舞ってやったのである。
とはいえ、イアティースの言うとおり、2回目なので疲れたのは事実だ。
そう、2回目なのである。
第1回目は向こうでシャワーを浴びた後、そのまま俺の部屋の寝室でやりーの、第2回目はイアティースの寝室でやりーのと、まぁなんというか、場所を変えて盛大に致したのだ。
我ながら誇らしい精力であった。
イアティースを満足させられたので、とりあえず、男の面目は保ったとみて良いだろう。
余談だが、イアティースは処女だったので、1回目の時は最初、ちょっと痛かったらしい。でも、途中から気持ち良くなったそうだ。
俺も、イアティースが痛がった上に、若干血が出たので、少し焦ったのは言うまでもない。
だがその際、貫通力をアップさせるよう愛撫を執拗に繰り返したので、それが功を奏したようだ。
咄嗟の判断で難しい局面を乗り切ったので、俺も満足な一局だったと自負しているところである。
俺にとっては名局であった。
って、何書いてんだろ、俺……。
ここに来て、急に素に戻ってしまう俺であった。
突然、現実に戻る。これも生命の輪による副作用なのかもしれない。
だが、読者諸君が気分を害したのなら謝ろう。
とはいえ、書き直すつもりはないのであしからず。
さて、では話を続けよう。
ベッドの上でイアティースと少しイチャついていた時、そこでふと鏡の間の入口が俺の視界に入った。
入口の扉は、不死の王の魔法攻撃で焼け落ちており、今は遮るモノがない状況となっていた。
前々から、少し気になっているところであった。
「なぁイアティース、鏡の間の入口だけど、あのままにしとくの? 焼けた扉は撤去してあるけど、他はそのままだからさ」
「ああ、アレね。どうしようか悩んでるのよね。コースケがコッチにいるから、今は礼拝もしてないし……直した方がいい?」
「あの部屋の鏡に、俺の浴室の天井が映ってるからなぁ。なんか気になるんだよね。それにこの寝室って、侍女とかも来るだろ? 今はモロ見えだしな」
そう、常に向こうと通じてる状態なので、俺からすると不安になってくるのだ。
「侍女には、あの部屋へは入らないでって、一応、言ってあるわよ。実際、入ってないし」
「でもなぁ……今後もし、俺達が鏡の向こうにいるところを見られたら、色々と不味くないか?」
風呂場なので下手すると、俺とイアティースが裸でいるところを見られる可能性があるからだ。
そうなったら最後、この国的に阿鼻叫喚な事態が予想される。
これはちょっと……いや、だいぶ困った展開なので、超怖いのである。
「そう言われると、そうね……いつも同じ状況で侍女が来るとも限らないし……」
「何か考えたほうがいいかもよ。せめてカーテンみたいに、布で覆うくらいはしといたほうが良いんじゃないか?」
「それもそうね、考えてみるわ」
というわけで、後はイアティースに任せるとしよう。
「ところでさ、不死の王の事で気になる事があるんだが……
「ああ、それはね。遥か昔、オルフェウスに住んでいたハンズというニューフェンの男が、冥界の神と契約し、不死の悪魔になったという話があるからよ。なんでも、地獄の業火が燃え盛る煤けた
「地獄の竈に、冥界の神ね……」
俺は少しゲンナリしていた。
もうなんというか、冥界の神という単語が、ラスボス感満載だからである。
それはさておき、今の物語はかなり引っ掛かるところであった。
なぜなら、グリム童話集の『悪魔の煤けた相棒』も、大筋ではそれと似たような話だったからだ。
まぁとはいうものの、細部はだいぶ違う。
グリム童話だと、ハンスという青年が悪魔に奉公して大金を得、そして一国の王女と結婚し、その国を最終的に乗っ取るような話だったからである。
だが登場人物の名前が似てるので、そこも気になるところであった。
「それって有名な話なの?」
「うん、オルフェウスでは有名よ。不死の王は、この国では忌み嫌われる存在なのよ。だって、ハンズは悪魔の力で、遥か昔、この国を滅ぼそうとしていたみたいだから。オルフェウスの言い伝えにあるのよ……不死の王・ハンズはオルフェウスを滅ぼし、そこに亡者の世界を創り上げようとしているって……」
どうやら、不死の王・ハンズはこの国と深い因縁があったようだ。
だが奴は、イアティースを殺そうとしていた時、『我が主の命令だ』と言っていた。
これは無視できない話である。
つまり、黒幕がいるという事だからだ。
