第34話
2隻の宇宙船が光速移動を繰り返しながら、暗い宇宙の海を航行している。
「しかしよう、クロウ? ワーム・ホールって何だよ? 俺たちは知っていることになっちまってるがよ」
副長のウイスが尋ねるが、続いて航海長のダフォーが畳み掛けるように質問する、
「どうして、あんな嘘ついたの?」
それに答えて船長クロウが言う、
「鎌をかけてみた」
「どう言うこと?」
再びダフォーが質問した。
「彼らが、どれだけワーム・ホールを知っているかを試してみた」
「試してみた?」
「おかしいと思わないか? 例え奇襲攻撃であったとしてもピナルスの兵力が、あんな簡単にロスゴダの地下組織に落とされる筈がない」
「どう言うこと! 地下組織はロスゴダのために戦ったのよ」
「ティア少尉、分からないかな? 素粒子砲衛星も地対空素粒子砲も、地下組織によって制圧されたのではなく、地下組織とピナルスは既に手を結んでいた」
「そんな」
ティア少尉に続いてレゾルト副長も言う、
「そうだ、何を根拠にそう言っているのか教えてもらおう」
「レゾルト副長、あなたに発言する資格は無い。あなたは既に地下組織とピナルスが組んでいたことを知っていた。だからこそ地下組織が蜂起することも知っていた。そして、ピナルスへ行く理由は、無事生還ではなく、この船の破壊、ではないのかね?」
「たくましい想像力だ。それが真実としてだ、ならば私に従ってきたティア少尉も同罪になるのではないかな?」
「それは無い、同罪であればティア少尉も地下組織の動きを事前に知っていたはずだ」
「レゾルト副長、できれば釈明して欲しい」
ティア少尉が苦しげに言う。
「以上だ。レゾルトを独房へ、と言ってもこの船に独房なんてないがね」
「クロウ船長・・・」
「ティア少尉、彼とジゼル総督は不仲だったと言っていたな? ではロスゴダに残されたローン大佐はどうだったのかな? ジゼルが死んだ後、あの二人が手を組むのは自然の成り行きだった、とは思わないか?」
「少尉、悲しいかもしれないけど、クロウの言っていることは真実だと思うわ」
ダフォーの言葉が聞こえていないのか、ティアは床を見ながら微動だにしなかった。
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