第5話


 

 渦巻状銀河。

これは、太陽系を含む天の川銀河の形状である。

中央には大質量のブラックホールが存在し、数々の星団が渦を巻いて落ち込むような形状を示すため、このような名称が付けられている。


 渦巻状銀河は、他にも存在し、地球上で観測されていないものを含めると、無数に存在するであろう。

宇宙、それ自体が無限の広がりであるのだから、語るに及ばない事実である。


 地球から約1700万光年離れた空には、髪の毛座が広がり、その中にはイービル・アイ銀河が存在する。

この銀河もまた、渦巻状銀河の一つであるが、内側のガス星雲と外側のガス星雲は互いに逆回転をしながら中心点バルジ、つまり巨大質量のブラックホールへと流れ込んでいる。


 そのガス星雲の中を、ピンク・サファイアのような光を放ちながら航行している宇宙海賊船が一隻見られる。

この船は、常に反素粒子を纏いながら航行している為、素粒子を受けるたびに反応し、船体は光を放ちながら航行している。


「マザーは、何か言った?」


 この海賊船の女性が問う。


「いいえ、ベレニケ船長。ゴディス、そう呟いたきり沈黙状態よ」


 そう答えたのもまた女性で、コノン副長は、まっすぐにベレニケ船長から視線を離さずに伝える。


「そう、ゴディス・・・・、何かあったのでなければ良いけど」


 この星人ほしびと達特有の長いまつ毛の下の鋭い目が少し憂いを漂わせる。


「私も心配なの」


 同じく長いまつ毛を持った副長コノンがベレニケ船長の発した言葉に、憂いを帯びた優しい目で呟く。


「コノン、何か変化があった時のために、暫くはこのガス星雲の中を微速で航行しましょう」


「分かったわ、このまま微速前進」


 船は、コノン副長の優しい声に頷いたように微速前進で航行する。

この海賊船は、指揮者の音声だけに反応し動いている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る