あまりにも青すぎる
@assembly
第1話 宙を舞う海鮮丼
おそらく僕は死ぬだろう。宙を舞う海鮮丼を眺めながらそう思った。
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海鮮丼を食べたい。不意に生まれたその欲望はどんどんと膨らみ、ついには僕よりも大きくなったらしい。僕の近くにいる人々までもが海鮮丼を食べたくなっていた。スーパーから海鮮丼がなくなった。コンビニから海鮮丼がなくなった。どいつもこいつも海鮮丼を食べている。僕は食べていないのに。ふざけるな。
というわけで、僕は有給休暇をとり、海鮮丼を食べるためだけに北海道へ向かった。北海道といえば海鮮丼、海鮮丼といえば北海道。北海道に着くやいなや、僕は海鮮丼専門店に入った。メニューには様々な海鮮丼が載っていた。あまりに多種多様で、海鮮丼とは思えないものもあった。
僕は迷った。離婚するときくらい迷った。けれども決断のときが迫っていた。ケバいメイクをした店員が、こちらをじっと睨みつけていた。
「あ、すみません、この、普通の海鮮丼ってやつを一つ……」
「あいよ、普通の海鮮丼、いっちょ!」
普通の海鮮丼は、普通だった。しかしそれでいいのだ。普通に勝るものなど、この世にあるだろうか。誰もが普通を目指している。普通の人生、普通の生活、普通の家庭。だとすれば海鮮丼も普通が一番。常識的に考えて、そうに決まっている。
さて、いただくとするか、と割り箸を割ったそのとき、トラックが店に突っ込んできた。すさまじい衝撃によって、海鮮丼は宙に舞った。いや、違った。宙を舞っているのは、僕だった。太陽が地球の周りを回っているのではなく、地球が太陽の周りを回っているのだから。
あまりにも青すぎる @assembly
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