第9話  風竜……?

レスターは嬉しそうに、二人分の荷物を用意してくれた。


本当のこいつは、こんな奴じゃない。

確か、黒の魔術師に両親を殺されて、自分も復讐のために組織に入るんだ。

そんな奴の何処が良いのか、熱狂的なファンはいるらしく、母ちゃんたちの年代の人はお誕生日会と称して、イベントをするんだ。


「お前の家は火事で燃えただろう? それで、騎士団にいるのか?」  


レスターは、変な顔をした。


「火事? 何のことだ?」


俺は,、驚いた。(凜の奴~~こんなとこで手を抜きやがって!!)


「いや!!お前の家の骨董屋って、本当に儲かってたもんな。良いアンティークなものがいっぱいあって。セレスティアは可愛い看板娘だし」


「君こそ、急にいなくなっ太と思ったら。まさか、東方に魔法の訓練に行ってたとはな……」


――――ということにしておこう。


俺は東方から帰ってくる途中で、リリエラ姫と神官長を救ったことになっている。ご都合主義だな。


「それより、レスター。愛刀のムネヒラはどうしたんだ?」


「骨董屋で埃をかぶってるよ」


レスターは笑いながら言った。

レスターの愛刀、ムネヒラは魔族を狩るための妖刀で、レスターが心底悪に染まり切れなかったアイテムでもある、が、この世界のレスターは、火の魔法使いで普通の剣士だった。


俺としては、レスターとムネヒラでワンセットと思うけど、ここは、妹の凜の考えた世界だ。

流れに身を任せるしかないようだ。


城門のところでレスターに待つように言われて、待っていると、リリエラ姫が血相を変えてやって来た。


「レイモンド様!! リッセルドは悪い子ではありません!! 闇黒竜なんて嘘です!! どうか、見逃してください」


リッセルド? なんだそれ?


「姫? 何のことですか? もしかして、姫が荒れ地にいた原因ですか?」


俺は、姫に詰め寄った。

その現場を馬を連れてきたレスターに見られてしまって、引き離されたが……


「姫が竜族を保護してるなんて知れたら。大変なことになりますよ」


「リッセルドは、風竜の子供よ。お父様の貢ぎ物の中に竜の卵があったのを見つけて……直ぐに孵化したわ。だから……放っておけなくて」


「そのリッセルドが、闇黒竜であるか、無いかも確かめるための偵察です。姫は大人しく待っていてください」


レスターが、優しく姫を宥めていた。

ううっ!! 違う!! こいつはこんな奴じゃない!!


「飛んで行こうぜ」


俺は、自分も浮かんで、レスターも浮かせた。





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