第29話



 ピナルスの兵士達がロスゴダ地下組織の戦闘員によってロープで縛られている。

地下組織の指揮者であろう男がバイザーを頭から外し、敬礼をする。


「ありがとう、ティア少尉。私は地下組織の司令官、ローン大佐だ」


「いいえ、任務お疲れ様です。ローン大佐」


「君の噂は聞いている。優秀なパイロットであり、戦闘員でもあると」


「身に余るお言葉です」


「で、生存者は君一人なのか?」


「いいえ、私を含めて三人。レゾルト副長、デニス1等航海士、です」


「他は?」


「全員、航海中に亡くなったようです」


「ようです?」


「はい、私達三人は、生命維持装置に入っていたので、それからの事は分かりませんが、餓死と思われます」


「そして、君達を生命維持装置から出してくれたのが、そこに居る二人ということか?」


「はい、クロノス星、海賊船ルーナ号、クロウ船長。そしてルー航海士、です」


「あなたがクロウ船長・・・。そしてルー航海士、階級は?」


「私達に階級はありません。あるのは担当だけです」


「なるほど・・・、海賊船とは、そういうものなのか」


 続けてローンは、クロウに向き直り言う、


「クロウ船長、あらためて礼を言う」


「礼? 君達の総督を殺害した私にか?」


「総督は独裁者だった。民の心はすでに離れていたが逆らえば監獄行きだ。ありがとう、クロウ船長」


 その時、通信兵がやってきて、ローンに口早に報告する、


「敵、植民地司令本部、制圧。全ての奇襲完了です」


「馬鹿な連中だ。あれだけの武器を持っていながら。最新兵器の上に胡座をかいて、少人数で我らを支配できると思っている輩だ」


「奇襲は時間が命だ、短時間で制圧できる自信があったのか?」


「あなた達の海賊船が空に現れた、それだけだ」


「勝てる自信はあったのか? と聞いている」


「動きは空対空素粒子衛星操作本部の制圧、地対空素粒子砲の制圧、これさえ成功すれば、あなた達の船がなんとかしてくれる」


「君達が、各部署の制圧に成功していなければ?」


「それでも海賊船はやって来る。私達の仲間を連れて」


「それはどうかな?」


「信じていた」


「よかろう、これからどうするつもりだ?」


「ピナルスへ、子供達を助けに行く」


「船はあるのか?」


「ピナルスのコスモ・バトル・シップが1隻。それだけだ」


「それだけで戦えると思ってなどいないな?」


「・・・・・・・・」


「どうするつもりだ?」


「都合の良いことだと思っている。助けてほしい」


「よかろう」


「?」


「手伝おうと言っている」


「どうして? そんな簡単に返事ができる?」


「星を出る前に母と約束した。女子供を守ると」


「それだけでか?」


「十分だと思うが?」


「何んだって、それだけで? 信じて良いのか? クロウ船長?」


 戸惑いを隠せないローンに対してティアが言う、


「大佐、今は信じるしか無いのでは」


 そう言ったティアをしばらく見つめていたが、ローン大佐は右手を差し出した。

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