第35話



 艦橋でクロウ船長の横に来て息子のルーが言う、


「父さん、よく分かったね」


「ああ」


 そして副長ウイスが言う、


「クロウ、奴が裏切り者だって、いつ頃わかったんだい?」


「ロスゴダを出航する前後だ。但し、レゾルト自身が裏切り者ではなく、踊らされていただけかもしれない」


「それまでには分からなかったのかい?」


「そうだ、逃げることに必死だったからな」


 その会話を聞いていた砲術長キストが尋ねる、


「俺達さ、そもそも、何でロスゴダへ行ったんだっけ?」


「女子供を助けるためだ」


「で、その女子供はどうしたんだい?」


「女達は解放された、と言うより解放されたように見えただけだ。私達が出航する時のあの目、悲しそうだった。もっと早く気付くべきだった」


「子供は?」


「あの星で兵力に使えそうな若者は兵力として最前線に駆り立てられる、もっと小さな子供達はピナルスで奴隷として働いているようだ」


「無事だったら良いのだけど・・・」


 さっきまで黙って聞いていたダフォーがポツリと声を漏らす。


 少し間を置いて、迎撃隊隊長ルイスが声を発する、


「船長よぉ、さっきからの話だとブラックホールなんだけどよ。あ、すまねぇ、話の途中だったな」


「構わん、続けてくれ」


「おお、悪いね、いいかい、ブラックホールなんだけどよ。ローンとの会話でブラックホールの中にワームホールが存在するってことで定着したように思うんだが、そこんとこはどうだい?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る