第33話



 ウイスの言ったカート・ホイール・ギャラクシー、宇宙に浮かぶ全長十五光年を超える巨大な車輪銀河、そこに目的とするピナルス星があるとローン大佐が言う。


 ピナルスのコスモ・バトル・シップに後続してその半分くらいの船は航行する。

前方を航行する船の半分、全長にして約1Kmの海賊船が静かに進んでいる。


「船長、前方ピナルス・コスモ・バトル・シップから無線です」


「交信してくれ」


 通信長レイに答えてクロウが言う。


「画面に出します」


 艦橋天井に一人の男が映し出される。


「ローンだ、今回は君一人が見えるが?」


「そうだ、艦橋全体の像に切り替えようか?」


「いや、この方が話しやすい」


「では、用件を聞こう」


「そろそろ光速航行に切り替えようと思う。そこでだが、ここから2光年先にブラックホールがある。そこへ突入し時のトンネルへの移動にしたいと思う」


「ワーム・ホールへ入るんだな」


「そう言うことになる」


「我々はワーム・ホールを知っているが、君たちはどうなのかな?」


「大丈夫だ、ピナルスの航海士に操舵は任せている」


「なるほど、ピナルスの兵士達も随分と信用されているものだな」


「ああ、いつも背中に銃を突きつけられているがね。そこでだ、ここからブラック・ホールにたどり着くまでに、いくつかの恒星が存在する。時空間移動で航行すれば問題ないのだが、無駄に素粒子エネルギーを消費したくない」


「同感だ、時空間に素粒子は存在しない」


「そうだ、同じように時のトンネルにも素粒子は存在しない。要するにワームホールには素粒子が存在しないため、ワーム・ホールを潜り抜けるまでは素粒子を温存しておきたい」


「で、航路は?」


「恒星の前まで光速移動して、全速移動に変えて恒星を避けたら、また光速航行で移動、案内する」


「光速移動で目的とするブラック・ホールまで航行できないのか?」


「なんだって? 君も知っているだろう? 光速で舵なんて取れるもんじゃない」


「この船のダフォー航海長は光速で画面を見ながらの航行が得意だが?」


「本当なのか? まぁ良い。面白い冗談だったよ、クロウ船長」


「ダフォー航海長、向こうの船に乗り換えて光速航行を教えてやれるかい?」


「ええ、良いわよ」


「あははは、君たちには敵わない。とにかく付いて来てくれるね?」


「良いだろう、付いて行こう」

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