第32話
最初にピナルスのコスモ・バトル・シップが浮上すると、その後を追うように海賊船ルーナ号が垂直上昇を始めた。
「しかしよう、カート・ホイール銀河だろ? ここからだと何万光年だ?」
「そんなものじゃないわ、何億光年ってところね」
「ほほう、ってことはちょっとした旅行だ」
ウイス副長とダフォー航海長が話しているところへ、
「だがよ、俺達、一回航海に出たら何千万光年くらいだったら普通に飛んでるぜ」
今度は、ルイス迎撃隊長の言葉に答えてキスト砲術長が答える、
「確かに。でもよ、目的地を持って何億光年ってのも久しぶりじゃね?」
「確かにな、カート・ホイール。宇宙に浮かぶ大車輪銀河、端から端まで数十光年だろ? 遠くから見ているだけで良いんだがなぁ」
「三人とも何をとぼけたことばかり言ってるの、水平航行に入るわよ」
「了解、ヨーソロー」
「お願い、ウイス、何度言ったらわかるの? あなたのそれ、やめてくれない」
前方には、海賊船の2倍以上あるピナルスのコスモ・バトル・シップが航行している。
「船長? 僕らは、こんな大きな船と戦おうとしているんですね?」
ルーは、クロウの横に立って質問する。
「そうだ、ただ、船対船で、戦いの相手は人ではない」
クロウが答えると航海長ダフォーが、言葉を投げかける、
「でも、クロウ? あなたはジゼルとの戦いで片腕を失ったわ」
「人の命と片腕の交換であれば安いものだ」
クロウが答える。
「船長よぉ、あんたは自分の腕と交換にジゼルの命を奪ったって言うのかい?」
ウイスの質問に対して、ダフォーが答える、
「決して、等価交換ではないわね」
「腕と命の交換か・・・」
ルイスが呟く。
「ジゼルという男は、この宇宙の何十万という命を奪ってきたわ。そんな命と交換にクロウの片腕だとしたら、これからも続く星と星の戦いに加担してきたジゼルの命よりも、それを止めようとしたクロウの片腕なら比べ物にならないくらいのものを、私達は奪われたわ」
ダフォーの言葉にクロウが答える、
「私は、既に両手を持っている」
海賊船船長は、ソード・ガンを右手で握りしめた。
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