第30話



 海賊船艦橋には席がさらに増えることになった。


「なぁ、クロウ、艦橋にさ、こんなに人の席を作ってどうするんだ?」


「しょうがないじゃない、だって、この船、作戦会議室なんて無いし、ここで決めて、すぐに誰もが動ける。理想じゃない?」


「まぁ、良いけどさ」


 などと、ウイス副長とダフォー航海長が雑談しているところへ、お手伝いA.I.ロボットがお茶を配っている。


「おい、A.I. こっちもお茶だ」


 とウイスがお手伝いロボットを呼ぶと、


「オノレ、ダレニ、イウトンネン、ワイハ、A.I. ヤケドナ、チャント、ナマエ、アルネンゾ」


「おうおう、そりゃ済まなかったね」


「あら、お名前があったのね、御免なさい、知らなかったわ」


 とニーナが言う。


「ちゃんと、お名前を教えてあげたら?」


 そこへダフォーが語りかける。


「ワタクシデゴザイマショウカ? ワタクシハ、ジェントリ、デゴザイマス」


 今度は、お茶を吹き出しそうになって、たまらずティアが問う、


「ジェントリ、優しそうなお名前ね。宜しければ、お茶をもう一杯、いただけますか?」


「オウ、ネーチャン、マカサンカイ、セヤケド、ネーチャン、ベッピンサンヤナ」


 そう言いながらポットを持って行ったお手伝いロボットの後頭部が、カーン、という固い音を出す。

いつの間にやって来ていたのか、料理長マギーの鉄拳がジェントリの頭を強打していた。


「イタイ、ヤナイカイ!」


 と言いながら振り返り、マギーだと気づいた途端に、


「ア、マギー、イツノマニ、キテイラッシャタノデスカ」


「あなた。私、思うのよ。本当は地球の言葉、理解してて、わざと変な使い方してるんじゃないかって?」


「マサカ、アリエナイ、デス」


「それなら、もう一度教育が必要だけど?」


「イヤダ、マギー、コワイ、ヘルメット、ユチャク シナイト、アタマ、コワレル」


「やっぱ、再教育だわ。それ、癒着じゃなくて装着よ」


 逃げて行ったお手伝いロボットの代わりに、マギーが一人づつ、自己紹介しながらお茶を配り始めた。


「私は料理長のマギーです。よろしくお願いします」


 と言いながら、それぞれにお茶を配っていると、レゾルト副長がマギーに問う、


「あなたは、戦闘には参加なさらないのですね?」


「あらー、レゾルト副長、私が戦いなんて、そう見えます? 料理しか出来ない、か弱い女の子なのですよぉ」


 その途端に、ウイス、ルイス、キストの三人が一斉にお茶を吹き出した。

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