「なるほどね。いきなり出てきたわけじゃなく、オルフェウスと昔から因縁があったんだな。じゃあさ、今、遥か昔って言ったけど、ハンズが不死の王になったのって、いつ頃の話なんだ?」
「私が聞いた話だと、確か500年くらい前だったかな。でも、ハンズはその時、魔導師達によって、大地に封印されたそうなのよ。それから何事もなかったらしいんだけど、お父様が病に臥せっていた頃、なぜか突然復活したの。だから、お父様も慌ててたわ……」
「そりゃ、慌てるだろうね。亡国になる可能性を孕んでるんだから……まぁでも、不死の王はいなくなったけど、まだ終わってない気がするんだよね」
「え? どういう事?」
「まだわからない。でも……そんな気がするだけだよ」
「コースケ……私の傍から離れないでね」
イアティースはそう言うと、不安な表情で更に身を寄せてきた。
少し脅かしすぎたようだ。
俺はそこで、イアティースを包み込むように、優しく抱き寄せた。
「離れないよ。俺達はずっと一緒だ」
「うん」――
大体の経緯はわかってきたが、色々と判断するには情報が足らないので、少し調べた方が良さそうである。
まぁそれはさておき、その後、俺達は暫し賢者モードで会話をし、それからグッスリと眠りに着いたのであった。
[Ⅱ]
この世界へと足を踏み入れてから、今日でもう2週間が経過した。
俺とイアティースは今もラブラブであり、どこに行くにも一緒だ。
生命の輪の影響か知らないが、それが心地よく感じる今日この頃なのである。
で、俺は今何をしているのかというと、聖なる鏡の間にて、とある武器の製作をしているところであった。
ちなみにそれは以前、エンギルの瞑想修練法でイメージしたモノである。
あれからも瞑想を度々続け、それを作り上げる方法を俺は得られたからだ。
そして、今は既に材料も全て揃い終えており、俺はその組み立てをしているところなのである。
しかも組み立ては、エンギルの力・イアの術を使ってである。
そう、手では組み立てできない製作方法の武具なのだ。
特に、この武具の要となる多面体加工されたこの世界の宝石・エンギラヌスが重要であった。
このエンギラヌスはブルーサファイアみたいな宝石で、透明度の高い、蒼く美しい宝石である。
これは、イアティースから貰ったモノだが、直径が1cm近いので、大きさ的には3カラットくらいになるだろうか。
現実世界でこの大きさのブルーサファイアとなると、質のいいモノだと300万は優にする。
なので、大変貴重なモノだと思ったのだが、イアティース曰く、この宝石はオルフェウスでそこそこ産出されているそうなのだ。
このオルフェウスにはエンギラヌスの鉱山が結構あるらしい。
それというのも、このオルフェウスの大地にはエンギルの力が強いところが結構あるからとの事であった。
正直意味が分からなかったが、その後、イアティースに聞いたら、こんな事を言っていたのである。
「大地に漂うエンギルの力が、長い年月をかけて地中の鉱石と混ざり、そして結晶化したものが、このエンギラヌスという宝石なのよ。だから、エンギルの力が強いオルフェウスには、その鉱山が多いのよね」と。
つまり、このエンギラヌスという宝石は、この国の主要な輸出資源となっているそうなのだ。
そんなわけで、新たに知った異世界トリビアなのであった。
まぁそれはさておき、その宝石を使って何を作るのかというと、それは……遥か彼方の銀河系の騎士が使ってそうな、モドキの武器を作ろうとしているからである。
そう、光の剣を作るのだ。
エンギルの瞑想で光の剣をイメージしたら、この宝石を使えという啓示みたいなモノを得られたのが発端であった。
そして、これを組み上げる方法も同時に得たので、俺はこれからそれを実践するのである。
話は変わるが、それ以外の材料は、日本で集めたモノが殆どだ。
実は随分前に、金属素材を3D加工してくれる造形業者をネットで探していた。
そして、そこに依頼し、大体の要望を伝えて、昨日、それを受け取りに行ったところなのである。
材料が全て揃ったのは昨日なのだ。
ちなみにその時、イアティースも一緒であった。
そう、実はイアティースを車に乗せてドライブしつつ、俺は受け取りに行ってきたのである。
予想通り、その時のイアティースは驚きの連続であった。
現代日本の街並みもそうだが、見た事ない乗り物や建物、そして人の多さに圧倒されたらしい。
早い話が、まるっきり違う文化に驚いていたのである。
