第12話



 ロスゴダの防空圏から遥彼方で制動している船からは、ロスゴダの星が小さく見える。海賊船、艦橋で、リーが船長に尋ねる。


「クロウ、いつも聞いてばかりで済まないんだけど」


「構わん、君をそのために船に乗せている。知識を吸収しろ。いつか星の役に立つために、それが宇宙のためになり、何よりも君のためになるはずだ」


「感謝しています。あの攻撃、もしくは防衛の為の衛星が、ロスゴダのものでないと言ったね?」


「そうだ、あれは、ロスゴダのものではない」


「では、どこの星の?」


「リー、私は君がどこまで知っているのかを知らない。素粒子物理学の権威であることは認めるが、天文学に対しての君の知識を知らない。だから、君が知っている知っていないに関わらず最初から話をしよう」


「はい、その方が有難いです」


「宇宙には世代が作られている。その世代の中で核融合により原子が作られていくが、もしも第1世代、第2世代で生物が生まれたとしたなら、それは私たちと全く異なった組成で構成されており、全く違った文化を持っていたことになるだろう」


「軽元素からの生命体、組織、細胞」


「そう言うことだ。だからと言って、原子宇宙で生命体が作られたとしても侮ってはいけない。それは何百億光年も生存し続けた生命であったなら知的レベルは私たちの想像を遥かに超えている存在となって行ったとしても不思議ではないからだ。また、重元素の多い星で生命が生まれたならば、どう思う?」


「私たちと同じような身体を持ち、歴史にもよるけど、あまり変わらない文明を築き上げている」


「そうだ。身体組成は変わらなかったとしても、その星の環境によるのだが、文化の発展の形式は変わらずとも、文明の進化は大きく変わるものであったかもしれない」


「わかります」


「然し、君たちが理解できている物質エネルギーは、この宇宙空間でわずか5%に過ぎない。そこから別の生命体を割り出すには、今の説明では飛躍が大きすぎて分かり難いであろう」


「はい」


「話を一点に絞ろう。では、残りの95%はどこにあるのか? 私たちクロノスの科学では、宇宙は広がり続けている、とされている。その広がりを促している力をダーク・エネルギーと呼んでいるが、概念的には君たちの理論と変わらない。この、君達にとっての未知の力、ダーク・エネルギーが宇宙の65%を占めている。それと同時に一切の光を持たずに重力だけを及ぼす正体不明の存在がある。これをダーク・マターと呼んでいる。そして、この二つのダーク・エネルギーとダーク・マターの存在する空間が暗黒宇宙だ。そこに未知の生命体が存在するとしたなら、我々でさえ解明できない存在になる。もちろん理論上では、ある程度の理解はできているがね。未知のもの、それは未来と同じ、未だ来ないから未来といい、未だ知ることができていないから未知という。科学の広がりは宇宙と同じように、たった一点の疑問から未知への挑戦が始まり、それが未来だ。結論を言おう、我々がこれから遭遇するであろう星人は、この宇宙に存在する生命体だ。先ほどの兵器を見れば分かる」


「別宇宙は存在するのですか?」


「存在する。理論的には、だがね」


「理論上の空間」


「それを解明するのは君であって欲しい。私個人の希望だ」

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