第10話



 通称宇宙海賊船、ルーナ号がクロノスの湖から浮上する。

垂直上昇を終えると、そのまま直進し大気圏を抜ける。

暗い宇宙に出れば、自ら光を発している中性子星が後ろに見える。

微速前進していた船が加速を始め出し、最高速度に入る。


「船長、イーグル・アイ・ネブラ。やっぱりあそこに武器商人ジゼルの星ロスゴダはあったんですね?」


 この航海で通信師長に昇格したレイのその言葉にクロウが答え、


「マザーは、間違えない。私が見つけられなかっただけだ」


 そう言うと、航海長ダフォーが、


「この航海でロスゴダ星を見つけられるのかしら?」


 と疑問を言葉にする。


「今度は、見つけられる。譬え、旗艦を失った星でも応戦能力は十分にある筈だ。その防空網を突破するためには、侵略者のコスモ・バトル・シップが集結するはずだ。そこには膨大な素粒子エネルギーが集まっているはず」


「おいおい、クロウよう、そんなにでかい素粒子エネルギーが集まっていたとしたらだよ? この船1隻じゃ相手にもならないんじゃないのか?」


 さらに副長ウイスがクロウに返答を要求する。


「やってみなければわからない」


「こりゃまた、船長お得意の言葉だぜ」


「でも、どれくらいかは想像できるでしょ?」


「ダフォー、今までの戦歴で考えてくれ。1隻や2隻では済まないはずだ。星一つを落とそうとするなら、戦艦5隻以上は必要だ」


「それに加えて攻撃機が、血に飢えた蚊のようにこの船に群がってきやがるぜ」


 答えたのは迎撃隊隊長のルイスであった。


「さぁ、想像はやめて、実際に観に行きましょう。座標位置確認鷲座、目標イーグル・アイ・ネブラ、素粒子エネルギー高濃度集結場。光速移動に入ります。行くわよ! 待ってなさい、バカ商人共!」


「ヨーソロー」


「お願い、ウイス、あなたがそれを言うとやる気が削がれるわ。だから言わないで」


 武器商人達は、この広い宇宙に限りなく存在するであろう。

それは星間戦争が続く限り、無くならない組織。

そして、この果てしない宇宙で、海賊船と呼ばれている一隻の宇宙船が、今、時空間移動の扉を開いた。

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