第14話



 海賊船ルーナ号が接近するも救命艇からの反応はない。

海賊船からは小型輸送船が発艦し、救命艇へとドッキングする。

海賊船は素粒子回線を使って、ロスゴダ戦闘空母救命艇に呼びかけているが、何の返答も返ってこない。


「ウイス、全く返答がないんだ。ハッチを破って中へ入ってくれ、とクロウ船長の指示だ」


 通信長レイの連絡を受けて副長のウイスが答える、


「了解、と言いたいところだが相手は元敵だぜ」


「船長命令だ」


 答えてレイが言う。


「おい、聞いたかよ、船長命令だとさ。こんな命懸けの人命救助なんて聞いたことがないぜ」


 ウイスは後ろにいるルーとシラーに声を掛ける。


「ウイス、行こう」


 そう声をかけたルーは、既に素粒子銃のレバーをヒッグス粒子に替えて構えている。


「おい、ちょっと待てよ。俺が後ろに下がってからにしてくれ」


「分かってる」


 ウイスが後ろへ下がると共にルーが素粒子銃のトリガーを弾く。

それと共に、そこにいた三人がヒッグス粒子の弾けた勢いに負けて、後ろへ吹き飛ばされる。


「しまった、威力が強すぎた」


「馬鹿野郎、何が分かってるんだ」


 思わずウイスが怒声を上げるが、若い二人はすぐに起き上がって援護射撃の体制に入っている。


「おい、お前ら、俺に先に入れと言っているのか?」


「副長、お願いします」


「分かったよ、お前ら、ちゃんと援護しろよ」


 ウイスは、破壊された扉に近づきロスゴダの言葉で声を掛ける、


「聞こえるか。俺はルーナ号の副長、ウイスだ。戦いは既に終わっている。救助信号を受け取った。交戦は無しだ。聞こえるか?」


 そして、ウイスは振り返り、二人の若い乗組員に声を掛ける、


「入るぞ、中へ」


 ルーとシラーは黙って頷くと、ウイスの後へ続いた。

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