だがとはいうものの、出発する際、イアティースの耳と服装が問題であった。
なんといっても、エルフのように特徴的な耳なので、それを隠せる帽子が必要だったからだ。
その為、俺はドライブの途中、女性の帽子を扱う店へ立ち寄り、そこで耳を隠せるくらいに大きなベレー帽を購入し、彼女に被せてあげたのだ。
元が可愛いので、似合っていたのは言うまでもない。
そして今度は、某服飾チェーン店でレディースの衣服を幾つか買い、彼女に着替えてもらったのである。
一応、今の日本は初夏になろうとしてる時期なので、軽いワンピースの衣服をチョイスした。
普通の衣服だが、イアティースが着ると高級感が出てくるから不思議だ。
そして装いを現代の格好にしたところで、俺達は業者の元へ行き、モノを受け取ってきたのである。
金額は20万円くらいになったが、そこはまぁ諦めるとしよう。
ちなみに、ドライブは中々楽しかったが、俺達の就寝時間を使って取りに行ったので、寝不足気味であった。
まぁとはいえ、また俺の世界にデートで行きたいと思う、今日この頃なのである。
つーわけで話を戻そう。
俺はエンギルの力を使い、蒼き宝石・エンギラヌスを慎重に内部パーツの中心へと装填した。
かなり神経を使う作業だったので、疲れたのは言うまでもない。
そして、次に持ち手になる外装のパーツをエンギルの力で慎重に組み立て、ようやく完成したのであった。
手は一切使わずに組み立てるので結構時間が掛かったが、とりあえず、これで終わりである。
なぜ手を使わずに組み立てるのかというと、勿論、理由がある。
瞑想で得た知識によると、余計なモノを寄せ付けない為のようだ。
特に、要の宝石・エンギラヌスは魔力増幅装置の役割があるので、エンギルの力で覆うことで、周囲にある不純な気や埃を寄せ付けないという理由があるのであった。
とはいえ、やってて思ったが、まるっきり、あの世界の騎士と同じ製作方法だなと思ったのは言うまでもない。
まぁ向こうはフォ〇スとかいう別の力で作り上げるので、そこは大きな違いではあるが。
それはさておき、これにて一旦、組み立ては終了である。
「ふぅ……これで、とりあえず組み立てはできたな」
完成したのは剣の柄のような円筒形の物体であった。
ステンレスと木材を組み合わせて作られており、長さは40cmくらいだ。
また、柄の部分には、これを発動させる為のイシュタルトの魔法陣を彫り込んである。
そして、この部分は、俺が直接加工した部分なのであった。
これは重要で、この紋章が発動する為に必要な方程式だからである。
まぁそれはさておき、俺の傍で見ているイアティースは、そこでなぜか感心していた。
「凄いね、コースケ。こんなに沢山の物をエンギルの力だけで組み立てちゃった。集中力が私と全然違うのね……」
「さぁどうだろうね。でも、俺は瞑想で得られた方法を実践しただけに過ぎないよ。それにまだ成功かどうかはわからない」
そう、後はそれを行使できるかどうかなのである。
俺は空中に浮かぶ完成した剣の柄をイアの術で引き寄せ、手に取った。
そして、俺は早速ソレを発動したのである。
「エル・イシュタルト」
するとその直後、納めた蒼い宝石のような色合いの光の刃が、筒の先からフッと出現したのであった。
刃渡りは1mくらいだろうか。
イメージ通りのモノであった。
また、何の効果音もないが、まさにあの蒼い光の剣といった感じだ。
後は試し切りだけである。
俺は用意しておいた木材に向かい、その剣を振るった。
すると豆腐でも斬るかのように、スパッと両断されたのである。
これにて、テストは成功だ。
そこでイアティースの驚く声が聞こえてきた。
「す、凄い切れ味ね……その光の剣……」
「このくらい強力じゃないと、イアティースを守れないかもしれないしね……まぁ俺もだけど」
「でも、コースケって、これを瞑想で得たんでしょ? 凄い想像力だわ……良く思いついたわね」
「まぁ俺のは他にヒントがあったからだけどね。何れにしろ、これが今後の相棒って事になるのかな」
「じゃあ、これからはそれで私を守ってね、コースケ」
イアティースはそう言って俺にしなだれかかってきた。
俺はそこでイアティースの肩を抱き寄せる。
そして日課のように、また厚い抱擁が始まるのであった。
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