第10話  二人で偵察

「おい!! おい!! 空を飛べるのか!?」


 レスターは、俺にしがみついてきて言った。


「まあな」


「すごくないか!?」


「どこがだよ」


「精霊も連れずに、高度な技を!!」


 レスターは俺を見て感心していた。


「凄いなぁ……オレなんて、契約した精霊との相性が悪くて、大した魔法は使えないんだ」


 ああ……レスターは、友人の精霊を分けてもらってたな、と、思い出す。そりゃ、精霊も嫌々契約してるだけか……。


「そんなにしがみつくなよ、落とさねぇから」


 俺は、上着にぶら下がるレスターの手を取って、仲良く横並びで飛んでアルデバラン王国の郊外の荒れ地の更に奥のサセット山の麓まで行った。


 近付くにつれて、木々や植物が枯れていた。

 臭気が鼻を付いた。

 何の臭いだろう。辺り一面が臭い。


 俺たちは、風のシールドを張って、もっと上空に行って周囲を観察した。


「げっ!! 闇黒竜って」


「黒い竜……そのまんまだな……」


 その通り、多分元の属性は火だと思われる、真っ黒な竜が山の麓で黒い火を吐きながら暴れていやがる。ゴジラかよ!!

 ラブストーリーのはずのラノベにこんなものを登場させるなよ! 凜。

 俺は、事故で今も手術中の妹のことを思った。

 凛の書いた、二次創作のハチャメチャな設定の世界に迷い込んだ俺。


「よし、やっつけてやるぞ!!」


「レイモンド? 正気か? 隊長が偵察だと言ったじゃないか」


「大丈夫、俺なら十分倒せるよ」


「お前……凄いなぁ……」


 レスターが、羨望の眼差しで俺を見てきた。いや、お前、絶対そんなキャラじゃねぇし!!

 俺は、地上に降りると、レスターに姫の世話をしていた竜を探すように頼んだ。


「小さな風竜だって話だ。名前はリッセルドだ頼む!! あっちのデカいのは、俺に任せろ」


 レスターは「分かった」というと、微かに聞こえる『キュ~ン』と聞こえる方向に走って行った。


 さて、暗黒竜をどう料理したら良いものか……。

 この世界、『光の国より愛をこめて』は、もともと異世界ファンタジーであるから、竜も魔法使いも登場する訳なんだよ。

 火だから、水で凍らせておくか?いや、それより闇堕ちしてるのを何とかせねば……。


 俺は、ある考えに至って叫んだ。


「光の神、召喚!!」

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